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蒼の軌跡外伝 AMBITION  作者: るいあ
2/5

二人の過去


ギールム率いるギャング達はストライズの組織よりも新しく人数では倍以上の差がついている。

噂ではギールムが氷魔術師の上級を持っているという話だが直接の面識はない。


お互いに数か所あるアジトの場所が割れているせいで削り合いの様な局地戦を

繰り広げる事になっていた。しかも圧倒的にやられっぱなしというおまけ付きだ。


最大40名近い組織だった龍の咢はここ数か月で21人へと人数を減らしいる。

対してギールム率いる氷狼の牙は50名に近い組織にまで数が増えていた。


ストライズを中心にぼろいテーブルを21人のマフィア達が囲む。

そのテーブルの上には珍しく豪勢な食事が並んでいた。


「これが最後の晩餐かもしれないからな。うちの資金はこれで底をついたという訳だ。

今日負ければ生き延びても明日から飯は食えないと思え。」


ゼリオンが帝都で一番安い葡萄酒をみんなのグラスに注いでいく。

グラスに半分ほどのワインを全員が掲げて黙って乾杯する。


ストライズはただでさえ落ち目の組織と呼ぶのも躊躇われるほどなのにによく

何人もの人間がついてきたものだと想いながらグラスを傾けた。


スラム街出身の荒くれ者達を纏めあげ帝都一のマフィアを夢見て早8年。真っ当に働いてた

時期も確かにあった。安い賃金で馬車馬のように働きながら明日を夢に見てた時代。


帝都なんて貧乏人は夢を見なければ生きられない街だ。ホワイトゴールドランクを取った時には

相応に大きな夢を見たものだ。ゼリオンと二人で最強の冒険者を目指した事も今では過去の

夢物語のように思えてしまう。


全ては、あの時起きた事件のせいだが・・・。


当時、貧しくても冒険者として登録してさえいればそれなりの生活は出来た。

ストライズ達のパーティは実際に帝都の平均収入よりは稼げていたのだ。


数人のゴールドやホワイトゴールド達とパーティを組んだり一緒に協力したりしながらも

日々の糧を得られていた日々、戦闘は厳しくも充実した毎日だった。


だからこそ、俺達はスラム街出身でも幸せに慣れると信じていたのだ。

だが俺達の信じていた現実という物は、ある日、砂城のように崩れ去ってしまった。


ゼリオンの結婚式を一週間後に控えたある日、貴族の乗る馬に蹴られて

ゼリオンの婚約者が呆気なく死亡した。


誰にも真面に取り合ってすら貰えなかった。命の価値が違い過ぎるという理由だけで。


道端に打ち捨てられたままの婚約者の遺体に泣きつくゼリオンにどんな言葉が掛けられたのだろう。


ゼリオンを連れ、貴族街に忍び込み目的の貴族を殺して俺達は冒険者を辞めた。


あれからもう8年か・・・。


貴族との力関係は今も何も変わらない。スラム街の命は貴族の命とは比較できない。

なにも変わらない腐りきった街だ。それも裏の世界に入ってよく分かった。


スラム街で蔓延してる貧乏人用の麻薬も質が悪いものばかりだ。

貧乏人はどこまでも貧乏になる仕組みが確立されてるとしか思えない。


浮かび上がるには帝都という場所は大きすぎる。今にも街に飲み込まれて消えて

しまうようなそんな錯覚すら覚えてしまう。


食事を終え武器の手入れをするゼリオンと視線が交わる。

言葉も無かったが何となく考えている事は同じかもしれないと思った。


風が吹くたびギシギシと鳴るぼろいアジトで息を殺すように夜中を待つ。


ストライズがテーブルの上に置かれた図面を念入りに確認して配置を決めていく。

敵のアジトは4つ。その全てを今夜強襲するのだ。ひとりでも相手を逃がして

集合されると数的に不利になる。21人で一か所ずつ潰していかなければならない。

そしてひとりも逃がす訳にはいかないのだ。


制圧に時間を掛けるのも不味い。一か所10分以内に制圧しなければならないだろう。


紫煙を燻らせて時間が過ぎるのを刻々と待つ。


午前2時。その時間にゼリオンが音もなく立ち上がった。


「行くか。」


全員の顔を見回して皆が頷くのを見てからストライズが足で煙草を踏み消した。


皆が予定通りの配置についてストライズが扉の前で手を挙げる。

斧を持った部下が扉を破壊すると同時にゼリオンが建物の中に飛び込む。


併せてストライズもその背中に続く。


「なんだ!?」


建物の中で飛び起きたのは5名。確認と同時にストライズの指輪で影縛りが発動する。

ゼリオンが3人の首を斬った所で影縛りが消えた。


「左をやれ!」


そう言いながらストライズが右の敵目掛けて剣を突き出すと確かな手ごたえと共に

血を吐き出して男が倒れる。直ぐにゼリオンの方へと振り返る。


「くっ!」


鍔迫り合いをする形になっていたゼリオンと男を取り囲むように部下が部屋に入って来る。


「分かった!おれの負けだ!命は助けてくれ!」


剣を引いて残った男が命乞いを始めるのをストライズが冷めた目で見つめた。


「やれ。」


男の端末魔が部屋に響き渡ってから全員が部屋の中を調べ出す。


「ゼリオン、影縛りはあと3回しか使えないからな。」


「分かってる。」


「ボス、ここには大した物はないです。」


金貨数十枚の金があったくらいで他に目ぼしい物はなかった。

部下からの報告を受けて拠点を後にして直ぐに次の拠点へと向かった。



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