プラクティスゲーム その④-1
「お、結構広くて良いグラウンドじゃねーか。」
「今日こそやっと先発だな、ツチムラ?」
「あ、ああ…。」
「どうした?覇気がないぞ?」
「一イニングだけだぜ?」
「だから、何度も言ってるだろ?お前は、クローザー(抑え)で、秘密兵器何だってさ。」
「敵にクローザーの情報は渡せない。」
「後はトウマやウエハラが抑えるから、お前は一イニングしっかり投げきれ!」
「う、うす。」
「集合!」
「じゃあ皆、いつも通りの松高野球でコールドゲーム目指して頑張ろう。」
「うーす!」
「松高ーーファイオシ!!」
「プレイ!」
「今日は後攻めか…。」
ツチムラの第一球はストライク!シバノウナインも驚きの155㎞。これは手が出ないか。第二球は、アウトハイのストレート。さっきより速い158㎞。ストレートに意識が集中する所を第三球は少しは曲がる様にはなって来た120㎞台のカーブで見逃し三振。
「ナイスピッチ、ツチムラ!」
続く二番バッターには、ストレートだけで戦える投手だと言う事を印象付ける。第一球は、手応えを掴みかけた120㎞台のカーブから入る。バッター拍子抜けでストライク!第二球ここはまっすぐをど真ん中に投げる。バシーン!ストライク!バッターはさっきの緩めのカーブが頭の中にあるせいで、どうしても振り遅れる。スピードは156㎞。
「今日は走ってるな。でも奴の中では100%じゃあねーんだろうな。」
第三球目。インローのボール気味のストレート。目があってきたかは定かではないが、バシーン!ストライクアウト!空振り、二者連続三振で、ツーアウト。
「ナイスピッチ、ツチムラ!あと一人だぞ!」
「うす!」
「気合い入って来たな。その調子だ!」
「マツゾノさん、ツチムラの奴コントロール良いですね?」
「ああ。そうでなきゃ松高のクローザーは任せられん。」
続く三番バッターは二球目のカーブを捉えたがボテボテのショートゴロでスリーアウト、チェンジ。見事に一回をパーフェクトに抑えた。
「ツチムラ?フォークボールは、まだ自信ないか?」
「練習不足ですみません。カーブは結構良かったと思うんですが。」
「そりゃあそうだよ。でも今日は良かったぞ。合格だ。今後も松高が接戦に陥った時は助けてくれ。良いな。」
「うす。」
一回のウラ松高の攻撃。一番のスズキがセンター返しで出塁すると、すかさず盗塁。ノーアウト二塁で、二番イトハラが送ってワンアウト三塁。三番クリバヤシは粘って粘って四球を勝ち取る。ワンアウト一塁、三塁でケイタに打順が回って来た。
「敬遠はしないようだな。(相手のサウスポーはそんなに速くないストレートと、スライダーやカーブにチェンジアップを持っている。オーソドックスな左投げピッチャーだな。)ならばファーストストライクを一発で!」
ビュン、グワキーン!レフトスタンドへ一直線。先制のスリーランホームランを放った。ナイスコンドウ!続くキャプテンミナガワも続く。ライトポール直撃の、ソロホームランであっという間に4-0と先攻に成功。結局一回の攻撃は、もう二点を追加し、打者一巡の猛攻で11-0とした。
二回からは、ツチムラに代わりウエハラが好リリーフ。四回を一安打無失点に抑えた。結局、松高は21-0で五回コールドゲームで四試合連続ゼロゼロエックスゲームを達成した。
「あの子達は本当に一年生ですか?」
「はい。この間まで中学生でしたよ。」
「二年後が楽しみですね。またご縁がありましたら、その時も全力でお願い申し上げます。」
「はい。こちらこそ。」
その後、新発田農業高校は春期地区大会でベスト16に入っていたが、ケイタやトウマ達松高ナインにはどうでも良い事だった。




