期待のルーキー
「え!?投手はもう一人いるって?」
「はい、でもそいつ中2の夏くらいから不登校になっちゃって、本当のエースはそいつになる予定だったんです。」
「で、その不登校エースは松高に進学したのか?」
「はい、その筈です。てっきり別の高校に行くと思ってたんですが、さっき廊下ですれ違って。あ、そいつだと確信しました。」
「コントロールも、スピードもクボタより一枚も二枚も上手です。でも、野球部には入部しないみたいです。」
「よし、口説こう!」
「なぁ、クボタ?そいつの名前知ってんだろ?」
「今すぐに教えろ!」
「キタジマアリンです。」
「何ですか?急に?」
「君、中学生の時野球部だったんでしょ?」
「はい、軟式野球部に居ました。でも、中2の夏でやめてます。」
「なぁ、松高で野球やらないか?」
「コンビニのバイトしてるんです。だから野球部には入りません。」
「君の力を松高野球部は必要としている。」
「明日30分だけで良いから時間をくれないか?」
「まぁ、30分だけなら…良いですよ。」
翌日…。
「よし、俺のミットに好きなボール投げてくれ。ストレートでも、カーブでも、フォークでも何でも来いだ。」
「あのぉ、自分硬式の投げ方分からないんで、ストレートだけで良いですか?」
「はい、OK OK 。」
右投げオーバースロー。ゴシーン!ストライク
「何だ?今の球?」
「タイム!」、
「いってぇな。何だよ球が重いったらありゃしねぇ。球速は?」
「153㎞です。」
「こりゃあ期待のルーキーだな。」
「君、キタジマ君だよね?」
「はい、キタジマアリンです。」
「キタジマ君、君のストレートは高校でも、充分に通用する。野球部に入って一緒に甲子園目指さないか?」
「数日考えさせて貰えませんか?」
「ああ、良いよな?ミナガワキャプテン?」
「お、おう。」
「何よろけてんだよ?ミナガワ(笑)」
「こ、コンドウ先輩!」
「どうした?」
「あいつがグラウンドに来てます。」
「あいつって誰?」
「キタジマの奴ですよ!松高のユニフォーム着てますよ。」
「入部する気になってくれたか?」
「とりあえず、半年契約って事で。」
「何ぃ?」
「とりあえず甲子園出場の御膳だではさせていただきます。ちなみに自分は、スライダーとカーブとスプリットも投げるのでシクヨロです!」
「半年後には3年生はいないぞ?」
「わかってますよ。面白かったら契約を更新しますし、つまらないと思ったら契約打ち切りです。」
「面白いな。プロ野球選手みたいだな。」
「まぁ、こんな感じですがガチでプロ狙ってるんで。」
「はー。小生意気なプレーヤーが出てきたもんだ。」
「そうなんすよ。マツゾノさん。」
「あ、でもそいつ見てもらえばわかるんすが実力はピカ一です。」
「どれどれ、ストレートは155㎞、スプリット145㎞、スライダー130~140㎞、カーブ100㎞~120㎞。とてもブランクありの不登校者とは思えないがな。」
「自主トレしまくってたんすよ。不登校者だからたっぷり時間ありますから。」
「軟式では意味ないから、硬式球でコンクリートに投げまくってるのは見たことあります。」
「キタジマ?お前がいたら、松浜中は全国制覇出来たと思うぞ。」
「まぁ、スポ選なんか無くても、松高に入れる位の学力はあったんで面倒臭いけど一般入試で入ったんすよ。」




