監督とコーチ①
「なぁ、トウマ?やっぱりちゃんとしたコーチって必要だと思うか?」
「何贅沢言ってんだよ。下山監督がいるじゃん。」
「お前も分かってるはずだよ。下山監督だけじゃ、甲子園には行けない。」
「クラス持ちで、野球部だけを見ている訳じゃないからな。でも、コーチ雇うにしても金がいるだろ?」
「松高はさ、私立じゃねーから、コーチ雇う金なんかねーんだよ。」
「金なんか無くてもやってくれる気概のあるOB は、いないのかな?」
「俺達だけで動くのは不味いよ。キャプテンにも、下山監督にも許可取りしとかねーと。」
「ってぇ訳で、コーチを探したいんだが、動いて良いか?ミナガワキャプテン!」
「頼むわ。俺もまだキャプテンなりたてで、混乱してんだわ。こういう時ビシッとアドバイスしてくれるコーチは必要だわ。」
「俺もその意見には賛成だ。」
「下山監督!?」
「承知の通り、1から100までお前等の事を見てやる事は、不可能だ。だから、細部まで見てくれるコーチは必要だな。」
「下山監督の先輩、後輩で良い人とかいないんですか?」
「その線から当たってみるわ。」
「有力なのは、ピッチャーのマツゾノさん(NPB で15年活躍後引退)、キャッチャーのモリノさん。(社会人野球)、ファーストのヤマナさん(NPBを経てMLBヤンキースで活躍後引退)。」
「下山監督の世代って化け物ぞろいなんすね。」
「ああ。松高史上最強と言われてる。」
「でもさ、社会人なら仕事で手一杯だろうし…。」
「心配なんかするな。俺に任せろ。」
「うおー!下山監督が神々しく見える!」
その翌日。
「集合‼」
「うーす!」
「えー、皆今日から毎日俺達松高野球部の面倒を見てくれる、コーチのマツゾノさんと、ヤマナさんだ。」
「ひそひそ…。すげぇガチのマツゾノさんと、ヤマナさんだ。」
「紹介は…。よさそうだな。」
「マツゾノさんもヤマナさんも紹介しづらそうだから、下山監督に紹介お願い申し上げます。」
「マツゾノ世代。そう俺達の世代は呼ばれていた。ホシノ?お前も聞いた事あるだろう?」
「はい!ガキの頃よく見てました。」
「マツゾノは松高全盛期のエースピッチャーで、プロ通算150勝をあげて引退してからは、確か西武ライオンズのピッチングコーチだったはず?ここにおられるという事はピッチングコーチ辞めて、松高の投手コーチに?」
「おう!そのとおりだ。金なら浴びるほど稼いだからな!母校の為に一肌脱いでやるのもありかなって。ちなみに名前はダイスケだ。よろしく!」
「バッティングコーチはヤマナヒデキさんだ。」
「よろしく!」
「ヤマナは読売巨人軍からNYYで4番を務めた松高史上最強のバッターだ。」
「内外野の守備コーチもヤマナには、見てもらう。よろしくな、ヤマナ。」
「相変わらず馴れ馴れしい奴だな下山は。」
「じゃあ今日もストレッチからランニングで後はいつも通りな。」
「松高ーーファイオシ!」
「ヤマナにマツゾノすまなかった、急に連絡して。」
「水臭いぞ、下山監督。」
「ノーギャラで完全ボランティアだが、良いのか本当に?」
「気にするな。それに面白そうだしな。甲子園。何度も行ったが、今度は行かせてやる方だ。おもしれぇ。」
「でも下山がドラフト指名されてんのに大学進学希望したのは驚いたけどな。」
「昔の話だ。こうして母校の野球部の監督をしてるんだ。幸せだよ。」
「ヤマナもワザワザニューヨークから御越しいただいて本当にありがとう。」