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勇者、転生して魔王になる。  作者: 名無しの奈々氏
3/6

3、あらゆるところに揺蕩う者


 さて、今この状況を誰か解説してほしい。なんだ、というかどこだこれは?


「お帰りなさいませ、魔王様。」


 俺のすぐ左下で声がする、ちらとそちらを見れば、両こめかみあたりに角が生えた鬼人が頭を下げ傅いている。何も言わずにいると前下がりにカットされた艶やかな黒髪が揺れて顔を表す。

 少し切れ長で吊り上がった一見ややきつめの印象を与える目は、鮮やかで薄い紫の瞳に俺を映してこちらを伺い、伴って長い睫毛が揺れている。


 おお、思ったより美人。


「魔王様、どうかなさいましたか」


 うーん。どういう状況なんだマジで。夢か?弱すぎパーティも弱すぎ魔王も全部夢で実は家で寝てるとか?


「ちょっと、俺のこと全力で蹴ってみてくれ。」


 頬を抓って痛ければ夢じゃない説をまさか試すことになろうとは。しかし唐突な変態発言のせいでドン引きなのか無言の鬼人。・・・ん?そういうわけではなさそうだ、少し狼狽えているのか。


「いえ・・・その・・・現在魔王様がお使いになってるお体はもろくて、です、ね・・・」


 視線をさ迷わせ、言い辛そうにゆっくりと切り出す。

 なんか少し気になる発言ではあるが、俺がもろい?なかなか面白いことを言うなぁ・・・”鑑定”スキルを発動する。ちなみにこの”鑑定”、職業の商人でしか獲得できないスキルであり、自分より1でもレベルの高い”鑑定”を相手が習得しているか、相手・物に”隠蔽”スキルが使われている場合”鑑定”は一切できない。

 言わなくてもそろそろわかりそうだけど、俺の”鑑定”スキルは10レベル、”隠蔽”スキルも10。

 こういう相手のスキルレベルに応じて自分のスキルが無効になるタイプで、レベルが同じである場合は、50%の確率で鑑定でき50%の確率で無効化される。この確率を操作する方法もあったりはするのだが、少し複雑になる話なので今は置いておこう。尚自分に使う場合には勿論無効化されない。


 で、だ。俺をもろいと断じた鬼人を”鑑定”したところ、鑑定結果が鬼人の右上、黄色に輝く枠のなかに名前、年齢、性別、職業、クラス、ステータス、所持スキル一覧と一斉に表示された。


----------


名前:アミラ 年齢:240(人間年齢24) 性別:女 職業:鬼人 クラス:魔物


生命力:8000 魔力:500 物理攻撃力:300 魔法攻撃力:100 防御力:20


所持スキル:

鬼人化10 物理攻撃力ブースト4 体術7 体力7 魔法防御8 物理防御5

回避3 隠密2 覇気6 魔法攻撃力ブースト3 闇系統5


光系統防御-2

----------


 おお、結構強い。少なくとも俺がさっき殺した魔物のどれよりも、魔王よりも強い。

 多分大丈夫だとは思うけど、一応自分の安全を確保するって意味でも見ておくか・・・と自分を鑑定。


----------


名前:ヴィシュヌ 年齢:1500(人間年齢28) 性別:男

職業:あらゆるところに揺蕩う者(ゴースト) クラス:魔王


生命力:32000 魔力:30000

物理攻撃力:1000 魔法攻撃力:1000 防御力:1000


所持スキル:

覇気10 物理攻撃力ブースト9 斬撃9 刺突9 投擲9 体術9 体力9

魔法攻撃力ブースト9 火系統9 水系統9 土系統9 風系統9 光系統5 闇系統10

物理防御9 魔法防御9 回避8 自動回復8 状態異常耐性10(状態異常無効) 支援魔法8

隠密5 鑑定10 隠蔽10 交渉1


光系統防御-8

----------


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


 いやいやいやいやいやいやいや待て。

 流石にこんな化け物ではなかったはず。軒並みスキルレベルが上がっているし、無かったスキルがある。そもそも生命力!!!ありすぎだろ!

 ・・いや、そもそも職業のゴーストとはなんだ?聞いたこともないし、勇者パーティに入っていたから勇者だったはずだ。クラスに至っては見かけは剣士だが本当は破壊者(ブレイカー)だった・・・


 さすがに動揺が隠し切れず、鬼人を見つめたまま数秒固まってしまっていた。


「あの・・・魔王様・・・?」


 その声でハッとして我にかえる。大きく頷いてみせ、早く夢であれば少し落ち込むが覚めたいし、夢でないなら喜びたい。

 鬼人は躊躇うそぶりを見せていたが、俺の頷きで決心したらしい。・・・・それにしては、”鬼人化8”と”攻撃力ブースト4”を発動させ殺す気満々といった様子で、立ち上がりながらのた”体術”スキルによって予備動作なしで重い上段蹴りを放ってきた。


 おいおい、容赦ねえな・・・いきなり頭を潰しにくるわけね


 などと考えているうちに、放たれた左足は正確に俺の頭部を捉えているのものの、しなやかな足首は俺の頭部に当たった瞬間に。まるで岩にでも当たったかのような鈍い音を立てて止まってしまった。


 ん・・?なんか虫がいたかな?という感じ


 それも当然だ。鑑定結果が本当なら。


「・・・・そ、そんな・・・・」


 鬼人は、驚愕に目を見開くとまるでこの世の終わりかのような悲痛な声で言い、恐る恐る足を下ろすとその場にへたり込んでしまった。「こんなはずは」とか「なぜなの」とブツブツと呟き俯いてしまった。

 まあ、なにかしらの事情はありそうだ。



 そんなことより、とりあえず夢じゃないってことがわかった。まずは喜ぶか。

スキルの表記方法を統一しました。→””内。

次回の更新は早くて三日後を予定しています。

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