プロローグ
よろしくお願いします。
僕、天川星夜はここ最近、毎日不思議な夢を見る。とてもリアルで、自分が本当に体験している風に感じる、そんな夢。その内容は、死んで異世界に転生して異世界で冒険するという、ライトノベル等でよくある内容だった。本の読みすぎかな?色々な本やゲームをやっているせいで、それが夢に反映されたのかもしれない。その可能性は高そうだ。だって、その夢に見た世界の名前は『アースター』。今から始めるVRMMOの舞台となる世界の名前と同じなんだから。それも仕方がないのかな?だって、このゲームが発売されるのをずっと楽しみにしていたんだから。VRMMOのタイトルは、『星天竜の箱庭』。現実の要素を忠実に再現し、そこに魔法やスキルといった、ファンタジーの要素を盛り込んだ今もっとも注目を集めているゲームなんだから。そういえば、そろそろゲームの開始時間になるかな?
僕は時計を確認した。
現在、9時30分。ゲームの開始時間は10時からだから、そろそろキャラクターの設定をしておかないといけないな。
僕は、ベッドに移動してVRヘッドギアを装着した。
それにしても一昔前までは、ゲームは3Dまでが限界だったのに、今ではゲームの中に入るVRMMOが普通にあるんだから、この国のゲーム発展のスピードは凄すぎだよな。
やっぱり、平和だからかな?
いや、今はそんなことを考えてる場合じゃなかったな。開始時間に間に合うようにしないと、向こうでリディウスと勇也を待たせることになるから、急いで設定をしちゃわないとな。
僕は、VRヘッドギアのスイッチを入れた。
その瞬間、僕の意識は一度途切れた。
次に僕が意識を取り戻した時には、僕はよく知っている場所に立っていた。
ここは、ゲームの説明とキャラクターの設定を行う場所だ。
基本的に、真っ白な空間にゲーム事のサポート用NPCが配置されている。人によっては、カスタマイズを行って自分の好きな風景等を配置したりしているけど、僕は基本的にそのままにしている。
僕は、若い女性型NPCの前に移動して。
「こんにちは」
NPCに挨拶した。
「いらっしゃいませ、天川星夜様」
「さっそくだけど、ゲームの説明とキャラクターの設定をお願いします」
「はい、承りました。では始めに『星天竜の箱庭』の説明を行います。このゲームの舞台となる世界は『アースター』と言います」
「はい」
「この世界には、様々な種族が存在しており、プレイヤーの皆様はその内から一つ、あるいは二つの種族を選択し、自分のプレイヤーキャラクターを作成して遊んで頂きます」
「種族は二つまでOKなんですか?」
「はい、このゲームでは現実にそくした内容を実装した結果、ハーフが存在しています」
「ハーフ?」
「はい、ハーフは異なる種族の間に生まれた者という設定でございます」
「それって、ハーフの方がゲーム的には有利ってことですか?」
一つよりは、二つの方がバリエーションの関係で有利に感じるよな。
「いえ、そうともいえません」
「なんでですか?」
「ハーフの場合は、選んだ種族のステータスを足して2で割った後にランダムにステータスが変動いたします。その結果、長所が無くなったり、成長して得られるスキルが満足に使用出来なくなることがございます」
「それは大変そうですね」
ハーフにして、出来ることが増えても長所が潰れたら意味があまりないな。
「もちろん、ランダムですのでプラスにはたらくこともあります。ですがそれは、皆様の種族選択の仕方と運の要素が絡んできますのでお客様の好みで決めてください。それでも幅広くゲームを楽しみたい場合は、ハーフも普通に有りです。なぜなら、種族限定イベントやスキル、アイテム等もございますので、種族が二つある場合はそれらを2倍得られるということですから」
たしかに、それはあるな。ハーフのメリットとデメリットは大体わかったな。次はハーフじゃない場合も聞いてみよう。
「すみません。それじゃあ、一種族の場合のメリットとデメリットも教えてもらえますか?」
「はい、一種族の場合は、その種族の初期ステータスが固定されている為、キャラクター作成時の優劣が無いことが一つ。もう一つは、さっきハーフの説明の時にも申し上げましたが、その種族の長所や得られるスキルを問題なく使用出来ます。次にデメリットですが、種族が一つですので他の種族限定イベント等には参加できないことが一つ。もう一つは、短所が種族ごとにはっきりしていることです。いじょうが一種族にした場合のメリットとデメリットになります」
「ありがとうございました」
「次にクラスの説明です」
「はい」
「この世界でのクラス(職業)は、一定の行動を繰り返すことによって獲得できます」
「一定の行動?」
「はい。たとえば剣を振れば剣士を、魔法を使えば魔法使いを得られます」
「獲得条件を教えてもいいんですか?」
普通こういうのは、自分で見つけるものなんじゃ?
「この二つにつきましては、初期クラスですので問題ありません」
「そうですか。それじゃあクラスがあるとどうなるんですか?」
「はい、クラスを得ますとクラスに応じた補正・スキルを修得出来るようになります。また、イベントの発生条件になることもあります。ですので、たくさん行動していろいろなクラスを探してみて下さい」
「わかりました!」
「さて、最後にこのゲームの進め方についてです」
「進め方?」
「はい。このゲームでは、ある程度の時間が経過するか、開始条件が満たされることによってイベントが発生します。そのイベントをクリアすることによって、行けるフィールドや手に入るアイテム、素材等が順次増えていきます。これには個人開放タイプと共有開放タイプがありますので、情報交換を行いながら探していって下さい。もっとも、進めなくても問題はありません。現実を再現しておりますので、アウトドア関係も充実しております」
「たとえばどんなのですか?」
「そうですね。釣り、山登り、海水浴、ガーデニングなどなど、多種多様なものを取り揃えています」
「へぇ~」
ガーデニングか、ちょっとやってみたいな。
「さて、説明はこれくらいです。不明な点などありますか?」
「いえ大丈夫です」
「そうですか。もしゲーム中に不明な点がありましたら、ヘルプをご覧下さい。次にプレイヤーキャラクターの作成に移りますがよろしいでしょうか?」
「お願いします」
「では最初にプレイヤー名はいかがいたしますか?」
「そうですね」
自分の名前をそのまま使うか、それとも別の名前にするか、どうしようかな。
アスト
考えていたら一つの名前が頭に浮かんできた。
夢で自分が呼ばれていた名前。せっかくだからこの名前にしよう。
「決めました。プレイヤー名は、アストでお願いします」
「わかりました。次に種族はどういたしますか?」
「そうですね。種族は何がありますか?」
「種族はこちらになります」
そう言われた後に、NPCの前にウインドウ画面が現れた。
僕は画面に表示されている種族を一つ一つ確認していった。
ヒューマン、ビースト、エルフ、ドワーフ、フェアリー、ドラグニル、リザードマン、等など他にもたくさんの種族が表示されていた。
たくさん在りすぎて逆に迷うな。
「オススメとかありますか?」
「そうですね、幅広くプレイしたい場合は、ヒューマンがオススメです。逆に特化させたい場合は、個別に確認して選んで下さい」
「わかりました」
もうヒューマンでいいかな?別に無双プレイがやりたいわけじゃないし、特化プレイをしたいわけでもないからな。
「じゃあヒューマンでお願いします」
「ヒューマンですね。一種族でよろしいですか?」
「ちょっと待ってください」
もうヒューマンは決めているし、ハーフにしようかな?さて、もう一つは何がいいかな?
僕は、再びウインドウ画面で種族を確認した。
最初から最後まで確認したけど、これだ!というのはなかった。
そうなると、もう種族特性とかで選ぶしかないかな?
そんな風に考えていたら、また夢のことを思い出して無意識に呟いていた。
「ユニークハイの星界竜」
「承りました。それでは種族は、ヒューマンとユニークハイでよろしいですか?よろしい場合はさらに、クラス《星界竜》も贈られます」
「え、え?」
僕は突然そう言われて、慌ててNPCを見た。
「繰り返します。種族は、ヒューマンとユニークハイでよろしいですか?よろしい場合はさらに、クラス《星界竜》も贈られます」
「え、さっき見た種族の中にユニークハイなんて種族無かったはずじゃあ?」
僕は突然の状況に混乱した。
「はい、たしかにその画面には表示されていませんが、ゲーム上には存在している隠し要素の一つでございます」
「か、隠し要素!?それって、普通は初期時点では選べないんじゃあ?」
「たしかに通常はそうですが、ある条件を満たすことにより初期でも選択が可能になります」
「条件?」
「はい、ユニークハイの場合は、まず第一にハーフであること。次に、ウインドウ画面からの選択ではなく、キャラクター作成時に二つ目の種族でユニークハイと言うことです」
「そうなんですか。じゃあ、クラスの《星界竜》っていうのは何ですか?」
「クラスにつきましては、ユニークハイを得た方が決まったプレイヤー名を付けていると、プレイヤー名に応じたクラスが贈られます」
「そうなんですか」
「それで種族は決定でよろしいでしょうか?」
「あ、はい。それでお願いします」
「それでは最後に容姿はどういたしますか?」
「容姿はそのままで、髪の色は夜色、眼の色は銀でお願いします」
「わかりました。これにてプレイヤーキャラクターの作成は、完了です。もう間もなくゲーム開始時間となりますので転送いたします。楽しんで来てください」
「ありがとうございました」
僕はそう言って、真っ白な空間を後にした。
天川星夜を見送った後、残ったNPCは独り言を呟いた。
「まさか初期にユニークハイを得られる方がいるとは意外ですね。あの種族は、あの方が独自に入れた要素。このゲームの開発陣すら知らないはずのことを何故彼は知っていたのでしょうか?考えてもわかりませんね。まあ、彼がゲームを楽しんでくれるならそれでいいのでしょう。これから始まるイベントを彼がどのように関わっていくのか、私も楽しみです」
そう言って、彼女の姿は真っ白な空間から消えた。