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別次元

 (山田玄助杯での経験が活きてくるのは、この辺りベスト8からだ。並みいる強豪を押し退けて、勝利の女神を振り向かせるには、難しい事を必要とはしていない。日々の努力の積み重ねこそが、これから起きる別次元の戦いを勝利で終わらせる事に繋がる。と、俺は信じている。)

 「ケイタ?」

 「お、おう。おはようトウマ。」

 「おはよう。って今何時だ?」

 「朝の七時だけど。朝飯食ったか?」

 「いや、まだだけど。一緒に行く?」

 「おう。トウマが起こしてくれて助かったよ。」

 「どういう事?」

 「変な夢見てさ。夢の中で堅苦しい事を何度も何度も、誰かに言い聞かせていたんだ。」

 「誰に?」

 「分かんねーけど。」

 「はぁ?何だよそれ?」

 「でも、正しい事を言ってたのは確かなんだ。ベスト8以上に勝ち上がっていくのは、日々の努力がものを言うって。語ってた。」

 「朝飯急ごう。」

 「おう!」

 「集合!」

 「うーす!」

 「明日の準々決勝なんだが、マスオカを先発にしたいと思っている。キャッチャーはアリアケ。サードにコンドウ。これで負けてしまったら、三年生は怒るかもしれないが、決勝でエース、ホシノを投げさせる為の布石だと思ってくれ。いいな?」

 「うーす!」

 (って事は俺はサードか。少し負担が減るな。)

 「マスオカ!ちょっと来い。」

 「はい。コンドウ先輩。何でしょうか?」

 「明日は特別なメモリーゲームではないが、これだけは覚えとくと、来年の松高の為になる。甲子園のベスト8以上ともなると別次元の戦いだ。これは、戦った奴にしか分からない。今まで戦って来たどの試合よりも、プレッシャーのかかる試合になる。と思うが、初回の入りさえ完璧なら、何とかなる。非常時には三年生の先輩ピッチャーも控えている。とにかく悔いを残さずベストを尽くせ。」

 「コンドウ先輩のホームラン期待してます。」

 「おう、任せろ!」

 「言いたかったのは、それだけだ。後はアリアケのリードに従え。」

 「うす!」

 「僕のリードで戦えって?」

 「これも試練のうちだ。」

 「うす!」

 「今日の雨が明日に響かなきゃ良いんだけどな。」

 「阪神園芸の人達グラセン大変そうだな?」

 「この雨が続くようなら、明日の準々決勝は延期だな。」

 「爆弾低気圧…か?これは、勝利の女神が微笑んでくれたのか?」

 翌日…。ザァァと言って轟音を放つ雷雨により準々決勝は一日中止になった。

 「まぁ、プラスに考えて行こうよ。この雨が恵みの雨ってことで。休養にもなるし。」

 「そんな事より、良いんすか?マスオカ、アリアケバッテリーで?」

 「来年を見据えた起用ならお断りします。」

 「あのな。今大会登板回数がないのはマスオカだけなんだ。何処かで使わなければならないカードなんだよ。」

 「まぁ、そうなんだがこれは、決定事項なんだよ。すまんなコンドウ。サードで暖かく後輩バッテリーの完封を目にするのも悪くはない。と思うぞ。」

 「うーす!」

 (そういゃあマスオカの球だけは受けた事ないわ。まぁ、別に今更良いか。)

 翌日。今日は思いきり晴れた阪神甲子園球場。第一試合大阪桐蔭VS花巻東は12-3で大阪桐蔭高等学校が順当にベスト4一番乗り。第二試合は興南VS大分明豊は8-6で沖縄県代表興南高等学校がベスト4進出。第三試合は拓大紅陵が桐生第一を7-3で振り切りベスト4進出を決めた。

 そして、いよいよベスト4最後の椅子をめぐって、松高と浦和学院が対戦する事になっていた。

 「これ試合の途中に雨降ったらやですね?」

 試合もおして第四試合はナイトゲームとなった。幸いにも有利とされる後攻だが、浦和学院も二年生バッテリーが来るとは思ってないだろう。

 「ササオカ?おーい?」

 「はい?どないしはりました?」

 「松高はここで二年生バッテリーがスタメン起用だって!」

 「何ですって?」

 「そんな驚く程の事じゃねーよ。」

 「全日新聞としては、もっとコンドウのリードが見たいですけどね。」

 「松高も来年を見据え始めたってとこすかね?」

 

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