全国高校野球選手権大会新潟地方予選(二年時)
「あ~あ。今年もTV観戦か…。」
「あと一年の我慢だ。辛坊しようぜ。」
「あ、お前らこんな所にいたのか?県大会なら日本文理高校が勝つよ。対戦したお前らが一番良く分かっているだろう?」
「準決勝まではTV観戦禁止。練習するぞ。」
「うーす。」(まぁ、そう言う俺も結構気にしてはいるんだがな。)
「集合!」
「うーす!」
「夏の甲子園をかけた戦いが始まった。来年こそ松高は出場し優勝する。その為に、今は練習だ。とりあえず結果は新聞で確認してくれ。いいな?尚、先ほど高野連より連絡があり、公式戦出場停止期間が来年の4月1日となった。これにより、春の選抜は間に合わないが、春の県大会と北信越大会、夏の県大会にも出場出来る見通しとなった。」
「よーし!」
「まず目指すは春期県大会で優勝して、夏の県大会の第一シードを取ること。北信越大会はおまけだ。夏の県大会の試金石になるが、正直一回戦で負けても良いと思っている。」
「何言っているんすか監督。全戦コールドゲーム勝ちしてやりますよ。」
「まぁ、まだ先の話だ。一日一日の積み重ねが大事だ。その努力のご褒美が甲子園出場だと思えば良い。」
「お、流石キャプテン。冷静だな。」
「なぁ、ケイタ?今日新潟明訓と新潟南高校がベスト8で敗退したってよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
「ケイタ、あんまり興味無さそうだね?」
「ああ、ちっとも興味がわかねぇ。」
「何で?」
「来年の参考になるからってスカウティングに行ってる奴もいるが、そんな無駄足運べる時間あんなら素振りの一本でもやれっつーの。来年春4月1日に公式戦出場解禁って事は、あと7ヶ月だぜ?山田玄助杯で三連覇したからって、努力を怠れば直ぐに食われるぞ。トウマ、お前もだ。投手は投げ込んでなんぼのもの。今のお前のストレートはマスオカやウエハラより劣ってるんだぞ?自覚もて!」
「ケイタ、それマジで言ってるの?ウエハラはともかく、一年坊のマスオカより劣っているってのは言い過ぎじゃないか?聞き捨てならねぇな。」
「受けてないから正確な事は言えないが、マスオカのストレートにはノビがある。球速は五分五分かもしれないが、バッターの手元でノビる分マスオカのストレートの方が、トウマのストレートよりバッターは速く感じてる筈だ。そして、マスオカの球は重い。あの球を芯で捕らえても、まず並みのバッターはホームランに出来ないだろうと思う。ノビと球の重さ。だがトウマがマスオカより勝っている点もある。それは針に糸を通すコントロールだ。あのコントロール力はマスオカにはない。」
「で、どうすりゃあマスオカより重くノビのあるストレートが投げられるんだ?」
「お!?やる気になったか?」
「そこまで言われちゃ仕方ねぇ。」
「下半身の強化だ。松港橋から松高までの約1㎞を繰り返し全力疾走する、トウマの嫌いな地味な鍛練だ。それをやるしかない。冬は屋内で。みっちり走り込んで貰う。」
「マジですか…。了解」




