山田玄助杯~予選トーナメント二回戦~新潟県立長岡工業高校戦
「この試合に勝てばやっとAグループの決勝進出だね?」
「決勝の相手は新潟県央工業高校だ。」
「その前に二回戦の新潟県立長岡工業高校戦が待ってるぞ。」
「オーダーは一回戦と同じで行く。先発はウエハラで行くから、しっかり準備しとけよ。」
「うす‼」
「集合‼」
「今日も気合い入れてコールドゲーム目指そう!」
「松高ーーファイオシ!!」
コイントスの結果松高は後攻めになった。初回、制球の定まらないウエハラは連続四球でノーアウト一、二塁のピンチを招く。しかし、ここはリトルリーグNo.1ピッチャーの意地で三、四、五番三者連続三振に仕留めピンチを脱出する。
一回ウラ松高の攻撃一番スズキのセンター返しで出塁すると、足で見せる。二盗、三盗と、決めノーアウト三塁で、二番イトハラはスクイズを選択。ファーストに転がし一点を先制する。続く三番キャプテン、ミナガワは二球目の甘いスライダーを左中間に破りツーベース。ワンアウト二塁で四番のコンドウに回す。ボール先行で、スリーボールワンストライクからの五球目、甘く入って来たツーシームをレフトスタンド場外に運ぶツーランホームランで、二点を追加。その後はクリバヤシ、シノダが連続三振に倒れ、スリーアウトチェンジ。
二回表の長工の攻撃。(ウエハラ、ストレートばっかり投げてるんだよな。いずれ打たれるぞ。スライダーのサイン。)(いや、ここはストレートで押そう。ストレートのサイン)(ショーがねーな。)
ストレートインローにズバッとストライク!152㎞、やるな。結局このバッターはストレートだけで抑えた。その後長工打撃陣が目が慣れてきたのか、ショートゴロ、サードライナーで二回の表は0点で抑えた。
「おい!ウエハラ。いくら球が速くても相手の目が慣れてきたのか合わせて来てるぞ。スライダーも使ってくれ。」
「あ?この程度のチームに俺のスライダーを使うまでもねぇ。」
「下山監督!ピンチになったらウエハラを代えて下さい。」
「ウエハラは、そのつもりでストレート連投してるんだもんな?」
「うす。」
「だったら思う存分投げさせてやれ、コンドウ。」
「分かりました。」
二回ウラ松高の攻撃。七、八番と連続ヒットでランナーをため九番問題児感を出してきたウエハラ。ここはバントのサイン。しかし、ウエハラはバスターを強行。ヒットにはなったが、ヤマナコーチは苦言を呈していた。ノーアウト満塁で一番スズキ。粘ってフルカウントからの六級目を見てボールフォア。一点を押し出しで追加。そして、続く二番イトハラがツーストライクからの三球目の釣り球を強打。前進守備を敷いていたセンターの頭上を超す走者一掃のタイムリースリーベースヒットで三点をさらに追加。続く三番キャプテン、ミナガワはライトにきっちり犠牲フライ。これで8-0まだワンアウト。続く四番コンドウ(ウエハラのコントロールが定まっている間に試合を終わらせないと。)
「ヤマナコーチ!」
「ん?」
「コンドウの奴、進化してますね。」
「毎日野球しかしてないですからね‼皆成長中ですよ。」
「コンドウのスイングがキレあるなと思って。」
「あー。奴は神スイングなんて言ってますがね。素振りのやり方をちょっと変えただけですよ。」
「神スイングね…。」
結局、試合はこのままの勢いで松高打線がつながり続け、危惧していたウエハラのコントロールも、良い感じに散らばり五回を0封。17-0(五回コールドゲーム)で勝利し、予選トーナメント決勝進出を決めた。
「今日はたまたま良かっただけで、敵がもっと強くなって行くのに、お前は独りよがりもいいところだ。」
「まぁ、勝ったんだから良いじゃん。次行こ次。」
「マツゾノコーチ。どうにかしてください、ウエハラの奴。」
「あいつがボロボロに打たれるまで待つしかないな。」
「はーい。」




