監督とコーチ②
「やり残した事って何ですか?」
「松高の甲子園優勝だ!」
「そっか。俺等の代は、甲子園出場は何度もしたけど、優勝は無かったもんな?」
「俺の忘れ物はこいつらにとって来てもらう。」
「深紅の大優勝旗ね。」
「チャンスは2年後の夏1回こっきりだ。」
「それを果たすにはまず新潟県内で勝てるようにならんとな。」
「積極的に対外試合を行って、各選手の評価や能力や課題を見出だしたいと思っている。」
「目指すは投高打高、打って打って打ちまくり、鉄壁の守りで完膚なきまでに敵チームを倒す。それが俺の忘れ物を取り返すというオーダーに答えるチームだな。」
「マツゾノ、ヤマナ、俺の見てない所をカバーしてくれてありがとう。頼もしいよ。じゃあそうゆう事でよろしくな。」
「うーす!!」
「なぁ、ケイタ?あの二人ガチの元プロだよな?」
「はぁ?お前テレビジョン見た事ないの?あれは、ガチの世界のヤマナとマツゾノだ。」
「松高のOBには、もっと凄い人がいるんだぜ。例えば10年連続50本塁打の元阪神タイガース、トガシユウタとか。」
「5年連続50セーブのイリエコウスケとか。」
「あげたらきりがない位のプロ野球選手を輩出してるのは間違いねーな。」
「例え偽物でも四六時中練習見てくれるのは、ありがてーじゃん?」
「引退してから何年も経ってるから、余計おっさんに見えるだけだろ?」
「それはあるかもな。」
「にしても、主戦ホシノトウマがギリギリまで追い込まれるのは、楽しみだな。」
「はぁ?お前こそしっかり球受けろよ。」
「トウマが合格点もらうまで付き合わされるのは、俺なんだからな。居残り打撃したいし、なるはやで頼むわ。」
「OKOK、任せとけよ。」
その日の午後、明日の新潟明訓高戦を前に野球センスを試すテストが行われる事になった。テストは、投手と野手に別れて行われる。
「お前らがセレクションを行った事は、下山から聞いた。その上でプロの目線でオーダーを組むのに必要なものを見極める。ピッチャーはホシノ、ウエハラ、ツチムラ、サノだ。他はBマシンでバッティングを改めて見さしてもらう。守備位置もこれまでの俺とヤマナが見てきた中で、最適な守備位置を決める。」
そして、数時間後。新しいオーダーが決まった。「1番センター オカダ、2番セカンド イトハラ、3番ファースト ミナガワ、4番キャッチャー コンドウ、5番ライト クリバヤシ、6番サード シノダ、7番レフト ジョーシマ、8番ピッチャー ホシノ、9番ショート カネトモ
以上だ。記録員はタカハシセイコ。ベンチ入りは流動的なので、今は発表しないが、投手陣ウエハラ、ツチムラ、サノの3名と、控えキャッチャーのカケフはベンチ入り確定とする。とりあえず、明日のベンチ入りは○○、○○、○○…。とする。今回選ばれなかった選手はチャンスはまだたくさんあるから、努力を重ねて行って欲しいと思っている。解散!」
「うーす!!」
「正しいフォームで素振り500回な。この位の事やらねーと、日本一にはなれないぞ!」
「うーす!」
電灯と室内練習場のある松高には、練習時間に制限はない。練習が終わるのは9時、10時になることはざらにあったが、勉学も両立する観点から、練習時間の上限を午後11時に設定した。
居残り打撃をするのはコンドウ位の者であるが、高校生らしく、勉学もきちっと両立する必要はある。朝練は午前7:00~午前8:30まで。昼休みはミーティングと、通常練習が午後4:00~午後8:30と、野球漬けの毎日だった。
ピッチャーは過度な投げすぎによる故障を防ぐため、一日最大100球と球数制限を設けた。強制はしなかったが、髪型は全員丸坊主だった。
「しかし、凄い人が来たもんだ。ただでやってるとは思えない力の入れようで様。正直ビックリしちゃって。」
「そりゃあ、世界のヤマナだからな。こっちだってマツゾノさんにぴったりマークされて大変なんだから。」
「素振りじゃなくてBマシンやれって言われて、夜中の10時頃まで付き合ってもらったりさ。本当に感謝してるよ。こりゃあ試合で恩返しだな。」
「マツゾノさんだってまけてないぜ?新しい球種覚えたいって言ったら、バカ野郎今持ってる球種磨ききってないくせに、そんな事言うな!って怒らせてしまったけど、次の日には新球種の握り方教えてくれたよ。」
今の松高野球部はかつての黄金時代の時の様な盛り上がりを感じずにはいられなかった。