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魔物寄せの指輪

廃墟と化したダンジョン。

その空虚な空間に拍手の音が響く。

「大した威力だわ。さすがは魔法使い、ヤタ=イーチといったところね」

魔女のアトナが階段を下りてくる。

「正確には二代目かしら。名もなき倉庫番さん」

ヤタの体は先ほどの反動であちこちが悲鳴を上げていた。

しかしヤタは怒気をはらんでアトナを睨む。

「マンモスをけしかけたのは君か」

「やーね、違うわ。そう攻撃的にならないでよ。マンモスは次元の扉の封印が解かれるまで、身をひそめていたの」

「そして、それを黙って見てたわけ」

ベアトリクスが剣を支えに立ちあがる。

「お前さん、一体なにがしたいのさ」

「今回の件は私は何もしてない。原因はそっちの魔女のほうよ」

アトナは衰弱した少女を指さす。

「私もその魔女の被害者。せっかくのダンジョンを滅茶苦茶にされて。お仕置き程度じゃ済まないわよ」

アトナが指に息を吹きかけると、ねじまがった巨大な鉤爪へと変化していく。

その禍々しさに三人は息をのんだ。

しかしヤタだけがアトナの前に立ふさがった。

「殺されたいのかしら。先代の遺したマジックアイテムを使うことしかできない男が」

「親父さんの受け売りだ。『魔法は使うもの』だとさ」

「意味分かんないわ」

アトナの一振りでヤタは無様に地面にたたきつけられる。

「あまり調子に乗らないでね。不愉快だから」

アトナは歩を進めるようとする。

しかしナターシャとベアトリクスに支えられたヤタがアトナの前に立ちふさがる。

「なんなの、ムカつくわね。三人揃って死にたいの」

「もういいです!」

苦しそうに喘ぎながら少女が叫んだ。

「全て私の失敗が招いたことです。咎は私の手の中にあります」

「満身創痍で魔女を相手にするとは厄介だねえ」

どうして、と問う少女にヤタは言った。

「厄介事を抱えてる女は放っておけないタチでね」

アトナが死神となって跳躍する。

ヤタは震える指に指輪を装備した。

その瞬間、怒るアトナを後ろに跳びのかせるほどの凄まじい邪気が背後の次元の扉から発生する。

次元を越えて突き出してきたのは、災いの象徴、長い首に炎の息、死をもたらす瞳、ドラゴンであった。

「まさか!?」

驚愕するアトナにドラゴンは灼熱の息を吹きかける。

射線上のアトナ以外のすべてが蒸発して消えた。

フレイムバリアを解除し、アトナは巨大な氷のつららを次々と射出する。

ドラゴンは首を振り角や牙で氷を粉砕したがアトナを見失った。

そして首の根元に巨大な魔力を感じ取ったときには手遅れだった。

アトナはつららの死角を利用して回りこんだのだ。

「閉じろ!」

アトナの魔力によって次元の扉が徐々に縮められていく。

ドラゴンは苦痛の叫びをあげるが次元を超える力に抗う術はない。

次元の扉が消えてなくなるとともにドラゴンの首はねじ切られ、地響きをたてて地に落ちた。

「まったくやってくれたわね。別の魔物寄せの指輪を持っていたなんて」

「親父さんはどんなときにこいつを使おうと思っていたんだろうな。ところで、魔女様よ」

ヤタが切り落とされたドラゴンの首を指さす。

「八つ首龍の首ひとつを魔女一人の命で買わないか」

「あんたねぇ」

言いたいことを諸々呑みこんでアトナは腰のくびれに手を当てる。

「わかったわ。こんな超激レア、中々手に入らないしね。ただし色々覚悟しておきなさいよ」

アトナはドラゴンの首をマントに包みこむと、手鏡の中に手を入れた。

「そうそう、街のみんなに伝えておいて。しばらくこのダンジョンは閉鎖するわ。次元の扉も閉じちゃったしね。いつかは再開するつもりだけどそれがいつかはわからないわ。倉庫番もしばらくは開店休業ね」

そう言い残してアトナは鏡の中に消えていった。

静寂を取り戻したダンジョンに四人は取り残された。

「ほんとに、ありがとうございました。私なんかのために」

少女が頭を下げる。

「ちょっとかっこよすぎたかな」

ヤタは軽口を言いながらその場に倒れ伏した。

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