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星天竜の箱庭  作者: 中野翼
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ユニークハイの定義

店の奥に通された僕達は、三人並んで部屋に置いてあったソファーに座っている。それからビットは、僕の足元でおとなしくしている。


ちなみに、NPCの女性フォティアさんは、僕達をこの部屋に案内してソファーに座らせた後、お茶を入れに今は席を外している。


「なんつうか、変な展開になってきたな」


「そうだね。彼女さっき僕のクラスのことでいろいろ口走ってたけれど、僕のクラスって、このゲームの中でどんなたち位置になっているんだろうね?」


「このゲームの中心付近だと思うよ。それもイベントなんかで使われそうな類いの」


「まあそうだろうな。なんせゲームタイトルにかなり似たクラス名だしな。これで無関係だと逆に驚きだ」

「たしかにそうだけどさ」


リディウスと勇也の考えでもやっぱりそうなったか。はあ、のんびりとしたゲームが出来るか不安になってきたな。出来なさそうなら、このクラスの使用は二人の前だけにしよう。


そう僕は固く心に誓った。


「それでさ、今の状況をどう思う二人共?」


「状況って、僕のクラスの説明だか背景だかを教えてもらうだけじゃないの?」


「たしかにそれもあるだろうけどさ、俺には何か新しいイベントが始まろうとしている気がしてならないんだ」


「あー、それはありそうだね」


「未知のイベント、何が起こるのか楽しみだね」


「そうだよな、やっぱり体験したことのないイベントはワクワクするよな!」


勇也は、弾んだ声で言った。


それからも僕達は、フォティアさんが戻って来るまでの間他愛もない話を続けた。


それから20分くらい経った頃、フォティアさんがお茶を持って戻って来た。


「お待たせいたしました御三方」


フォティアさんは、そう言いながら持って来たお茶を僕達の前にそれぞれ置いていった。


そしてお茶を置き終わった彼女は、僕達の座っているソファーの正面に置いてあった椅子に腰掛けた。


「さあどうぞ、お召しあがりください」


「「「いただきます」」」

僕達は、フォティアさんにすすめられるままにお茶に口をつけて一口飲んだ。


「美味いな」


「たしかに、それにこのお茶甘みがある」


「本当だね。ほのかに甘くて、僕的にはこのお茶気にいったよ」


やっぱり苦いよりも甘い方がいいよね。


「おほめいただきありがとうございますみな様。そのお茶は、私の自慢の一品なんです」


フォティアさんは、本当に嬉しそうに笑らいながらそう言った。


「そういえばずいぶんと遅かったですね」


リディウスがフォティアさんに聞いた。


「申し訳ありません、このお茶を探すのに手間取ってしまいました」


「このお茶って、そんな探すような場所に置いてあったのか?」

今度は勇也が聞いた。


「ええ、この間在庫整理をした時に、店のかなり奥の方に移動させてしまっていたんです。見つけるのに苦労しました」


そう言われてフォティアさんを見てみると、たしかにさっき見た時よりも、身体全体から疲労が滲み出ている様に思えた。


「このお茶は、たしかに美味しいですけど、別にそこまでして探す必要はないと思いますけど?」


「いえ、そんなことはありません。ユニークハイたるあなた様に、安物のお茶をお出しするわけにはまいりませんから」


「はあ」


ユニークハイって、そんな応対をされるような種族なのかな?それともフォティアさんの態度が特別なだけ?


そんなことを思っていたら、勇也が手を挙げた。


「質問をしてもいいか?」


「何でしょう?」


「結局の所、そのユニークハイと星界竜ってのは、この世界ではどんな役割があるんだ?」


勇也、フォティアさんに直接聞いてみることにしたんだ。けど、NPCのフォティアさんがこんなゲーム序盤に答えてくれる内容なのかな?


「お聞きになっていないのですか?」


そう言って、フォティアさんは僕の方を見た。


「え!?」


僕は、フォティアさんのこの行動に驚いた。


なんでフォティアさんへの質問が、僕の方に流れてくるんだ?何より、お聞きにも何も、僕はゲームのユニークハイや星界竜のことは何も知らない。これが夢と同じならある程度知っていることになるけど、そんな偶然はさすがにないはず。


「どういう意味だ?」


「星界竜様から、何も聞かされていないのですか、という意味です」


と、言われても知らないものは知らないしなぁ。


よし!ここは素直に謝って教えてもらおう。


「すみませんフォティアさん。僕は、この世界でのユニークハイと星界竜の役割は知りません」


「そうなのですか?・・・いえ、まだお若い星界竜様には役割が与えられていないだけかもしれません」


フォティアさんは、少し考え込んでからそう言った。


「多分そうだと思います。それで、せっかく火変狐の眷属であるフォティアさんに会えたんですし、フォティアさんが知っているユニークハイについて教えてもらえませんか?」


「・・・わかりました。私が知っている範囲のことをお教えいたします。最初は何から話せばいいでしょうか?」


「じゃあ、ユニークハイという種族についてから教えてください」


「わかりました。ではまず最初に言っておきます」


「何ですか?」


「ユニークハイというのは、種族の名称ではありません」


「種族の名称ではない?」


僕は首を傾げ、勇也と顔を見合わせた。


次に視線をリディウスに移したが、リディウスはとくに驚いた風でもなく、フォティアさんを見ていた。


何でリディウスは驚いていないんだろう?


「それはどういう意味なんだ?」


「今言ったままの意味です。ユニークハイというのは、創造主様が世界を創造なさる時の基点とされる為に生み出した眷属の名称なのです」


「世界を創造する時の基点?」


「はい。我等が創造主様が創造された世界は、一つの例外もなくユニークハイ様方を基点として創造されています」


基点って、夢の中の内容にはそんな情報は無かったから、やっぱり夢とゲームは別だよね。


「具体的にはどんな感じなんですか?」


「具体的にですか?そうですね。例えば、私の主である火変狐アラギ様なら火の元素の基点ですね」


「火変狐アラギは火の元素の基点?」


「そうです。創造主様の創造された全ての世界に存在する火は、火変狐アラギ様より供給されています」


「どういうことだ?」


「つまり、世界はユニークハイが与えてくれるそれぞれの元素で出来ているってことだよ」


「その解釈で合っています」


「リディウス、フォティアさんの説明を一回聞いただけで理解したの?」


「・・・まあね」


その間は、いったいどういうこと?


僕は、様子のおかしいリディウスのことが気になった。


「じゃあ、ユニークハイが元素の供給を止めるとどうなるんだ?」


「世界が滅びます」


「「え!」」


僕と勇也は、フォティアさんのこの返答に驚いた。


「な、何でですか?」


「それは当然、世界はユニークハイ様方から、元素を供給され続けることを前提として創造・存在しているからです」


「へ、へぇ~、そうなんですか」


ということは、僕のクラスである星界竜も、この世界に何かの元素を供給しているってこと?


「ち、ちなみに、僕の星界竜は何を供給しているんですか?」


「星界竜様には、まだ役割がないはずですから、何も供給してはいないと思いますよ?」


「そう、そうですよね」


よかった、今の所は世界の命運を握ってないみたいだ。いや、星界竜のレベルが上がったら役割を持つことになるのかな?


僕は、ゲームとはいえその未来が少し怖かった。


にしても、夢の中の自分はよくも好き勝手にフィールドを作成したものだ。僕にはあそこまで思い切りよくは出来なさそうだ。


「そろそろ次にいってもよろしいでしょか?」


「あ?はい、お願いします」


「では、さっきも言いましたが、ユニークハイ様方の主な役割はそれぞれの元素の供給です。そして、それ以外の役割はとくにありません」


「え!とくにないんですか?」


「ええ、創造主様はユニークハイ様方に与えられた役割はそれだけです。あとは、ユニークハイ様ご自身が好きなことをなされるのが基本です。火変狐アラギ様ならば、商売ごとをどの世界でもしていらっしゃいますよ」


「そんなので大丈夫なのか?」


「私の知る限り、とくに問題が出たことはありませんよ」


へぇ、問題ないんだ。うん?何かひっかかるような?


僕は、何がひっかかたのか少しの間考えた。


わかった!フォティアさん今どの世界でもって、言ったんだ。


「あの、フォティアさん質問いいですか?」


「何でございますか星界竜様?」


「さっき言っていたどの世界でもって、どういうことですか?」


「ああ、そのことですか。それは簡単です。ユニークハイ様方は、ご自身が力を供給なされている世界ならば自由にご自身の分身を作り出せるのです。その力で、いろいろ遊ばれたり、世界に介入なされているそうですよ」


「世界に介入?」


「ええ、勇者や魔王、賢者に王、神や精霊。いろいろな姿・役職・存在になって世界に介入しています」


「いろいろな立場になっているんですね」


「そうですね。では、次に行きましょう」


「そうだな。じゃあ次は、ユニークハイの能力について教えてくれないか?」


「わかりました。といっても、ユニークハイ様方の能力の全ては、私も把握しておりません」


「それなら知っているのは、どんな能力ですか?」


「そうですね。まず一つ目は、それぞれの元素の創造と供給能力です」


「さっき言っていた、役割の為の能力ですね」


「はい。二つ目は、供給した元素を媒体に世界を把握する能力です」


「世界を把握する能力ですか?」


「はい、火変狐アラギ様ならば火を己の目として、火の周囲の状況を知ることがお出来になります」


「それはすごいな!」


「そうだね勇也」


つまり、自分で好きな場所に火を供給出来るなら、知りたい情報を得放題ってことも可能なんだろうな。


僕もクラスのレベルが上がればそんなスキルを得るのかな?というか、星界竜の元素って何?


「すみませんフォティアさん」


「何でしょう星界竜様?」


「星界竜の元素って何かわかりませんか?」


「星界竜様の元素ですか?申し訳ありません私は存じ上げません」


「そうですか」


フォティアさんが知らないいじょう、地道に確かめて行くしかないか。


「後私が知っているのは、分身を作り出す能力ですね」


「分身って、姿とかはどんな風に決めているんだ?」


「種族を選択すると、自動的に決まるそうです」


「そうなんですか」


自動的に決まるって、何で?


「二人共、そろそろ時間だよ」


僕が疑問に思っていると、突然リディウスがそう告げて来た。


「「時間?何の?」」


僕と勇也は、リディウスを見ながらそう言うことしか出来なかった。何故なら、その瞬間世界が揺らいだからだ。


「何だ今の?」


「わからない。わからないけど、何だか嫌な感じがしなかった?」


「アストもか、実は俺もなんだよ」


そして僕達は、揃ってリディウスを見た。


「リディウス。君は今のが何なのか知っているの?」


「今はまだ言えない。ただ、いつか必ず話すことは約束するよ」


「信じていいんだなリディウス」


そう言いながら勇也は、リディウスの目を正面から覗き込んだ。


「僕達三人の友情に誓って」


リディウスも勇也の目を覗き返すように見ながら言った。


「わかった、信じるぜリディウス」


「ありがとう」


僕は二人の様子をみて、区切りがついたと判断した。だから声をかけた。


「それじゃあ、次はどうする?」


僕がそう聞くと、リディウスは視線を僕達に戸惑いの視線を送っているフォティアさんに向けた。


「フォティア、今日は泊めてもらえないか?」


「え!?それは構いませんけど、宿はお取りになっていないのですか?」


「ああ、まだ宿はとってないんだ」


「そうですか。わかりました、準備いたしますわ。ここでは手狭ですので、私の家にお越し下さい」


「わかった、案内を頼む」


「はい、店の戸締まりをしてきますので少々お待ち下さい」


「わかった」


フォティアさんは、椅子から立ち上がり部屋から出て行った。


「おいリディウス、泊めてくれってのは何でなんだ?」


「そうだよ。それに、このゲームに宿なんてあるの?」


そんな話知らないんだけどな?


「あるよ。β版には無かったけれど、この世界には普通にあるよ」


「この世界には?」


僕は、リディウスのこの言葉が気になった。何でこのゲームにはじゃなくて、この世界にはって、言ったんだろう?


「二人共。これから外に出るけど、気をしっかり持ってね」


「どういう意味だよリディウス」


「そうだよ。何でそんなことを言うのリディウス?」


「二人は、僕のことを信じてくれれば大丈夫だから」


リディウスは、僕達の問い掛けには答えずに、真剣な表情でそう言った。


「「わ、わかった」」


僕と勇也は、そんなリディウスにそう返事をすることしか出来なかった。


「お待たせしましたお三方。それではご案内いたします」


「「「お願いします」」」


僕達三人は、フォティアさんの後に続いて店を出た。

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