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夢の中の青  作者: 文月
2/4

1つ目

 私は最近夢を見る。


「君は私の番だ、良ければ一緒に来てくれないか」

 今まで見てきた中で一番綺麗な顔が印象的な人。

 青い瞳に見つめられた私は無意識のうちに頷いていたようで、気がつけば知らない場所に来ていた。

 彼は龍人であり、その住みかは空に浮かぶ島だった。

 到底私一人で行き来できる場所ではない。

 しかし孤児院で暮らしていた私は、少しの寂しさはあったが不思議と気にならなかった。

 番の持つ力だろうか。

 龍人は龍の姿と人の姿を持ち、様々な観点で違いを感じる事も多かった。

 けれど結婚しよう、と言ってくれた時は迷いなく頷いた。

 ───ただ、今から考えれば種族の違い、というものはもっと深く考えなければならなかったのかもしれない。

 この世界にはたくさんの種族があり、異種族での結婚は認められているが、共通した決まりはお互い成人していないといけない。

 彼は成人していたが、私は成人していなかった。

 この世界に種族によって異なるが、成人と認められるためには儀式を受ける必要がある。

 獣性の混ざっていない、所謂私のようなヒトも行う。

 ヒトのそれは簡易的なもので、着飾って伝統的な舞を踊るぐらいだ。

 龍人というものは力が強い反面、番に出会いにくいようで番に対する執着心が強いらしい。

 成人の儀式を受けるために今まで住んでいた場所に戻る事は認められず、龍人の儀式を受けることになった。

 ───なぜ彼も私も儀式が種族により違う事に思い至たらなかったのだろうか。

 私が誕生日を迎える日に儀式を行うことになり、それまでは彼の家の散策を楽しんだ。

 龍人はいろいろ決まりがあるらしく、結婚しないとできない事がたくさんあるらしい。

 彼に甘やかされながら過ごす日々はあっという間に過ぎていった。

 ───ああ、気がつけば良かった。広すぎる彼の家から一歩も出てないことに。彼以外の誰とも出会った事が無いことに。龍人は、龍の姿も持っていることに。

 成人の儀式の当日、彼に運んで貰い儀式を行う場所まで移動した。

 彼は私を抱えながらものすごい速さで動いた。

 儀式が終わるのが楽しみだ、儀式が終わったらすぐ結婚しようと囁きながら。

 儀式の場所についてから私ははじめて疑問を持った。

 ヒトと同じで踊る程度だと思ったのだが、そういう雰囲気ではない。

 連れていかれたその場所は下が見えないほど果てしない崖であった。

 足がすくんで動かなかったが、彼は笑顔で簡単だよねと言っていた。

 どうやら下に行き、そこに落ちている石を拾うことで成人と認められるらしい。

 下で待ってるね、と彼は龍の姿で行ってしまった。

 私は龍の姿になれないというのにどうすれば良いのか。

 無理だと叫ぼうとするも、恐怖のあまり声がでない。

 そうして悲劇は起きた。

 高い場所は風が強く吹くことがある。

 私は風に煽られ、深い深い崖に落ちていった。



 種族の違いというものは時として、とてつもない困難となる。

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