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愚者は踊る  作者: 君河月
第一章 召喚編
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第六話 様式美って大事だよね?

 俺は、雪緒の魔術を解くため、城内、城外問わず情報収集をしていた。

 

 何処でもドアが完成したので、外に出入りするのもかなり楽になったし。

 〇次元鞄のお蔭で隠すのも然程苦ではないので、大変便利であった。

 

 ――まったくのぶえもんは凄いぜ!

 

 そして、持ち込んだ筆記用具の類は、大半を売り捌いたら所持金が15000シンになりました。

 凄いよな、日本では全部買っても千円いかないのに、こっちの世界では十倍以上になるんだから。


 それでそろそろ、実戦を戦闘を経験するべきだろうと思い始めた。 訓練自体は続けてはいるが、雪緒の前以外では基本的に力を隠しているので、殆ど訓練が訓練になっていなかった。

 最初の魔術講習の時に、誤って蒼炎なんて使ってはしまったが、それ以来俺は、それしか出来ない振りをしている。

 雪緒に関して言えば、初めに怒って本気を出してしまったので、今更感があるので、普通に訓練に取り組んでいるのだが……。


 ――故に俺は、この国の連中には大した事の無い、落ち零れの方の勇者と云う認識になっている。

 まあそれは望んでやった事なので、何の問題も無いのだけど……。


 という訳で、冒険者ギルドに登録して、討伐クエストでも受けようかと思っている。

 では、早速出よう。


「何処でもドア~」


 例の科白を言い、鞄からドアを取り出した。

 ――そこ! サイズ的に取り出せるのは可笑しいとか言わない!

 そこはファンタジーだって事で納得するべき所だから!


 雪緒も連れて行けたら良かったのだが、例の魔術に、任意追跡効果があるらしいので、外に出せないのだ。

 



 ☆ ★ ☆ ★




 あっと、いう間に冒険者ギルドに到着しました。

 所要時間にして五分もかかっていない。

 便利だぜ! 何処でもドア!


 早速だけど登録に向かうか……。


「冒険者ギルドへようこそ。どういったご用件でしょうか?」


「登録をお願いしたいのだけど」


「はいはい、あ……君は!」


 受付のお姉さんは、俺の顔を見て少し驚いていた。

 気になり俺が訊ねてみると。


「君は前に来た子だよね?」


 この前来た時と同じお姉さんだったのだ。

 あの時は、然程気にしてなかったので、俺はうっかり顔を忘れていた。

 気が付かなかった事を誤魔化すように、受付のお姉さんに答えた。


「――ええ、よく憶えてましたね。ここに来る人って少なくないでしょう?」


「まあね、けど君みたいな綺麗な人って滅多に来ないからね」


 綺麗って男にかける誉め言葉じゃないぞ。 


「そっかー、それでやっぱり登録する事にしたんだ」


「ええ、まあ」


「りょーかい。それで登録するんだけど、ギルドカードって持っているかな?」


 俺は、鞄からセイナーレに貰ったプレートを、お姉さんに差し出した。


「ギルドカードって……これでいいんでしたっけ?」


「うん、そうだよ。じゃあ預かるね」


 やっぱりあのプレートはギルドカードだったのか。

 受付のお姉さんにプレートを受け渡した。


「あと登録に1000シン掛かるんだけど、持ってる?」


 1000シンか……そん位はやっぱりかかるのか。

 俺が銀貨10枚を渡すと、お姉さんはギルドカードをヘンテコな機械みたいな物に翳した。

 すると機械が光だし、カードをスキャナみたいに読み出した。 俺は気になり、お姉さんに訊ねてみた。


「それってなんですか?」


「うん? これ?」


 お姉さんは可愛らしく首を傾げた。


「これはギルドカードに書き込んだり、読み込んだりする道具だよ。

 例えば今は、君のカードにギルド情報を書き込んだりしてるのよ。

 他に言えば、討伐や探索で何を何匹倒したとか、何階まで探索したとかわかったり出来るの。

 ただ、個人情報に関して言えば、本人の許可無く閲覧できないから安心して」


 なにその便利な万能カード。便利だとは思っていたがそこまでか!

 それを聞き少し気になったので訊ねた。


「じゃあギルドカードって高価な物なんじゃないんですか?」


「んー、量産はされているからそこまでは……再発行する場合には2000シン要るんだけどね」


 再発行でも日本円で二万かよ……物の価値が違いすぎて混乱してくるな。

 ――ってな事を話していると、機械が止まっていた。


「はい、登録は完了したから確認してみて」


 俺はお姉さんから、ギルドカードを返してもらうと、確認した。 




名前:雪村遥

AGE:16

SEX:男

LV:1

JOB:愚者

HP:62

MP:1084

STR:77

VIT:52

AGI:81

DEX:101

INT:4712

RST:9877

LUC:555

称号:魔道具創造者マスターメイカー

特性:無詠唱、魔術感知、魔術操作、物質操作、物理干渉、幻影魔術無効、制約魔術無効、攻性魔術無効

装備:学園制服

祝福:なし

ギルド:冒険者ギルド ランクF




 おお! 登録されているな。

 ってあれ? 称号と特性が増えてるぞ? ギルドに登録されたから……な訳ないか。

 見たところ多分、俺が〇次元鞄や何処でもドアを作った事で付いたのだろう。


「じゃあ、改めて冒険者ギルドについて説明するね。

 この冒険者ギルドでは主に依頼の仲介、例えば討伐や探索、採取等の依頼を受けているの。

 他にも魔物を倒した時に獲られる、素材を買い取りしたりしてるわ。

 依頼に関して言えばボードに張ってあるから、その中から選んで受ける事になるの。

 依頼によってランクがあって、上はSから下はFまであるから。

 基本的には、ランクに合った仕事しか請けることが出来ないの。

 君は今Fランクだから、受けれるのは一つ上のEまでよ。

 ランクは受けた仕事の功績で上がっていくから頑張って」


「……どうも」


「他に何か、気になることってあるかな?」


「今回初めてで、討伐系のいい仕事ってないかな?」


「討伐の仕事が受けたいの?」


「……ええ、まあ」


「わかった。チョットまってね」


 そう言うとお姉さんは、机の引き出しを開け探りだした。


「討伐って言うけど、どんなのがいいの?」


「ランクはE位で、なるべく城から離れない場所が良いんだけど……」


「うーん、そうね……あ! ちょうどいいのがあったわ! これなんてどお?」


 お姉さんはそう言うと、俺に羊皮紙を差し出さした。

 ええっと何々、ランクEでレヴィの森のレッドワイルドボアを討伐か……。

 ただ討伐で命張ってる割には報酬が400シンって安い気もするが、このランクだったらこんなものなのか……?

 まあいいや、実力確認の為に良くのだからこれ位で丁度良いか。


「ああ、これでお願いするよ」


「りょーかい。じゃあもう一度カードを貸してもらえる」


 俺がカードを渡すと、羊皮紙と共に機械に入れ、直ぐに返してきた。


「はい、受け付けたわ。依頼が終わったらまたここでカードを出してもらえば確認できるから。

 あとさっきも言ったけど、素材も買取してるからね」


「わかった、ありがとう」


「じゃあ頑張ってね~」


 俺はお礼を言うと、お姉さんに見送られながら旅立って行くのであった……。




 ☆ ★ ☆ ★




 ――っというわけで、やって来ましたレヴィの森。

 先程、行くのであったとかご大層な事を言ったが、プレクスタ城から2キロも離れて無いのです。

 いやー、格好付けがいの無い距離だよね?


 とりあえずここまで来るのに、ずっと《光学迷彩(インビジブル)》を使用して来たのだが。

 城を出る時以外には、人にも魔物にも出会わなかった。

 魔力の無駄遣いだったよ。


 さてと、早速だけど獲物を探すか……たしかレッドワイルドボアだっけか?

 直訳すると赤い猪ですか……俺は真っ赤な猪を想像しながら、森の中を周囲の警戒もせず鼻歌を歌っていると、横の茂みからガサゴソ音が聞こえてきた。


 俺は音が鳴るほうへ振り向き確認してみると、茂みから現れたのは。

 ――ゴブリンだった。

 RPGではお馴染みに魔物だけど、現実はゲームのコミカルさは皆無だった。

 ……寧ろキモかった。

 

 しかも一体や二体では無い――全部で10体は居ただろう。


「あれー? 俺って今ピンチ?」


 ……いや、チョット待ってくれ。初めての実戦でこの数は頑張りすぎだろ!?

 ゴブリン達が俺の制止? も聞かずに一斉にかかって来た。


 俺は咄嗟にナイフを引き抜き――はしたが、この数をナイフ一本で対処できる自信は無いので、身体能力強化を自分に掛けた。

 身体能力を強化された俺のスピードは、雪緒を凌駕するものだが。

 こんな木々の茂った場所で使えば、自滅するのがオチである。


 なので現在自分に掛けているのは、思考加速のみである。

 こんな場所で炎の魔術なんて使えば、大火事になりかねないので俺自重。


 ――といわけで、風の魔術を使う事にした。


 俺は思考加速で、コマ落ちの様に見えるゴブリンの攻撃を、バックステップで躱しながら。

 右手を前に突き出し風の刃をぶつけた。


 ゴブリンの上半身が吹っ飛ぶ。

 周囲のゴブリン達は、いきなり仲間の上半身が無くなった事で、戸惑いだした。

 俺はその隙を見逃さず。先程の風の刃を周囲全体に大量に生み出した。


 結果――俺の前には、細切れになった大量のゴブリンの死体が出来ました。

 いやー、いきなりだったけど、やれば出来るもんだな。

 ああ……そういえば幼い頃にもや以下略。


 しかし、この光景を生み出したのに、何とも思わない俺は俺で怖いな。

 ――たぶん、これが人でも何とも思わないだろう……それが異世界の住人であるのならば。

 だってなあ、こっちの世界がどうなろうと知った事じゃないもん。


 ……俺達に害が無い限りは。

 まあ、害があるから牙を剥くんだけどね。


 さてと、ゴブリン以外にも、木々が凄い事になっているけど……まっいいか。

 いっその事このまま木々を押し倒しながら、探そうかと思ったが。

 一緒に巻き込んで気が付かなかった……って事に為ったら面倒臭いので自重した。

 

 さてどうするかと考えていると……俺の日頃の行いが良かったのか――現れた。

 恐らく、ゴブリン達の死体の血の匂いに、吸い寄せられたのだろう。

 

 ――三匹おられました。


 ええー、またかよ。討伐依頼では一匹で十分なんですが……。

 というか三匹って、明らかにランクEを超えてるのでは無いですか?


「はぁ~」


 俺は嘆息すると気をとり直して、試してみたかった魔術を使ってみる事にした。

 俺は一番近くに居た、レッドワイルドボア(文字通り赤くて大きい猪でした)に向けて魔術を放った。


 すると、いきなり四肢が消失した……レッドワイルドボアは、前兆も無く達磨状態になってしまい、身動きすら取れなくなってしまった。


 俺が使ったのは《|次元の消失(ディメンション·ゼロ)》、風とも違い全くの前兆も無く、まるで消しゴムで、文字を消したかのように消滅するのだ。

 試した範囲でだが鋼鉄も消せたので、俺の魔力(オド)とも相まってガード不可能な技になった。

 さすがに反則(チート)過ぎるので余り使う気にはなれないシロモノであった。


 まあ今回は、初めての実戦で、生き物に使うのも初めてなので試してみたが。

 範囲自体はたいした事無いが、威力は流石だった。


 俺は残りの二匹にも使い。四肢を失い、出血しながらも暴れている三匹に、脳天に髪の細さ程のものを放ち絶命させた。

 

 ――うん、これは強すぎて訓練にならないな。


 しかも、優雅さの欠片も無いではないか。

 無言で魔術でもって虐殺って、完全にホラーだよな?

 次回からは形だけでも魔術銘くらいは言うことにしよう。 


 俺は気をとり直して、売り物になると言われた、牙と皮をナイフで剥ごうと思ったら、魔術で消せば良いじゃないかと思い直した。

 肉だけを消滅させたら、見事に牙と皮だけが残しました。



 ――人はこうして便利さに慣れて行き、堕落して行くのだろうな……。



 そんな益体も無い事を考えながら、戦利品を鞄にしまいドアを取り出した。

 とりあえず、訓練の心算で来たのに、全く訓練になら無かった……。

 次はもう少し自重せねばと考えながら、何処でもドアで街まで戻った。



 ……あっ! 例の科白を言うのを忘れてしまった!?

 様式美って大事だよね?

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