夏の新潟県大会(三年時)決勝
「急な事故で皆、動揺しているかもしれないが、今病院のベットの上にいるコンドウの為にも、甲子園のチケットを手にして行く為にも、絶対勝とう!」
「うーす!」
「行くぞ!」
「松高ーーファイオシ!」
「オーダーは、一番センター、オカダ 二番ショート、カネトモ 三番ライト、クリバヤシ 四番ファースト、ミナガワ 五番サード、シノダ 六番レフト、ムカイ 七番キャッチャー、トバシラ 八番セカンド、イトハラ 九番ピッチャー、ホシノ 以上だ。」
先攻は日本文理高校。(ケイタ観ててくれ。絶対勝つ。)
「おい、ササオカ?」
「はい。」
「何で松高のキャッチャーはコンドウじゃねーんだ?」
「ああ、それなら何か事故にあったらしいですよ。飲酒運転の軽自動車にはねられたみたいす。」
「そうか。軽傷なのか?」
「不幸中の幸いで、軽傷らしいですよ。」
「ったく、この大事な時に。」
「礼!」
「うーす!」
今日は決勝という事もあり、地元や全校応援の人で松高サイドは大満員だった。先発ホシノは、一回、二回、三回とテンポ良く三振7個、ゴロ2つでパーフェクトピッチを見せた。
一方、日本文理高校の先発ニシカタは荒れ球だったが、打ち気になっている松高打線を手玉に取り、ゴロ9個のパーフェクトピッチをこちらも見せる。
試合が動いたのは四回ウラ松高の攻撃。二番カネトモのツーベースヒットで均衡を崩すと、続く三番クリバヤシをフォアボールで出塁させると、四番ミナガワを敬遠。ワンアウトフルベースの大チャンス。ここで打席には五番シノダ。力まないで自然体で行くと決めていた。カキーン。ライトオーバーの走者一掃タイムリースリーベースヒットで、松高が3点を先制。続くムカイのセーフティスクイズ。これが決まり4-0。七番トバシラは送りバントで、ツーアウト二塁。八番イトハラが粘って粘ってフォアボールを選択。九番ホシノは嫌いじゃないというが、バッティングにも定評がある。3-2のフルカウントから甘く入ったカーブをしっかり捉えて、打球はレフトスタンドに消えていった。勝負を決定付けるスリーランホームラン。これで7-0。
反撃したい日本文理高校だったが、最速155㎞のホシノのストレートにおされ、最後はスライダーやフォークで仕留めた。打球を前に飛ばせない。これ以上失点出来ない日本文理高校だが、エースを諦めて、二番手のフルカワにスイッチ。ところが、これが裏目に出てしまう。七回ウラ連続四死球で、ノーアウト満塁。ここで迎えるは四番キャプテンのミナガワ。超高校級でプロ注目のミナガワは、フルカワの甘い球を見逃さなかった。ブン、グワキーン!松高応援席に届ける、怪我のコンドウに捧げる満塁本塁打これで11-0。
この試合の様子を見ていたコンドウは、自分が居たらもっと得点をとることが出来ると悔やんだ。八回表も三者凡退に抑えたホシノ。味方の援護はもう充分だった。
「ホシノ、完全試合かかってるぞ!」
「はい。行けます‼」
「じゃあ頼むぞ!」
長い歴史のある高校野球で、完全試合を果たした人間は数少ない。そんな事を思わずホシノは三者三振で仕留めてゲームセット。ホシノ完全試合達成。松浜高校10年ぶり31回目の甲子園出場を決めた。




