プラクティスゲーム その③-2
新津南高校との練習試合は、三回までを終了して松高が20-0と圧倒的リードしていた。先発ウエハラも、出足は好調だった。MAX147㎞のストレートに、カーブやチェンジアップを織り混ぜ新津南打線を翻弄した。一人のランナーも、許さない快投だった。
「マツゾノさん?このままじゃ5回で試合終わっちゃいますよ?」
「そんなに投げたいか、ツチムラ?」
「はい、投げたいです。」
「良いか?ツチムラ。お前は抑えの切り札なんだ。プロで言えばクローザーだ。そんな大事な投手を楽勝の相手に出すのは、勿体無い。今日はウエハラに任せよう。」
「分かりました。」
今日は接戦にはならない。そう確信したツチムラは、肩を作るのを止めた。
4回表松高の攻撃は7番サードのヤマグチから。今日は、先発全員安打だ!ライナー性の当たりが右中間を破るツーベース。続く8番センタートバシラ。初球を強振、相手投手のしょんべんカーブを、ライト線に運ぶタイムリーツーベース。ここで代打サノ。
ウエハラは三回を投げて三振6被安打0四死球0と、完璧な内容だった。サノが送ってワンアウト三塁でトップに返って1番ライトのスズキ。三球目をレフト線に流し打ち、この適時打で、22-0スズキは4打数4安打2打点の活躍。続く2番ショートのトリタニはセカンドゴロ併殺打でスリーアウトチェンジ。
四回裏、新津南高の攻撃は1番からの好打順、ピッチャーはこの回から実戦初登板のサノ。
「サノ、いつものやつな!」
(いつものやつってツーシームか?まっすぐに自信無いからそうだな。ナイスリード、コンドウ)
「くそ!このまま5回でコールドゲームなんて恥だ。全員一年生の古豪に22-0だと?」
(さぁて、向さんも打っ気にかられてるぞ。コースさえ間違えなきゃゴロやフライを量産出来る。)
案の定ゴロアウトが増えた。1番バッターは、サノもうなずく"サノシーム"で空振り三振した。2番ライトエノモト。(エノモト?そういやぁ松中にも、そんな名前の奴がいたな?でも俺が知るエノモトは、大阪のPL学園に進学してる。人違いだな。それに似てねーし。)
「ワンアウト!ワンアウト!サノ、あと二人。」
「おう!」
「締まって行こう‼」
3番セカンドミネハラ。「サノシームで撃ち取れ。」
「おう!」
「ツーシーム一辺倒で大丈夫か?」
「問題無いです。コースさえ間違えなきゃ。」
こいつなら打てる。そう思わせたバッテリーの勝ちだった。(このツーシームは一年や二年には打てんかもな。)
第一球目はファウル。(アブねー。もう少しでホームランだぜ。)
第二球目も、ファウル。
(こいつは3年だな。多分打たれるかもしれないがまぁ、打たれてもしゃあーない。失点覚悟で行こう。)
「サノ?いつものやつな!」
「あいよ!」
(お、サノの奴開き直ったな。)
(よし、ならあの必殺ボールで仕留めるか。)
(何?スーパースローボール?仕方ねーか。分かった。)
第三球目を見逃し三振。スリーアウトチェンジ。(完全にタイミングを外したな!ナイスピッチング。)
五回表松高の攻撃は、5点を追加し五回裏はトウマが3人で締めて26-0で、五回コールドゲーム松高新チーム移行後3連続コールドゲームで、3連勝とした。クローザーのツチムラは出番がなかったが、いずれ必ずツチムラの力が必要な時が来るはずである。




