表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者は踊る  作者: 君河月
第一章 召喚編
2/21

第一話 ……現実って何時も残酷ですよね。

「おはようございます」


 ……う、うーん……もう少し寝かせてくれよ、連日徹夜になってしまい、未だ眠くてしょうがないのだ……。

 ――って、あれ? 俺は一人暮らしだったよな?

 起こしてくれる人なんか居なかったよな?


 嗚呼、誰か可愛い義妹や、幼馴染が起こしに来てくれないかな……。



 いや、もうなんと云うか……現実って何時も残酷ですよね。



 ……ああ……そうだ……次第に眠気が覚めて行き、昨日の出来事が甦って来た。

 俺は――いや俺達はか、クソジジイ共に、異世界に召喚された勇者なんて云う存在らしい。

 それはなんという幻想(ファンタジー)。いや、現実(リアル)はゲームほど都合良くは無かったのだけど。


 召喚、有無を言わせず強制魔術……嗚呼、なんて見事な利己主義者共(エゴイスト)

 ここに居る人間は、力ある者を屈服させることでしか、安心を得られ無いらしい。

 押さえつける事でしか、人は動かないと思っているらしい。

 それはとても素晴らしく、なんともくだらない幻想(ファンタジー)


 ドアのノック音が響き、扉の向こうから声が聞こえてきた。


「おはようございます勇者様。そろそろお目覚めの時間になります」


 ……なるほど、この声で俺は微睡みの世界から現実に引き戻されたのか。

 誰だ? と思いもしたが、この世界で俺を起こしに来るよな人間は限られている。


 ……俺が返答しなかった為、扉を叩く音が再度響いた。

 ベットから起き上がると、仕方なしに俺は扉の向こうに声を返した。


「ああ! 起きている」


「失礼致します。朝食の準備が整っております」


 俺の返答を聞き部屋に這入ってきたのは、やはりセイナーレだった。

 侍女長とか言ってたよな、そんなお方が態々俺なんかを、起こしに来るなんてご苦労様な事で。……いや、だからこそか?


「準備が整われましたら、食堂の方までお越しください」


「ああ、わかった、けど俺は食堂の場所がわからんぞ」


「それは失礼致しました。では、準備が整われましたら、部屋の外に居ります侍女にお声をお掛け下さい。

 その者が勇者様を食堂迄ご案内致します」


「わかった、それでゆきお……もう一人の勇者は如何したんだ?」


「そちらの勇者様も、これから私がご連絡に伺います」


 雪緒……もう一人の勇者は当然の事だが、別の部屋で寝ている。

 俺達が、セイナーレから説明を受けた部屋から、寝泊りする為の部屋に移ったのだが。

 最初に俺達二人は、ツインベットがある部屋に案内された……。


 そうです、察しの良い方はもうお気づきかと思いますが……セイナーレも俺の事を女だと思っていたらしい。


 女の子同士だから、同じ部屋で良いやって考えだったのだろう。

 勇者で女の子、容姿から同郷の人間だろうと察せられたのだろう。

 だから同じ部屋に案内しても、間違ってはいなかったかもしれない。


 けれど最も大きな間違いが御座いました……それは俺が男の子だったのです! 決して男の娘では無いよ、男の子だよ。見た目は兎も角、精神は真っ当な男だから。

 てな事があって、俺たちは別々の部屋に案内して貰った。


 ……別に惜しかったなんて、考えちゃいないよ?



 閑話休題



「……そうか」


「はい。それでは失礼致します」


 俺に頭を下げると、セイナーレは部屋から立ち去った。そう云えば俺は、昨日の朝から何も食べていないのだった……。色々ありすぎて忘れていたが、思い出すと腹が空腹を訴えだした。


 ――クッ! 鎮まれ……俺のお腹よ、鎮まりたまえ……。

 って、アシ〇カがタタリガミを抑えるかの如く、物まねをしても仕方が無いので、早く準備をしてから、向かう事にしよう。


 俺はふと椅子が目に入り、その上に置いていた、俺が日本から持ち込んだ鞄に眼を向けた。

 此処の連中は、俺達から荷物を取り上げるような事はしなかった。


 いきなり《隷属の魔術》をかけてくる様な連中なのに、甘いと思う部分が多々有った。

 まあ、それはそれでありがたいので、態々墓穴を掘る様な事を、云う心算も無いのだが。


 立ち上がり鞄の中身を確認した。


 教科書、ノート、筆記用具(ボールペン×2、シャープペン×3、消しゴム、蛍光ペン黄&赤、黒マジック)、ハンカチ、ティッシュ、携帯電話、手動充電器(LEDライト付き)、MP3プレーヤー、ペットボトル、飴10個、ガム4枚。


 その他の持ち物には、腕時計と財布に制服位か……。


 ここの文明レベルはまだわからないが、まともな照明器具が存在してない事を考えると、俺の持っている物は、かなり武器になるかもしれない。

 ……しかし鞄にお菓子とか入ってるし、何しに学校に行ってたんだろうな。


 ふと気になり、俺は時計の時間を確認してみた。


 ――AM06:30――


 窓の外を見てみたが、見た感じだけど、時計に表示されている時間と大差ないようだった。

 異世界の筈なのに、太陽が二つもあるのに、日照時間が地球と大差無いのが、不思議でしょうがなかったが、それは今考えても仕方が無いので、頭の隅に追いやった。


 鞄の中身を仕舞い直すと、元の場所に置きなおした。

 現状着替えとかも持っていないので、このまま出て行くことにした。

 風呂にも入っていないので、体臭が少し気にはなったが、諦める事にした。

 俺は扉に手を掛け部屋を後にすると、通路に居た侍女に声を掛けた。


「……すまんが、食堂まで案内して貰えるだろうか?」


 俺の呼びかけに気付き、侍女の娘は振り向き俺を目視すると、驚いた顔をした。

 ショートヘアの活発そうな、綺麗よりは可愛いと表現する様な少女だった。


 ――ここの世界は、容姿のレベルが高いのだろうか?

 それとも単純に、雇っている人間がそう選んでいるのだろうか?

 

 ……後者の方が可能性が高そうだな。


「――は、はい! かしこまりましちゃ! ゆうしゃしゃみゃ」


 ……おいおい、噛んでる噛んでる。侍女の少女はもの凄くテンパっていた。

 セイナーレはこの侍女に、話を通していたのではなかったのか……。


 まあいいか、案内してくれるって言うのなら、なんでもいいさ。


「で、ではこちらになります。私に付いて来てくだひゃい」


 立ち直したと思ったら、結局また噛んだ。面白い子だななんて、チョット失礼な事も考えながらも、俺は彼女に食堂まで案内してもらった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ