秋本理子に二次元ネタ振ってみた!!
ギャグ系ですっ(*´∀`)
乙ゲーの話をしていますっ(*´∀`)
その名も“不思議の国で恋煩い 君を一生帰さない”。(すげーごてごてだ……)
狩人がヤンデレだったり、ピーターパンが王子だったりしてます(*´∀`)
シックな雰囲気のする喫茶店。ブラウンを基調とし、落ち着いた雰囲気を辺りを包んでいる。
其処のボックス席に、私達は着いている。
私の友達、つまり秋本理子は、ロングヘアを一纏めにし、眼鏡をかけた如何にも真面目そうな子。
そして短く切った髪に、大の大人でも怯むような鋭い目つきをしているのが私である。
「乙ゲー買ったんだけどさぁ……」
私は注文した珈琲を啜ると、唐突にぼやいた。
その瞬間、なんて言うのだろう……言うなれば野生の飢えた狼に肉をちらつかせているような。はたまた合コンにイケメンを放り込んだような……。そんな緊迫した空気が肌を刺激した。
眉を顰め恐る恐る前を向くと、飢えた狼や、イケメンを前にした肉食系女子の比ではないオーラが其処にあった。
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 何!? 何を買ったの? 誰攻略しちゃう感じ!? やっぱりツンデレ? そうだよねー……世はツンデレ好きが多いもの……。私も好きだよー!! さぁ、デレろ!! 早急に!! 暴言吐きならがら、タオルを差し出せ!! 慰めろ!! イベント発動だぁぁあぁぁあぁぁ!!」
一生懸命声を抑えて、周りに聞こえないようにしているものの、聞こえている人は不審者を見る目をしているよ。
……此奴周りの比じゃない程にオタクだった。世のオタクってのはもっと照れ屋で、あからさまに出さないのが普通なんだけどなぁ。
少なくともこんな反応は希である。もっと落ち着いて、『あっ……好きなの? 面白いよね……!!』みたいなトークから始まり、時折目を輝かせながら細細と薦めてくる。
つか此奴を普通という括りに纏めた私が愚かなんだけど。
「“御伽の国で恋煩い 君を一生帰さない”」
「来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 帽子屋様大好き!! 声優さんのヴォイスで耳が融解した!! 溶けたっ。気を失った!! ごふっ……」
興奮の余り、鼻血を垂らしている。私は何も言わず、側にあった紙ナプキンを顔面に向かって押し当てた。一瞬、乙女にあるまじき醜い豚顔になったが、許せ。
「はいはい……。でさ、誰から攻略するのがお勧め?」
「ふっふっふっ……言うまでもない……。それはズバリ……」
「すばり?」
「赤ずきんの狼さんですっ」
変化球来たー。いやアッパーだなこれは。思いっ切り顎にぶちかまされた鉄拳が私を行動不能にする。とんでもねぇデッドボールだ。
暫く唖然とした顔で秋本を見ていると、彼女は独りでに語り出した。
「そう……それは禁断の恋…………。許されないロミオとジュリエット………。あぁブルートゥスお前もか……!!」
「最後関係ねぇよ……」
「ふふっ。冗談よ。君の好きなキャラから口説き、触り、愛でれば良いのだよ。でも狼さんって答えたのは一般論。ありゃ人気投票ぶっちぎりだな」
自分の考えが当たったかさえも分からないのに、納得したように頷いている。
「なんせ監禁上等のヤンデレ狩人から赤ずきんを救い、暴言吐きながらも優しく世話をし……」
「ヤンデレ…………!? っておい、ネタバレ」
乙女モードで語る女に向かって額を叩き、現実に引き戻す。成人女性とは思えないような、はぁはぁと息切れをしている所を見られたら、あんた色々終わるよ? 変態作家として世に広まるよ!?
「おっつ、スミマセン。君は王子系が好きと聞いているからー」
「うっさいなぁ」
にやぁ……っと口角を上げて、不気味な表情になる。
この表情を世にも恐ろしい担当編集さんに突きつけてやりたい。『さっさとやれよ。ゴミ虫……』とでも言われればいい。
「ピーターパンはねぇ、ガチ王子系。『姫、今日も僕と旅に出掛けましょう。夢の国……ワンダーランドで帽子屋と……』」
「原作では王子感全く無いのに……。そしてアリスネタぶっこむな!! 話逸らすな!! 帽子屋愛を何とかしろ!! つかこのゲームどうなってんの……!?」
狩人ヤンデレだし、子供のピーターパンが王子だし……設定捻りゃ良いってもんじゃないでしょ!? 人気No.1とか聞いたから、なんとなくノリで買ってみたけど、プレイするのが怖くなってきた……。
──三十分後──
「もう帽子屋様の上品だけど俺様系なところがもー最高でー!! もーガチで俺の嫁なのっ!! 彼に解体されて胃袋に収められたい……!! 料理されたい……!! 彼と一つに……」
『お巡りさぁーん』と呼びたくなる程異常思考が表に出て来たので、秋本が頼んだガトーショコラをフォークで突き刺し、迷う事なく突っ込んだ。その速度、零コンマ切ったと見た。
─終─