プラクティスゲーム その⑥
「ほぅ。松高ねぇ。名将山田玄助無しでどんなチームに仕立て上げてきたか。楽しみだな。」
「おい、大地!今日の練習試合先発だってよ。」
「松高だろ?楽勝だせ。」
「いや、そうとは言えないぜ。」
「何ィ!?新潟南が二年間公式戦出場停止だって!?」
「松高との練習試合で、エースとキャプテンを潰そうとしたらしい。」
「集合!」
「うーす!」
「よし。今日のオーダーだ。一番センター、オカダ 二番セカンド、イトハラ 三番ライト、クリバヤシ 四番キャッチャー、コンドウ 五番ファースト、ミナガワ 六番サード、シノダ 七番レフト、ジョーシマ 八番ショート、トリタニ 九番ピッチャー、ウエハラ 以上だ。」
「よし。絶対に圧勝して終わろう、今年を。」
「松高ーーファイオシ!!」
「礼!」
「うーす!」
松高第二グラウンド、通称松スタで行われる11月最終週の日曜日。松高ナインは、気合いが入っていた。今日の松高は後攻だ。
「おい、あれ見ろ!新潟明訓の主戦の大地ユウヤじゃないか!?向こうも負ける気はない様だ。」
先攻はNM(新潟明訓)。一番、二番、三番をウエハラは全球ストレートでねじ伏せ初回のNMの攻撃は無失点に抑えた。平均球速は150㎞台前半を越えていた。(春とは別人の様に制球が良くなったな。)
初回ウラ。一番、二番の連打で塁を埋めて走者一、三塁。三番クリバヤシはよーく見てフォアボール。ランナー満塁となり迎え撃つは得点圏打率驚異の八割越え本塁打21本打点81。右のエース大地は初球ストレートを選択したが、ビュン、グワキーン!!入ったぁ。弾丸ライナーでセンターバックスクリーンにお得意の初回満塁ホームラン!これで4-0。まだノーアウト。
「今日も五回で終わらすぞ!」
「うす!」
五番ミナガワも、センター前ヒットで続く。続くシノダが送りバント。これを相手サードがジャッカル。フィルダースチョイスでランナー、一二塁。続く七番ジョーシマがレフトオーバーの二点タイムリーツーベース。これで6-0。八番トリタニも続いてランナー、一三塁。迎えるは九番ピッチャーのウエハラ。
「俺は打撃も良いんだぜー!」
カワキーン、大きな当たりはみるみるうちに風に流されライトスタンドに消えていった…。
入ったぁ‼まさかの伏兵ウエハラ。自らのピッチングを援護するスリーランホームラン!これで9-0。しかもまだノーアウト。打順一巡の猛攻を見せた松高。相手エースをKOした。二番目の左のエースも攻略し、気付けば三回ウラ終了時で18-0となり、今日も五回コールドゲーム勝ちが視野に入って来た。
心配されたウエハラの投球も、コントロールが安定しており、ストレートは最速156㎞を記録し、決め玉のフォークボールも、有効で三振の山を築いた。12奪三振、ノーヒットノーランというほぼパーフェクトな内容だった。試合は22-0。で、松高の五回コールドゲーム勝ちで終わった。
「クソ!?こんなはずがあるか?見てろよ松高!お前らを倒すためにある変化球を覚える。」
「で、その変化球って?」
「ナックルボールだよ。」
「それだけで、止められんのか?あの松高打線をさ?」
「やるしかねぇ。」
「んだな。」
「礼!」
「シタ!」
「なぁ?ケイタ、NMの奴等また二軍を出してきたのかな?」
「いや、一軍に近い面子だったと思うぞ。」
「そっか!じゃあ俺達が春より格段に成長したって事だね?」
「トウマ、つーか今日お前試合出てねーじゃん?」
「今日はブルペン待機だから仕方ねぇじゃん。」
「で、収穫は?」
「おう!よくぞ聞いてくれた‼ビクトリーボールだよ!」
「ビクトリーボール?」
「Vスライダーだよ!」




