第一子誕生
「フンギャー、フンギャー。」
「元気な男の子ですよ。」
「頑張ったな!聖子。」
「素敵な子ね。」
「ああ。」
「シーズン中なのに大丈夫?」
「たまたまニューヨークにいたから、立ち会えた。」
「神様が見せてくれたんだわ。」
「これで野球に専念出来るわね?」
「何言ってんだよ。プライベートも仕事も両立してこそ一流の男だろ?」
「この子の名前どうする?」
「イサミってのはどう?」
「新選組??」
「なんか格好良いじゃん。」
「まだまだ聖子には、頑張ってもらわないとな。」
「どういう意味よ?」
「もっと子沢山な家庭にしたくてさ。」
「私達まだ、20歳よ?ゆっくり行きましょう。」
「そうだね。」
「せめてこの子が野球を理解出来るようになるまでは、現役でいたいな。」
「それは、大丈夫でしょう?」
「分かんないよ?こればっかりは。」
「とりあえず一流の暮らしが出来る金は球団からもらってる。出来高も、MAXでもらってる。」
「どうせやるなら長い事やってよ。」
「ああ。分かってるから。努力するよ。」
イサミは特に疾患もなく元気に3900グラムの大きな赤ちゃんだ。行く行くはプロスポーツ選手にならせたいと、親のエゴを受ける事になってしまうかもしれない。
「メジャーで、親子対決何てのもアリだな。」
「ま、まだ、先の話ね。」
「それより、早く退院して飯作ってくれよ?」
「貴方、まさかずっと外食なの?」
「アメリカは肉が旨くてさ。ステーキばっか食べてる。」
「呆れた。私、貴方に帯道しようかしら。」
「聖子は家庭の事だけやってよ。」
「足りない栄養分は、これ。」
「青汁??呆れた。」
「お湯割が最高に旨いんだぜ。」
「ああ、もうこんな時間。」
「明日はデーゲームだから帰るわ。」
「おやすみ。」
「No.29 ケイタ・コンドウ!!」
ゴールデンウィークも絶好調だったコンドウは、第一子の誕生で、よりパワーが増した。3、4月に続き5月も月間MVPに輝いた。本塁打16、打点45と好調だった。アメリカン・リーグ主要野手成績全てでトップにたったのだ。走塁面も強化して、盗塁数も格段に上がった。
6月も雨が多くバッティングが湿りがちになるが、コンドウのバッティングは湿らなかった。プロメジャープレーヤーに育休はない。打って打ちまくる事でしか、家庭に貢献出来ない父の無念さと言うのも、聖子に伝わると良いのだが。
聖子は、無事退院してニューヨークの住まいに戻った。イサミはアメリカ生まれだから、アメリカ国籍になる。ケイタ・コンドウの長男誕生は、アメリカや日本のメディアも大きく報じた。
「サムライキャッチャーに息子誕生!コンドウJr.見参!」
「全くけしからん。騒がしい連中だ。すまんな俺が野球バカで。」
「良いのよ。覚悟はしてたから。」
「まだ、早いわ。貴方がただの人になるのは。スターの宿命よ。」
「イサミの事は任せた。明日からはロードだけん行ってきます‼」
「貴方、最近日本語変よ?」
「え?そうかな?きっと英語が身に付いたからかな?気を付けるわ。」
「良いのよ。別に。私も、英語が身に付いたから。」
「でも、イサミには日本語と英語が両方使えるバイリンガルに成って欲しいよね?」
「そうね。その通りだわ。」




