プラクティスゲーム
選手、監督、コーチ、それぞれが一応の形を整えた松高野球部は、ケイタとトウマ等一年生にとって、初めての練習試合を迎えていた。対戦相手はケイタとトウマ等と同世代まだ高校生になったばかりの新潟明訓高校の三軍と四軍の混合チームだった。
「集合!!」
「うーす!」
「今日のスタメンは昨日伝えたな。(第8話参照)そのオーダーで行くぞ!どうやら相手もピッカピッカの一年生みたいだな。舐めてかかると痛い目見るって事を見せつけてやれ!」 「うす!」
「松高ーーファイオシ!!」
「先発は主戦ホシノ。頼んだぞ。」
「キャッチャーは投打の要コンドウ。キャプテン変わってやったんだ、頼むぜ!」
「じゃあ後ミナガワ宜しくな!」
「うす。」
場所は新潟明訓高校第2グラウンド。レフェリーは松高から2人、明訓から2人、主審は明訓高生が務める。先攻は新潟明訓、後攻は松高となった。
「おい、あれマツゾノじゃね?それにメジャーリーグで活躍したヤマナもいるぞ?どうなってんだ?」
「名選手は名監督になれない。」
「ウエンツさん?今日県大会の2回戦ですよ!」
「あ~あそれなら大丈夫。キャプテンの指示でこの松高のスカウティングしてこいと仰せつかったからな。心配すんな。お前も付き合え。」
「今日はどうせ俺がいなくても楽勝だろ?こっちの一年生と松高の一年生どっちが勝つか見物だな。」
「プレイボール!」
「始まったか。下山監督今日は補習の指導があるって!」
「あ~あ、秒殺で来たじゃん。下山監督!始まりましたよ?」
「おー。ギリギリ間に合ったか。」
「トウマ…。左バッターだ。お前は右投げで投げづらいかもしれんが、今日は肩の荷を降ろして投げろ。」
「ストライクワン。(良い球だ。外角のストレート。140㎞位出てんじゃないか?)」
「ストライクツー。(速球の後に緩いカーブ80㎞位か。よし、次は釣り球で高めの速球を!)」
「空振り三振!ワンアウトランナー無し。」
「バカかてめえ?あんな釣り玉に手出して?」
「はい。すみません。」
「次は小柄な2番バッターか…。セーフティバントだけ気を付ければ大丈夫だ。フォークやチェンジアップも試して見るか。」
ケイタの見事なリードとトウマのナイスピッチングで、松高は5回まで走者を出さないパーフェクトピッチングだった。一方の打線はキャプテン3番ミナガワの2打席連続本塁打とケイタのソロ本塁打で6-0と、リードを広げていた。
「タイム!」
「どしたんすか?下山監督。急にタイムなんかけて?」
「このメンバーで戦える事は充分分かっていた。控えメンバーも使ってみないか?キャプテンと、キャッチャーのコンドウ残しで、オールメンバーチェンジだ。」
「松高メンバー代えて来たぞしかも同時に7人も。完全に舐められてるぞ。」
「あいつがいればこんな事にはならなかった。だが、あいつは1軍帯同だ。無いものねだりしても仕方ない。」
「この回4点以上取れば×ゲーム(エックスゲーム)で、コールドゲーム成立だ。6回はウエハラが見事なピッチングで、0点に抑えた。」
「この回はファーストのスズキから。2番エナツ、3番ミナガワが、連打でつなぎ満塁で4番のコンドウ。3球目を捉え見事なグランドクロス(満塁本塁打)で、10対0で6回コールドゲーム松高の勝利となった。」
新潟明訓高校の3人目の投手。変化球ばかり投げているが、どれもゆるゆるのツーシームで、ストライクゾーンに来た所を一発で仕留めた。誰もいない明訓高校第2グラウンドのバックスクリーンに特大の満塁ホームランをぶち込んでやった。エックスゲームで見事な完封勝利と文句無しのスタートを松高はきった。