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星天竜の箱庭  作者: 中野翼
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朝の予定

僕達三人と一匹は、フォティアさんの所まで移動した。


フォティアさんは、朝食を準備しているところのようだ。


「おはようございますフォティアさん」


「おはよう」


「おはようございます皆様。ちょうど朝食の準備が出来たところです。どうぞお召しあがりください」


僕達は、それぞれ席に着いた。


「では、「「いただきます」」」


僕達は、そう言って朝食を食べ始めた。


そして、ある程度食べ進めた頃、フォティアさんから声をかけられた。


「皆様、少しよろしいでしょうか?」


「どうかしましたかフォティアさん?」


「皆様の今日の予定を聞いておこうと思いまして。昼食をこちらか店でとられるのなら、準備しておかないといけませんので。いかがいたしますか?」


僕は、勇也やリディウスと相談を始めた。


「フォティアさんはこう言ってるけど、どうする勇也、リディウス?」


「さすがにフォティアさんに悪くないか?」


「そうだね。ここはひとつ、昼食は遠慮しておこうよ」


「そうだね」


結論は出た。今回は、ご遠慮しよう。


「と言うわけでフォティアさん。昼食の方は、自分達で勝手にとるので、お気遣いありがとうございました」


「そうですか。それでしたら、街の西側にある<駆ける冒険者亭>と言う店が手頃な値段で美味しいので、行ってみたらいかがですか?」


「そうなんですか?それじゃあ二人共、昼はそこに行ってみる?」


「いいんじゃないか」


「僕もいいと思うよ」


「それじゃあ昼食は、決まりだね」


これで昼食は決まった。そういえば、フォティアさんは今日もお店かな?


「フォティアさん」


「何でしょう?」


「フォティアさんは、今日もお店ですか?」


「ええ、そうです。それがどうかしましたか?」


「いえ、ただ聞いてみただけです」


「そうですか。そうそう皆様」


「何ですかフォティアさん?」


「皆様が素材アイテム等を入手されましたら、私の店にお持ち下さい。買い取り価格一割増しで、引き取らせていただきますので」


「わかりました」


一割増しか。最初から買い取り価格が上がるなんてラッキー。でも、フォティアさんの懐は大丈夫なのかな?


ゲームだから大丈夫なのか?けど、フォティアさんを見ていると、とてもNPCには見えないんだよね?とりあえず、リディウスに相談してみよう。


「(ねぇ、リディウス)」


僕は、小声でリディウスを呼んだ。


「(どうかした、アスト)」


リディウスも小声で返してきた。


「(買い取り価格割り増して、フォティアさんの懐大丈夫なのかな?)」


「(アスト、フォティアさんは商売人なんだよ)」


「(それがどうかしたの?)」


「(いいかいアスト。商売人はね、未来の利益を考えてお金を動かすものなんだよ?)」「(それは、そうだろうね?)」


そうじゃないと商売が成り立たないんだから。


「(つまりね、フォティアさんは買い取り価格を割り増ししても、利益が出ると判断して、僕達にこう言ってくれているんだよ)」


「(え!でも、買い取り価格が上がるんだから、フォティアさんにとっては、余計な出費になるんじゃないの?)」


どこに利益が出る要素があるんだろう?


「(アスト、利益っていうのは何も金銭だけじゃないんだよ?)」


「(金銭以外の利益?今回は、どんな利益がフォティアさんに発生するのリディウス?)」


「(今回の場合は、ずばりアストとの繋がりが出来ることだよ)」


「(僕と?僕との繋がりがフォティアさんの利益になるの?)」


とてもそうは思えないんだけどな?僕は、ただの初心者プレイヤーで、僕と繋がりが出来ても利益は特に出ないと思うんだけど?


「(そうだよ。何たって、アストはユニークハイの星界竜なんだから)」


「(やっぱりリディウスは、星界竜のことを何か知っていたの?)」


昨日の最初は知らない風を装ってたけど、フォティアさんと会ってからは、いろいろと知っている感じだったからひょっとたら、ユニークハイや星界竜のことも詳細を知っているのかな?と考えてたけど、やっぱり何か知っているんだリディウス。

「(知っているけど、それはゲームの方じゃなくて、オリジナルのユニークハイと星界竜のことだよ)」


「(オリジナル?どういうこと、リディウス?)」


「(この世界はね、オリジナルが存在するんだよ。そして、僕が知っているのは、その世界にいる友人の眷属であるユニークハイ達のことだよ)」


「(友人の眷属?それにオリジナルって、僕が見る夢の?)」


「(ごめんアスト。それについては、まだ言えないんだ。いろいろと制約や縛りがあってね。君のクラスのレベルが上がれば、自然と知ることが出来るよ。だから、今は聞かないでね)」


そう言ってリディウスは、僕にウインクした。


「(わかったよ)」

今はそういうことにしておこう。そう思っていたら、一つ疑問がわいた。


「(ねぇ、リディウス)」


「(どうかしたのアスト?)」


「(オリジナルが存在することと、フォティアさんの利益って、繋がってるの?)」


「(そうだよアスト。だって、今目の前にいるフォティアさんは、たしかにNPCだけど、中身というか、性格や人格、知識なんかはオリジナルのフォティアさんのものと全く同じなんだ。だから、上司にあたる君と繋がりが出来るのは、フォティアさんにとって、利益になるんだよ)」


「(なるほどね。だからなんだね)」


「(何が、だからなんだいアスト?)」


「(いや、疑問に思ってたんだよ。フォティアさんの行動が、とても人間らしかったから)」


「(ああ、なるほどね。そうだよ、僕達にとってはNPCだけど、彼女達この世界の住人達は、正真正銘の人間だよ)」


「(そうなんだ、よかった)」


「(何がよかったのアスト?)」


「(その、自分の口調とか態度を振り返ってみて、ちょっとね)」


よかった、口調とか丁寧にしといて。


「(まあ、アストの場合は、完全に格上だから気にしなくていいんだけどね)」


「(いやいや、年上の人相手にはちゃんとしないと駄目だよ)」


「(まあ、そうなんだけどね。さて、そろそろ話は終わりでいいかなアスト?勇也とフォティアさんを待たせているし)」


「(う、うん。ありがとうリディウス)」


僕とリディウスは、揃って視線をフォティアさんに戻した。


「お話は終わりましたか?」


「ええ、大丈夫です」


「そうですか。そういえば、皆様は冒険者なのに武器はお持ちでは無いのですか?」


フォティアさんは、僕達三人を見回しながら言った。


「ああ、俺達は昨日からの成り立てなんだけどな、昨日は人が武器屋に殺到してたから、行くのを後回しにしたんだ。そんで、その後すぐにフォティアさんの依頼を受けたんだ」


「そうだったんですか。では、今日武器屋に行かれるのですか?」


「ええ、そのつもりです」


「そうですか」


そう言った後に、フォティアさんは何かを考えはじめたようだ。


「どうかしましたかフォティアさん?」


僕は、そんなフォティアさんに質問してみた。


「いえ、皆様は冒険者になったばかりとのことですから、せっかくですから何か役立つものをお渡ししようかと思いまして、何がいいか考えていました」


「いや、悪いですよフォティアさん。住む場所や買い取り価格でも優遇してもらっているんですから。ねぇ、二人共!」


僕は、勇也とリディウスに同意を求めた。


「そうだよな。さすがにそれはフォティアさんに悪いしな」


「それだったらフォティアさん、提案があるんですけど」


「提案ですか?」


「はい」


「なんでしょうか?」


「フォティアさんの店に今から言う魔導書がありましたら、有料で貸し出してもらいたいんです」


「商品の貸し出しですか?物にもよりますけど、タイトルはなんですか?」


「では言いますね。『森と弓矢の書』、『大地と月の書』、『星座と世界の書』の三冊です」


「その三冊は!なるほど、わかりました。三冊とも店に置いてありますので、貸し出しは可能です。ですが、あなたは何故その魔導書の名を知っているのですか?」


「全ては、始源十二至者の導きのままに」


「貴方は、まさか!・・・わかりました。三冊とも皆様に貸し出します」


「ありがとうございますフォティアさん」


「「???」」


そんな二人のやり取りを、僕と勇也は首を傾げながら見ていた。


「さて、二人共。フォティアさんとの交渉は済んだから、出かけようか?」


「それはいいんだけどさ」


「今のはいったい?」


「この世界を進めていけば、いずれ話せるようになるよ」


僕と勇也は、顔を見合わせた。


「わかったリディウスを信じてるからな」


「いつかちゃんと教えてねリディウス」


「わかってる。二人の信頼を裏切ったりはしないよ。それではフォティアさん。僕達は、先に武器屋に行ってきますから、魔導書の方はお願いします」


「わかりました」


「じゃあ二人共、行こうか」


「わかった」


僕達は、席を立ち。玄関に向かった。


「それじゃあフォティアさん、行ってきます」


「行ってらっしゃいませ皆様」


僕達は、そうしてフォティアさんの家を後にした。

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