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蒼の軌跡外伝 AMBITION  作者: るいあ
4/5

氷狼の牙との決着


飛び出して来る影にゼリオンの剣が風を薙いで襲い掛かる。


頸動脈を断ち切る一撃が入ってからその影が女だった事に気付いた。


ドシャっと声を上げずに倒れ込む女の後ろから別な女達の悲鳴が聞こえてくる。


「邪魔だ!さっさと何処か行け!」


その言葉にわらわらと出てくる女達が7名程散らばって逃げて行く。

それに紛れて3人の男が外に出てしまっていた。


「くそっ!囲め!」


ゼリオンの声で3名の男達を取り囲むように包囲するが相手は女達を盾にして剣を振って来る。


「邪魔なら殺せ!」


ストライズの言葉に部下達が女ごと敵を斬りつけると敵は血を撒き散らしながら女と共に倒れた。

同時にもう一か所でも女ごと斬り捨てた敵が地面に這いつくばる。


最後のひとりを倒す前にまた出口から敵が湧いて出てくるのをゼリオンの剣が刺し貫くが

次第にその数が処理しきれない数になってくる。


ゼリオンが4人程殺した所で陣形が瓦解した。

出入り口以外の窓からも敵が出て来た事もある。


出口を抑えて一網打尽にすれば被害は少なっただろうが

こうなってしまっては泥臭い総力戦へと変わってしまう。


ゼリオンが体制を立て直しす為に一旦下がると特大のふたつの炎が後方から味方を焼いた。


「ぎゃああぁぁぁっ!」

「なんだ!誰だ!」

「さっき逃げた女だ!」


先ほど逃げ出した女の中に魔術師が紛れ込んでいたのだろう。


いや、わざと紛れ込ませた可能性の方が高い。優先度で言えば

絶対先に倒さなくてはならない敵だ。


ストライズは一瞬でその思考に達する。


影縛りを使って魔術師の女の腹へと剣を突き立てて2人の女を倒していく。

これで使える影縛りは使い切ったという事になる。


後は本当に作戦も何もない泥臭い殺し合いが待っているのだ。


剣戟の音はさらに増え、敵のボス、ギールムまで出て来るのが見えた。


同時にギールムの使う氷魔法でジールが一瞬で氷漬けになった。


「ジール!」


叫びながら駆けだそうとするゼリオンをストライズが止める。


「止めろゼリオン、奴は俺がやる。」


歩み寄るストライズより遥かに高い身長のギールムがニヤニヤと

馬鹿にするような視線を送って来る。


「くくっ、お前が龍の咢のボスか?子供は家でママのミルクでも飲んでるといい。ハハハッ!」


敵に笑われる事には慣れている。その全てを今まで殺して来た。

ストライズは黙って剣を握り直した。


ストライズが敵の氷魔法に対抗する手段は現状ではひとつしかない。

氷に対して炎の魔法をぶつけるのだ。


元々ストライズは魔法向きでは無かったが発動できる魔法は指輪から炎の魔法が1つ、

しかも1回のみ。だが特大の上級火魔法が1回だけは使えるのだ。


相手の魔法に併せて使う事で隙が出来れば、近接戦闘においては

ストライズに分があるだろうという計算だった。


剣を握り相手の魔法の発動を待ちながら距離を詰めていく。


ギールムは相当に自分の魔法に自信があるのか余裕の笑みを崩さない。


ストライズが全力で駆けだすのと同時に足元から氷の刃が伸びる。


ストライズは加速してから飛び上がるとギールム目掛けて剣を振る。


同時にギールムが手を前に無詠唱で氷の特大魔法を放って来た。


それに併せてストライズも火魔法を発動させる。


ドパァン!


鳴り響く魔法同士のぶつかり合う音に部下たちの手が一斉に止まった。


収束していく魔法が消えた時にはストライズだけがその場に立っていた。


周囲にはくすぶった炎と砕けた氷の欠片が散っており

ギールムは胸に剣を立てたまま仰向けに倒れていた。


部下達の歓声を聞きながらストライズは呟く。


「また生き残っちまったな・・・。」


「そうだな・・・。」


ストライズがゼリオンとそう言葉を交わしてギールムから剣を引き抜いた。


ギールムの部下達は既に抵抗を諦めたようで、次々に部下達に捕縛されていく。


ストライズはギールムの指輪を奪って指に付けた。


「オープン。」


異空間収納の中には白金貨18枚と麻薬がかなりの量あった。思いのほか多く

嬉しい誤算だ。これで当面の金の心配はなくなったという事だ。


戦利品の回収と新しい拠点となるギールムのアジトを見ながらまだ息のある

連中を見て回る。既に部下達が敵の捕縛を終え死体の処理を始めていた。


上級魔法があれば助かりそうな部下が5名に初級治癒魔法を当てて医者へと運ばせる。

他には腹に剣を刺しても生きている敵の魔法使い女が1名いた。


「俺の部下になるなら助けてやるがどうする?」


「ぐっ、殺しなさい。」


「そうか、じゃあ助けてやる。」


直ぐにでも仲間になると言えば殺していただろう。

自分の仲間を裏切ってまで助けを乞う女は信じられないからだ。


時間は掛かるだろうが信用出来る奴の方が仲間にするには相応しいという事だ。


捕らえた男達にはそれぞれ見張りを付けて試験をするつもりだった。

次なる龍の咢の敵をひとり殺せば自分が助かるという試験だ。


恐らく、次は重剣のウォルグがいる飛竜の宴、もしくは紅の魔女アーシアがいる

紅の穿龍だろう。数的には遥かに大きいが両方ともに100名程のマフィアだ。


更にその上には200人以上もいる龍神の狂乱という組織がいるがそこのボスに

ついては情報が全く出てこない。相当厳重な緘口令が敷いてあるのだろう。


対してうちの組織は今の戦闘で死んだ4名と新たに加入する可能性がある18名を

入れても35名。どうあがいても勝ち目のない戦という訳だ。


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