秋季北信越高校野球選手権大会(1年時)
俺達松高は越後にある高校だ。新潟県は北陸地方の3県(富山、石川、福井)と長野県を含めた5県で春選抜の出場2枚のキップをかけて争う。大会名は北信越大会だ。
毎年春と秋に行われ、春の北信越大会は、夏の甲子園の前哨戦となる。スカウト達の目が光る。出場資格は各県大会の1位~3位まで。開催地は5県持ち回り形式だ。
特にTV中継はなく、新聞やインターネットでしか情報を得られないが、己の実力を知るには最適の大会だ。早い所では新チーム発足から、3ヶ月でまずは秋季県大会を勝ち抜き、北信越大会に出場してたった2枚の春選抜の出場キップを手に入れる事を目標とする。
今大会の新潟県出場チームは秋季県大会1位のNB(日本文理)、2位の新潟南、3位のNM(新潟明訓)である。結局今大会は、新潟県勢は振るわず、NBのベスト4が最高成績だった。優勝は石川1位の星稜高校だった。
「ベストメンバーのNBに15-3で勝つとは、星稜もやるじゃん。」
「それを言ったら俺達松高だって山田玄助杯で戦った敦賀気比高校に勝ってるんだぜ?」
「えーっと、確か敦賀気比高は…準優勝だぜ?」
「石川の星稜には10-3で敗れたが、NMや佐久長聖(長野)にはエックスゲームで勝ってる。このチームのポテンシャルは相当なものがある。」
「NBの奴等悔しいだろうな。後1勝で選抜確実になったのに…。」
「高校数は多いのに、出場枠少ないもんな。」通例なら、2枠。多くても3枠と狭き門である。
「選抜のキップはどの地方も夏より少ない。その分スカウトの間では夏より春の選抜を重要視するスカウトもいるって話だ。」
「俺達松高が出てたら優勝間違いなしなのにな。」
「とにかく今は我慢だ。コツコツと努力を積み重ねるしかない。」
「ああ。そうだな。」
「ちょっと失礼。下山監督が呼んでるぞ、コンドウ?」
「おお、分かった。」
「来たか。お前を呼んだのは他でもない。今週の土日に練習試合を行う事になった。相手は秋季県大会準優勝の新潟南高校だ。」
「監督、まさか新しいオーダーを試すんすか?」
「そのつもりだ。ベンチメンバーで何処まで戦えるか試してみる。あ、でもお前とミナガワは不動の4、5番だからな。ってことで周知ヨロシク。冬になると、屋外での試合は寒さで出来なくなる。その前に、強化試合を県内チーム相手にやっておきたい。」
「分かりました。で、場所は?」
「あ、新潟南高校グラウンドだ。」
「たまには外部でやるのも良いだろう?」
「人工芝じゃないから怪我には気を付ける様に。俺からは以上だ。」
「ってぇ訳で、南高とバトル事になった。集合は07:00。マイクロバスで向かう。土日と連続で試合をやるそうだ。今回の練習試合は、ベンチメンバー中心の戦いとなる。普段ベンチを暖めているメンバーは気合い入れていけ。以上解散。」




