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猫の声



薄暗い路地


汚れたゴミバケツの横


腐った臭い


虚ろな目をした子猫



暗く 冷たい


夜の雨



捨て猫は震えているだけ




猫は何も知らない


温もりも


幸福も



だから求めることもない



ただ



目を閉じたとき




浮かぶ景色がある





太陽の降り注ぐ草原



そこに王がいる



夕日に輝くたてがみ



戦きを呼ぶ咆哮



眩しい程の姿



子猫のまぶたの裏



夢の輝き





汚れた路地に生きる子猫



小さな牙をむいても



声を張り上げても


戦く者はなく


ただ 嘲笑(わら)われるだけ




ただ猫だけは気付いていた


自分の中に


同じ血が



同じ遺伝子が



眠っていること




それが叫んでいることも





ライオンになりたい



草原の中で


風に吹かれる覇者に



大地を轟かす



誇り高き



唯一の王者に




笑わせはしない






でも




いくら目を覆っても



いくら耳を塞いでも




風が吹くたび



息をするたびに





この場所の臭い




何かの腐敗臭が





猫を 現実に



引き戻す






汚れた



ずぶ濡れの子猫





小さな小さなか細い声は





涙まじりの





悲しみの咆哮






―――


「ライオンになりたい」。


このワンフレーズを入れたくて作った詩です。


暗い路地裏。


そして鼻につく腐敗臭。


それでも、生きていかなければならない子猫。


今ここにある現実と、さして変わらない気もします。

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