夏の新潟県大会予選決勝
「いよいよ決勝だね。ケイタ!」
ビュン、ビュン
「ケイタ!」
「何だよ!今ので400スイング目だったのに。何?まだブルペンキャッチャーして欲しい訳?」
「違うよ。始まるんだよ夏の高校野球新潟県予選の決勝が!」
「やべぇ。忘れてた。今行く。」
「ってもうナンコーの攻撃中で五回表、スコアは13-1か。え?NBつえーな。」
「キラキラのスーパールーキーも、NB打線には敵わなかったか。」
「うん。アズミ、一回り目は良かったんだけどね。三回に七失点で炎上降板だよ。」
「このNBのオーダー、山田玄助杯の時と同じじゃね?」
「ああ、スタメンの三人以外は同じだ。」
「決勝はコールドゲームないから、このままワンサイドゲームか…。」
「俺、神スイングやりに戻るわ。大体の試合の流れ分かったから。この試合が終わる頃には神スイングも終わるだろう。そしたらトウマのブルペンキャッチャー(BC)いくらでも付き合ってやるよ。」
「ここから逆転はないか?」
だが、誰もが諦めかけていたその試合を野球の神様は見捨ててはいなかった。
「ボールフォア。」
「あちゃあ。NB大量リードとは言え、この3連続四球はいかんな。」
ここで四番のアズミ。高めの球ならスタンドに放り込む自信はあった。一球目は低めのストレート。これはボール。二球目の釣り球だった。カキーン(キーン)NBの誰もが凍りついた。打球はエコスタのバックスクリーンに消えていった。
「グランドスラム、満塁ホームランだ。入っちゃったよ。これで、5-13だが、もう2本満塁ホームランが必要な点差だ。にしてもアズミは俺達松高の最大のライバルかもな。」
その後もナンコーの攻撃は止まなかった。3連続ヒットで、もう二点を返し、7-13。ここでNB先発ナカムラを交代。それでも今日のナンコーは違った。
「あ、山田玄助杯でエースnumberを着けてた奴だ。」
右も左も関係ない。下位打線も繋がったナンコーはワンアウト満塁から、二番のキムラ、カキーン‼前進守備を敷いていたセンターの図上を越える走者一掃のタイムリースリーベースヒット。これで3点追加。10-13。この五回に一挙九得点を追加した。
「凄い試合になって来たよ。ケイタ!」
「あと、10スイング。」ビュン、ビュン。
「どうなってんだ?」
ホシノはコンドウに試合経過を説明した。
「何?アズミの満塁ホームランだって?」
「ああ、下位打線も繋がって何とか食らいついてる。」
「NBのリリーフが後を締めれば逃げ切り出来るが。」
8回表、ナンコーの攻撃。ナンコーは一番からの好打順。
「ボールフォア。」
「よし。ランナー出た。次は今日絶好調の二番キムラ」
ランナースタート!盗塁成功!ここでナンコーバスター!ボールスリーからのど真ん中ストレートをジャストミート、グワキーン!レフトスタンド上段に突き刺さるツーランホームランで、同点。土壇場で、追い付いたナンコー。NBはたまらずピッチャー交代。と、ナンコーのペースかと思われたが、反撃はここまで。
九回のウラ、NBの四番三橋(三年)にサヨナラホームランを打たれて万事休す。結局14-13で、乱打戦を制したNBが2年ぶり12回目の夏の甲子園出場を決めた。




