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明日、新しい人生の一日目  作者: えみぷらまー
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明日が大好きになる日々を目指して

私の持っているものは小さな車と自分自身だけ


空は曇っている。朝8時半。紺色のパンツスーツ、長く伸ばした黒い髪。後ろに縛るのは嫌いだから、肩にたらしたまま。毎日通う20分の通勤路は、なぜか感情が揺れる。

毎日同じ時間に起きて、ほぼ同じ時間に寝る。とてもつまらない生活。なんでこんな風に陥ってしまったんだろうと紅葉は考える。正社員の経理の仕事に出掛ける車の中で、紅葉は運転しながら涙を流していた。鏡で自分の顔を見る。涙だけがほほを伝うだけ。

隣の車の運転手は気付かない。それがいい。誰にも気付かれたくなんてない。


毎朝、仕事前にアメリカの番組を見るのが好きだった。一瞬のエスケープだと思っていた。色んな番組を見た。コメディだったり、警察を追いかける番組だったり、英語を聞いて、外国の文化を眺めていた。それもいつのまにかしなくなった。


紅葉がカナダにいたのは3年前だった。紅葉が30歳になる年に帰国し、地元の愛媛に戻った。紅葉は、留学なんてしていない。ワーキングホリデーと語学学校、手に入れたファストフードのささいなバイトをしながらカナダで生活をしていた。そこはトロントだった。そこで会った人々は、紅葉に大きな衝撃を与えた。普段会うことのない人々。アーティストだったり、科学者だったり、そんな人達と自分を比べては、過ぎてしまった時間の長さと過去の自分に落胆していた。


紅葉は、カナダから帰国する日、5人ほどの友達に送られて空港から飛び立った。紅葉は大きく泣いていた。恋人と別れる涙では一切ない。帰国したくない、まだ帰国したくなかった。でも、何が出来るか分からなかった。ビザの期限切れを理由に、帰国するしかないと思っていた。


帰国後の3年前に始めた経理の仕事では、女性30代、経理初心者にしては良い給料をもらっていた。小さな家族経営の会社で母が住む実家から近く、英語を使う業務もある仕事をしていた。


消えたいは、消えたくないと叫んでいるのと同じこと


朝、目覚まし時計に起こされる。

ベッドの中で重い感情との毎日の闘いに苦しんでいた。

脳裏に天井から垂れたロープを想像してしまう。実行には移さない。だけど、脳裏に出てきてしまう日々だった。何がどうなってこんな苦しみがやってきたんだろう。

仕事を辞めたかった。30歳独身女性なりの生活をしたい。辞める手段はなかった。



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