表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者は踊る  作者: 君河月
第一章 召喚編
9/21

第八話 マジパネェっすよ。

 俺は絆の力を調べる為に、ギルドカードを使ってみる事にした。

 まだ幼いとはいえ、勇者召喚で呼ばれている以上、俺や雪緒に近しい能力を持っているかもしれない。

 これから先の行動を考えるのに、絆の力を知っておいた方がいいだろうと、考えたからだ。


 ギルドカードの予備は、事前に城の中で、何枚か調達して鞄に保管しているので、それを使う事にした。

 俺達が来た時には、セイナーレに貰ったんだが、今回は貰えなかったので、何でだろうと疑問に思ったが、俺が幾ら考えても詮無いので、この場では考えない事にした。

 ただ単に、忘れただけの可能性もあると思うし。


 俺は絆を膝に乗せたまま、鞄から未登録のギルドカードを取り出した。


「おにいちゃん。それな~に?」


 絆は、俺の持っているギルドカードが気になったのか、訊いてきた。


「ああ、これはギルドカードって言って、まあ簡単に言えば、身分証みたいなものかな」


「そおなんだ?」


 絆は俺からカードを受け取ると、興味があったのか、表裏を確認しだした。


 ――そして、そんな光景を、ジッと睨みつけている雪緒さんが横に居ました……。


 その、なんというか、もの凄いプレッシャーと目力で、非常に怖いです。

 そして、そのプレッシャーをものともしてない絆さん――流石としか言い様がありません。

 お兄さんは今すぐにでも逃げ出したいです。脱兎のごとく。

 

 あれから絆は、気がついたら、俺の膝の上に座っているのだ。この世界での、特等席らしい。

 ――そして、日に日に何故か、雪緒からのプレッシャーがあがって来ている。


 女の子はよくわからん。

 ともかく俺は、雪緒のプレッシャーに耐えながら、説明を再開した。


「これ、何も書いてないよ?」


「これには、文字を書く為に血が必要なんだ。」


「……血?」


 絆が不思議そうな表情を浮かべている。

 俺は自分の髪の毛を引き抜くと、魔力を通して、一時的に針と同じ硬度にした。


「で、絆には悪いんだけど、指先にチクッとこれを刺して、カードに血をつけて欲しいんだ。」  


「……エッ!?」


 絆はそれを聞き、少し驚き怯えた表情を浮かべた。


「本当に、指先にチョットだけでいいんだ、血を付けたら直ぐに俺が治してあげるから」


 そう、俺は大怪我でもない限りは、治癒魔術で治すことができる。


「……本当?」


「ああ――本当だ」


 絆は俺の言葉を信じてくれたのか、俺の髪針を受け取ると、恐る恐る自分の人差し指に刺した。

 刺した事で、人差し指からプクッと血が出てきて、ギルドカードに血を塗っていた。

 血を塗った事を確認した俺は、直ぐに治癒魔術を、絆の指先に施した。


「絆。痛みはまだあるかい?」


「ううん。ぜんぜん」


 絆は不思議そうに、自分の指先を眺めたり、舐めたりしていた。

 

「うわぁ……本当に、ぜんぜん痛くないや」


「そっか――よかった」


 俺は絆を誉めるように、頭を優しく撫でた。

 その光景の隣で、また怒ったような、物欲しげそうな、何とも言いがたい表情を浮かべた雪緒が居りました。

 

 ……雪緒も頭撫でて欲しいのかな?


「うわ、うわぁ……なんかこれ光ってるよ?」


 絆は感嘆の声を上げていた。

 恐らくギルドカードに、能力ステータスが表示されたのだろう。


「絆。良かったら俺にも見せて貰ってもいいかな?」


「ん? おにいちゃんも見たいの? ――はい」


 俺は絆からカードを受け取ると、絆の能力ステータスを確認した。




名前:御影絆

AGE:7

SEX:女

LV:1

JOB:聖女

HP:351

MP:344

STR:127

VIT:189

AGI:99

DEX:135

INT:812

RST:697

LUC:2858

称号:プレクスタの隷属

特性:聖女の威光、高速詠唱、呪術解除、呪術感知、魔術耐性

装備:学校制服

祝福:なし

ギルド:なし




 ――なにこれ? 俺や雪緒に比べても、全体的に能力高すぎるだろ……。

 職業が《聖女》って事は、俺と同じで《勇者》では無いのだろうけど、能力値だけで言えば、《勇者》であろう雪緒より強いじゃないか。

 ……《勇者》より強い《聖女》ってなんですか?


 HPが紙な俺に対しても遥に高いし、何より運が高すぎるだろ……。年下でもある絆が、俺達よりも強いかも知れないと思う能力値を見つめていると、ある項目に気がついた。


 《呪術解除》

 

 ……チョット、まってくれ。 俺は自分の頭を抑えながら考えた。ええっと、もしかしてこれ、奴らに掛けられた魔術を解除できるんでは無いかい?

 

 俺は一ヶ月アレだけ探ったのに、全く解除手段が見つからなかったのに、ここにきてこういう事って有りですか?

 俺はいろんな意味で、眩暈がしてきた。これがそうならば、俺の一ヶ月は、完全なる徒労では無いか……。


 まあいい、鴨が葱背負って遣って来たんだ、ラッキーだと思って開き直るしかない。

 早速だけど、試させて貰おう。


「なあ絆、頼みたい事があるんだけど」


「なに? おにいちゃん」 


「ちょっと雪緒に違和感が無いかどうか、試してほしいんだ」


 絆にある特性(アビリティ)《呪術感知》これが俺の持っている特性と、同じ様な物ならば、もしかしたら何かを感じるかも知れない。


「……遥くん。どういうこと?」


 雪緒も俺の頼みに不思議そうに訊いてきた。

 もしかしたら……なので、万が一違ったらぬか喜びになってしまうので、答えをはぐらかした。

 

「――チョット気になる事があってね。試してみたくなったんだ」


 雪緒も絆も俺の答えに、とりあえずは納得してくれた。

 

「で、おにいちゃん。絆はどうすればいいのかな?」


「ああ、雪緒に手を翳す様にして、何か感じるか集中してみてくれ」


「うん!」


「雪緒はそのままで、動かないでいてくれ」


「……ええ」


 俺がそう説明すると、絆が手を目の前に差し出した。

 そして目を瞑り、ウーン、ウーンと唸っていた。


「「…………」」


 俺も雪緒も黙っていると、絆が声を上げた。


「……あれ? なにこれ?」


「どうした、何かあったのか?」


「うん……ゆきおおねーちゃんの中に、なんかモヤモヤしたものがあるの」


 モヤモヤ? もしかしてそれが、例の魔術なのか?


「絆。そのモヤモヤを消す事って出来るか?」


「うーん。よくわかんないけどやってみる」


 そう答えると、絆は再び同じ格好をして唸りだした。

 俺達は黙って見つめていると、俺は雪緒の体から、魔力が消えていくのが見えた……。


「おにいちゃん。よくわかんないけど、ゆきおおねーちゃんからモヤモヤが消えていったよ?」


「雪緒! チョット、カードを確認してくれないか!?」


 雪緒は不思議そうな表情をしていたが、俺の言葉に素直に従った。

 ――絆の能力が確かで、俺の《魔術感知》がアレを見たとしたら、もしかしたら……。


「……えっ!? なんで?」


 雪緒の反応を見るに、俺の予想は正解だったみたいだ。

 なんていうか、絆さんマジパネェっすよ。


「遥くんも見てみて!?」


 雪緒は俺にもギルドカードを見せてきた。




名前:五十鈴雪緒

AGE:17

SEX:女

LV:4

JOB:勇者

HP:411

MP:221

STR:296

VIT:309

AGI:294

DEX:239

INT:217

RST:222

LAC:1051

称号:なし

特性:危機感知、高速治癒、高速移動、高速詠唱、見切り、肉体強化

装備:ベイルの聖衣

祝福:なし

ギルド:なし




 ……もう俺いらなくね? 《勇者》と《聖女》でもの凄く形になってるし。

 ここに俺の《愚者》って意味がわからん。


 なんて事を二人に言えば、泣かれかねないので言える訳が無いのだが。

 自分でも言うのは何だけど、二人とも俺に依存し過ぎな節があるし……。

 頼られるのが嫌って訳では無いんだよ。

 雪緒も絆も美少女って言えるような娘だし。


 ただ、俺が居なくなったらヤバイな、何て思わなくも無い。

 まあ俺も、居なくなる予定も心算は無いのだから、特に問題は無いか……。

  

 ともかく、最大の懸念だった問題が解決されたのだ。

 あとは逃げ出す準備をするだけだ。


 まあ此処までされたのだ、ただで抜け出す心算など更々無いのだが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ