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プロローグ

このよう作品は初めて手掛けるため、色々とおかしな点が見受けられると思われますが、そこは暖かい目で見守っていただけますと幸いです。

 八月八日十四時五十分、季節は夏。

 世間一般では夏休みの真っ只中であり、高校生以下の子供達はそれぞれの遊び場で楽しく遊んでいる。残念ながら大人である社会人は、お盆までは仕事に勤しんでいる頃だ。


 普段であれば俺もその中の一人でしかないのだが、今回に限っては別である。

 陸上自衛隊T駐屯地に配備されている普通科連隊に所属する早坂 守(はやさか まもる)陸士長は、先月中旬から下旬にかけて行われた約二週間もの演習訓練を終えると、今までに溜まってきた代休を消費するよう先任陸曹に言われてしまい、八月の一日から本日八日までの約一週間、悠々とした休暇を満喫していた。


 現在、俺は駐屯地内にある隊舎の自室にて、妹から受け取った(押し付けられた)ゲームをプレイしていた。そのゲームの名前は『Love/Zombie』という、サバイバルホラー要素が組み込まれた男女兼用恋愛ゲームである。


 とある国の研究機関から殺人ウイルスが流出し、そのウイルスにやられた人は一時間以内に歩く屍…通称ゾンビとなって民間人を襲うようになる。ゾンビに噛まれた人間は異常な寒気や空腹に襲われ、一週間以内にゾンビの仲間となってしまう。それ故に噛まれたことを隠そうとする人が後を絶たず、結果的にゾンビ騒動は全世界に広まってしまった。壊れた世界の壊れた日本、ゾンビの徘徊する日本を舞台に、時に悲しく、時に甘い恋をしながら生き残りをかけて戦う物語だ。


 男女兼用とついているだけあり、男の俺でもかなりハマる…のめり込める程の要素が満載なゲームである。


 最後のエンディングロールが終わり、初めのスタート画面へ戻ったのを確認すると、俺は一息ついて椅子の背もたれにもたれ掛かった。このゲームを全て攻略するのに約一週間、つまり今回の休暇すべてを注ぎ込み、食事やトイレ等の必要最低限の時間を除けば、ほぼ不眠不休でプレイしていたといっても過言ではない。その為か、現在ものすごい眠気を感じている。


 目頭を押さえ、ゆっくりと大きく伸びをする。流石に無理をしすぎたのか、身体がとてもだるい。


「っと、もう十五時か…昨日は風呂行きそびれちまったし、シャワーでも浴びてゆっくりと…っ!」


 休もうと言って立とうとした時、強いめまいに襲われ、再び椅子へと座り込んだ。不味い、これはかなり重症のようだ。

 仕方なくこのまま寝てしまおうと目を閉じようとしたとき、表示されている画面に違和感を覚えた。


 眠い目をなんとか凝らし画面の違和感の原因を探すと、その原因はすぐに見つかった。

 普段は一番下に置かれている『オプション』…その下に小さく書かれている『おまけ』の文字を見つけた。


 この文字を見つけた時、俺は一瞬どうするべきか非常に悩んだ。『おまけ』というのは非常に魅力的だが、正直今の体力は限界に近く、これがスチルとかであれば何とか見れるだろうが、もしおまけのエピソードが始まってしまえば、寝落ちしてしまうかもしれない。だが、今を逃せば次にプレイできるのはいつになるだろうか。


 もし寝落ちしてしまった場合、俺は明日の起床ラッパまでは起きられない自信がある。かといって、明日や他の日にやればいいのではと言えば、そういうわけにもいかない。この休暇が終われば何時もの訓練に戻るかと言えば、そうではないのだ。先月の下旬まで続いた演習後の整備や、今月行われるの検閲に向けての準備等、激務が待っている。


 俺は重い身体を動かして机の上に山積みに放置されているエナジードリンクの空き瓶の中から、まだ中身が残っている瓶を取り出してそれを口に含んだ。強い刺激が喉を通り、先程よりかは頭がスッキリしたような感覚になる。


 これでしばらくは大丈夫だろう…。


 マウスを操作して『おまけ』をクリックすると、画面にアンケートのようなものが表示された。

 内容をよく見てみると、記入必須項目が多く存在しており、氏名、性別、年齢、身長、体重、髪の色、瞳の色等、キャラクター設定でもしているのかと思うような内容がほとんどだった。


 しかしなんたってこんなものを…。


 不思議に思いながらも、俺は必須項目に自身の情報を入力していく。住所や電話番号等がないのが幸いだが、今の俺だったらそんな項目にも平気で記入してしまいそうだ。


 アンケートに答えていくにつれて、必須項目の文字がなくなり、無難なアンケートが出てくるようになった。



 Q.この作品の他に、あなたが普段よくプレイするゲームはなんですか?どのようなジャンルでも構いません。(一つまで)

 A.



 Q.今後これしか食べられないと言われた時、あなたは何を選びますか?

 A.



 いったいこの質問になんの意味があるのだろうか?寝惚けた頭が一瞬思考を停止するが、別に気にするほどのことでもないかと気持ちを切り替え、再び記入していく。



Q.この作品の他に、あなたが普段よくプレイするゲームはなんですか?どのようなジャンルでも構いません。(一つまで)

 A.Dead Police



 Q.今後これしか食べられないと言われた時、あなたは何を選びますか?

 A.おにぎり



 『Dead Police』とは、去年の七月に発売されたばかりのゲームにも関わらず、去年の売上げ総数第一位を獲得した大人気サバイバルホラーゲームである。


 米国の地方都市で起きたゾンビ騒動を、主人公の警察官が市民を救いながら、原因を突き止めるべく一人地獄へと立ち向かっていくゲームだ。このゲームは銃の種類が豊富で、序盤こそ米国の警察が正式採用しているS&W M39といった拳銃しか装備できないが、中盤以降は米軍の使用するM4カービンやH&K HK416等の軍用小銃も登場し、ある時は期間限定で89式小銃が登場したりと他国の銃が登場することもあった。


 そのことから多くのガンマニアやゲームマニア等から多くの支持を集めたとか。


 おにぎりに関しては、完全に俺の好物を書いただけに過ぎない。おにぎりはいいぞぉ。具材を入れてない塩だけのおにぎりもいいが、なんといってもバリエーションが豊富だ。王道的なツナマヨや紅しゃけなどの他にも、近年では唐揚げが入っていたり、チャーハンがおにぎりになっていたりなど、様々なバリエーションが産み出されている。まず飽きることはないだろう。俺は毎日おにぎりでもいっこうに構わん。


 全ての項目に記入を終え、最後の見直しも済ませると『完了』のボタンをクリックする。すると画面に『変更はできません、本当によろしいですか』の文字が映し出された。念のためもう一度見直しを行うが、やはり問題はなく、俺は『はい』のボタンをクリックした。


 暫くすると画面の中央に砂時計の絵が現れ、それがゆっくりと回転を始めた。おそらくデータをダウンロードしているのだろう。


 その間に俺はやっとの思いで立ち上がり、着替えや風呂道具をまとめて隊舎内にあるシャワー室へと足を運んだ。残念ながらシャワーを浴びているにも関わらず眠気が飛ぶことはなく、逆に強くなる一方だった。仕方がないが、今回はプレイを見送るとしよう。


 非常に心苦しい判断だが、そろそろ本当に限界が近い。あれだけのことをしたのだ、スチル等ではなく、本当におまけのエピソードか何なのだろう。そう考えるとプレイはできない。


 シャワーを浴び終え自室へと戻ると、どうやらダウンロードが終わっていたようだ。画面には『準備が整いました』とその下に小さく『ok』の文字が映っていた。


 俺はすぐさま『ok』のボタンをクリックした。エピソードが始まったらすぐにセーブを行い、パソコンをシャットダウンさせてベッドで休もう。そう考えた瞬間、パソコンの画面が突然真っ暗になり、何も映さなくなってしまった。


 俺は数回パソコンを叩いてみたり充電コード等を確認するが、どこにも異常は見当たらなかった。

 普段であればあわてふためいてどうしようかと途方にくれるのだろうが、今の俺はそのことよりも早く寝たいと考えていた。明日パソコンに詳しいあいつに聞いてみるか…。


 俺はなんとかベッドまで歩いていき、そのまま倒れこむように寝転がった。もう無理、本当に限界だ。

 俺はゆっくりと目を閉じると、深い眠りへと落ちていくのであった。












 早坂が寝静まってすぐのこと。


 落ちたはずのパソコンが再び起動し、青い画面が映し出された。そこには四つの文字だけが書かれていた。


 パソコンの画面は誰もいなくなった(・・・・・・・・)部屋でしばらく点滅した後に、再び真っ暗になって機能を停止した。









     『たすけて』




どのような評価、感想でもお待ちしております。

次回投稿は未定です。

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