新潟県秋期大会(一年時)
第二回山田玄助杯を終え一週間後の9月下旬。各学校新チームに移行して迎える初の公式戦。春の選抜につながる、秋期県大会がスタートした。トーナメント方式の一発勝負。尚シード校は夏の県大会の結果によって決められた。
第一シードは勿論王者NB(日本文理)。第二シードは準Vの中越、第三シードは北越、第四シードはNM(新潟明訓)である。
「ケイタ、ケイタってば!」
「何だよ?」
「練習しようぜ?」
「わりぃ。今日は敵チームへのスカウティンングに行くんだ。勿論日課はこなす。家でな。」
「今日はブルペンキャッチャーのスズキで我慢してくれ。」
「ケイタ、お前じゃなきゃ意味ないんだよ!」
「キャプテンは残るらしいから丁度良いや主砲とエースで真剣勝負でもしたらどうだ?」
「言いにくいなら言っといてやろうか?」
「何ぃ?」
「ピッチャーと控えキャッチャーとキャプテン以外皆スカウティングに行くって?マツゾノコーチとヤマナコーチの指示だってさ。」
「そんなにスカウティングって重要なのか?」
「まぁ、落ち着けホシノ。今日は居残り分特別メニューで調整だ。」
「特別メニュー?」
「ミナガワキャプテンとのサシでの真剣勝負だ。これが特別メニューのメインディッシュだ。考えてもみろ?スカウティンングなんて誰でも出来る。たまたまうちは部員が少ないからコンドウ達主軸を行かせざるを得なかったが、居残ったメンバーは試合で欠かせないメンツだ。松高の誇る投手陣に、主砲のミナガワ。これはキャプテンが申し出たことだ。」
「監督、投手陣と真剣勝負させて下さい。お願いします。」
「あんなに必死なミナガワの顔は初めて見たよ。まぁ、秋の県大会中位は練習を忘れてスカウティングさせるのも良い気分転換になると思っていたんだがな。その期に乗じてミナガワは対松高投手陣に挑むあいつの気持ちは良くわからねぇ。まぁ、そろそろバッターを立たせてピッチングさせる本格的なより試合に近い形の練習はしようと思っていた。だがミナガワは待てなかった。他校を寄せ付けない松高投手陣との真剣勝負をしてみたくなったのさ。」
「まぁ、これはやっといた方が良いんだ。優劣をつけるというよりはお互いに高め合えるんだ。勿論、コンドウ達スカウティング組が帰って来たらミナガワと同じ事をさせる。見ている俺達コーチのメンバー選出の参考にはなるがな。」
「マツゾノさん?」
「何だ?」。
「ミナガワに打たれてもエースナンバーは下さいね?」
「あほ、出来次第だ。まぁ、今日は女房役のコンドウがいないその点は加味する。サノ、ショウジ、ツチムラ、ウエハラ手を抜くなよ。」
「うす!」
「相手は全国トップクラスのバッターだ。気を抜いてると、二軍落ちも有り得る。これはピンチはチャンスだ。ええな。」
「おいコンドウ?」
「どーした‼良い女でもいたか?」
「いや、何でキャプテンだけ残ったんすか?」
「あいつはな強いやつを見ると挑戦したくなる人種なんだ。」
「は?」
「まぁ、細かい事関係なくスカウティング集中しようぜ?」
「うす!」




