産業ロックってなんですか?
さて1980年も終わり81年を迎えたわけですが……
1980年の終わりになると【ザ・ゲーム】の次のアルバムに関する情報が入ってきました。
映画【フラッシュ・ゴードン】のサントラ盤となる、その名もそのままで【フラッシュ・ゴードン】です。
【ザ・ゲーム】が絶好調だったということもあってか、映画のサントラ盤とはいえ発売前には結構な話題になっていました。
その映画の方も私の周りではなかなかの話題となり、ぜひ見に行きたいと思わされてしまっていました。内容はスペースファンタジーといった感じで、同じ年の夏にスターウォーズが流行りましたので、【QUEEN】ファン、そしてSFファンの私としては是非とも押さえておきたい映画だったのです。
ラジオからはシングルとなる【フラッシュのテーマ】がよく流れ、雑誌なんかでも取り上げられていましたし、そのキャッチーでいかにも【QUEEN】らしい捻りの効いた曲は、映画のみならず、アルバム全体を期待させられるものでした。
で、買ったわけなのです。期待をこめて 【フラッシュ・ゴードン】を。
1981年の冬休み明けだったかと思います。お年玉を貰って心に余裕のあった私は、黄色いジャケットのアルバムを手に自宅へ帰り、期待マックスで聴いてみたのですが……
まあ、なんというか……だってサントラ盤って意味が分からなかったし、【フラッシュのテーマ】は格好良い曲だったから、あんな感じの曲ばっかりが収録されているのかと……いや、歌がないインストばかりだとは中学生には想像できなかったし……
もちろん一度や二度聴いただけで決めつけるのは良くないと後々気が付いたわけでして、今ではその良さも理解しております。80年代の映画音楽でオーケストラというより【QUEEN】であるその独創性が……良いアルバムです。
そんな年明けを迎えましたけど、中学二年生でしたので受験という言葉はまだ遠く、ギターを弾いて皆でバカ話してサッカー部でヘロヘロになってと、そんな感じで1981年が始まったのです。
で、一月の始めだったと思うのですけど、サト子の家で何時ものようにロック談義に夢中になっていると……
「あんたさぁ、【フラッシュ・ゴードン】買ったんだってえ。たぁけだねぇ、映画の挿入歌としては良い曲もあるだろうけど、サントラはあかんて」
「いや、そんなことあぁせんて。【フラッシュのテーマ】以外でも良い曲入っとるって」
「まあええわ。ヨッシーは【QUEEN】ファンってよりマニアだで何言っても聞かへんで」
「なら言うけどよ、リッチーだってこの頃は売れ筋ばっかだがや。【アイ・サレンダー】って、あれロックだけどポップスだろうて。産業ロックってやつじゃないのかて」
「うっさいわ。御大の悪口言うんじゃない。産業ロックって言われるってことはな、売れとるってことなんだわ。だいだい、【QUEEN】は産業ロックがどうのこうのの前に産業ロックそのものだがねっ」
「って、おい、ヨッシーもサト子先生も止めろて。今、【AC/DC】が来日して名古屋公演があるってテレビで言っとるぞ」
「なに!」
「本当かて」
確か当時は産業ロックという言葉がありまして、詳しい定義は理解していませんが、ハードロックバンドが売れ筋ねらいのためにキャッチーなロックを演奏したことで、古くからのフアンにそっぽを向かれるということがあり、それを揶揄して産業ロックと言ったとかだったと思います。
あ、違っていたら教えて下さい。
その中でも良く言われたのが、サト子の好きな【レインボー】が出した【アイ・サレンダー】であり、その前のアルバムからのシングル【シンス・ユー・ピーン・ゴーン】であり、【ジャーニー】【フォリナー】だったわけなのです。
で、その産業ロックという意味も分からないままで使っていた私たちでしたから、その中に【AC/DC】も入れていた気がするのですが、産業ロックと【AC/DC】は違うような……
いやいや、そうじゃありません。
その直前に発売されたアルバム【バック・イン・ブラック】が好調で、そのツアーに名古屋公演が組み込まれたとのことだったのです。
【AC/DC】はブライアン・メイが【QUEEN】のメンバーじゃなければ入ってみたいバンドだと言ったかなにかで、非常に興味のあるバンドでした。評判の良いライブパフォーマンスもそうですし、なによりも骨太の分かりやすロックというのが【QUEEN】の対象にあり、それでいて【QUEEN】同様にスッと入ってくるメロディとギターリフは……うんちくはどうでも良いですよね。失礼しました。
で、皆でライブに参戦したわけです。
金銭的にはお年玉を貰った直後ってこともあり、皆困ることはありませんでした。問題は家庭環境でした。
当時は中学二年が夜遅くに家に帰るというのは一般的ではなく、ライブに行きたかった僕らの頭には直ぐに両親の顔が浮かんだのです。
けど、それは簡単に解決できました。
「待っとりゃぁ。今パパに聞いたるで」
サト子はそう言うと僕らを居間に残し店へと行きました。で、ものの五分としない間にサト子と共に親父殿が現れ、
「【AC/DC】が来るんだって。ほんじゃぁ皆で参戦するか。皆の家には俺から言っといたるがや」
そう言ってくれたのです。
サト子の親父殿といえば、生粋のロック親父です。その親父殿が【AC/DC】の来日を見逃す筈がなかったのです。
参戦したのは私とサト子、エニ君、ヤスの四人で、私とエニ君とヤスの親にはサト子の親父殿が保護者同伴で送り迎えもあると上手に言ってくれました。
もともと評判の良い美容院でしたし、それに商売をしている人ってこともあり人当たりも良く信用もあったみたいでした。
あ、言っておきますが、ヤスの家にだけはロックグループとは言わず、アメリカで一番人気グループと、あやふやな感じで誤魔化していました。
何にしても、初めてのライブというのはそれはそれは感動で、その音の大きさもさることながら、アンガスの尻出しも見ることが出来ました。
あ、ライブレポートといのは、まあ、必要もないかと思いますので割愛させてもらいます。