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愚者は踊る  作者: 君河月
第二章 旅立ち編
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第一話 欲しがりません勝つまでは!

漸く新章に入れました。

プロットは出来ているのに全然進まない……。

毎日及び短期間で更新出来る人は尊敬します。

 俺達はアレからすぐに合流したあと、国を出る事にした。

 少なくとも国に留まっていても、害になることはあっても、利に成るようなことは無いだろうから。なるべく面倒事になる要素を減らしておこうかと考えたからだ。

 旅に必要な物は事前に俺が、思いつく限りの物を買って鞄の方に仕舞っていたので、すぐに街を出立できた。

 

 まあ、なにか必要な物が発生したら、何処でもドアで戻る事も出来るし……って、あれ? よく考えたら、ある程度進んだら街に戻って宿屋に泊まるって方法もあったな……うん、考えない事にしよう、今後何かあるかわからないし、何事も経験だ。 べ、べつに買ったものが、勿体無いとかでは無いんだからね! そこんとこ間違えないでよ! ……フ、フン。


「という訳で、俺達は野営の真っ最中でしたー」


「……お兄ちゃん。だれにいってるの?」


 ヤバイ、俺の独り言バッチリ聞かれてました。なんとか誤魔化さなくては……。


「ちゃ、ちゃうねん! ワテはお茶の間の皆様に向けて、発信してただけやねん」


 ……正直に言っちまった! どこが誤魔化してんねん。


「そうなんだー」


 あれ? あれで納得してくれたよ。素直すぎるのもお兄さん心配になるな。


 ともかく俺は気をとり直して、周囲を見渡した。ここは〈プレクスタ〉より半日程北に歩き進んだ、街道外れの森の側で野営をしていた。

 すでに辺りは日が落ち、焚き火の炎だけが明かりとなっていた。

 ちなみに、火をつけることに関して言えば、三人ともこの世界で云えば魔術反則(チート)なので、簡単につけることができ、そう言った問題で悩む事など無かった。

 

 追跡の可能性を考えても、街道を堂々と行くのは……と最初は考えたが、土地勘が無い俺達が森なので迷い込んでも困るので、そう言ったものを差し引いても、安全を考え街道を進むことにした。

 強い魔物なんかと出会うよりは、まだ人の方の対応が俺にとっては楽だったし……俺はギルドの依頼で外には出た事があったが、雪緒や絆は外に出るのも初めてなら、魔物を見るのも初めてになってしまうので、色々考慮した。

 

 ちなみにここまで魔物に出会う事は無かった。いや、違うか、俺が出会わないようにしていた――俺が事前に開発し編み出した遠視魔術で、進路上の魔物を排除していたからだ。サーチアンドデストロイ。

 チョット過保護すぎるかとも思わなくも無いが、何も無いのが一番いいからね。


 流石にこの時間になると、街道に行き来している者はいなかった――建国記念祭当日という事で、昼間歩いている時は、結構な人が行きかっていたが、魔物は大概が夜行性ってことで、皆安全策を取って野営しているのだろう。

 建国記念祭――アレからどうなったかは知らない……今回の祭りのメインイベントだった勇者のお披露目は、当人だった俺達が逃亡した事でご破算になっただろうし、王族など国の代表共も俺が気絶させてしまったので、それ所では無くなってしまっただろうな……まあ、俺が気にする事ではないか。


 ともかく今は、雪緒が料理の真っ最中です。俺もある程度なら出来なくは無いので、手伝おうと申し出たが、やんわりと断られた。

 なんでも、乙女の戦場らしい……うん、戦場なら仕方ないな。


 今作っているのはクリームシチューみたいだった。俺の所まで牛乳の甘い香りが漂ってきている。

 材料や調理道具自体は先程も言ったが、鞄の中に放り込んでいたので、大概の料理は作る事が出来るだろう。

 この世界では、食べ物自体は元の世界と幸いな事に似通っていた。ただ、形や大きさ色などは違う物も多かったが、牛乳も味自体は牛乳そっくりだったが、牛の乳なのかはわからない……知らないって事も幸せだろうから。 

 

 ともかく〇次元鞄――は、保存の利くものから、保存の利かなそうな食材様々をしこたま買い込み放り込んだ。 

 保存の利かないものは、最初は買うのを控えようかと思っていたが、城に居る時に色々試した結果――鞄に入れておくと全く劣化しない事がわかった。

 理由? 理論? そんな物は知らない! 便利だって事で俺は納得しておいた。まったく自分で作っておきながら、ブラックボックスな部分が多いけどね……。

 謎が多いほうがいいんだよ。……ふふ、ミステリアスな俺に惹かれるだろう。


 調理道具は、フライパンや雪平なべ等、日本で存在した物で売っていなかった物は、武器と同じ様に俺が作った。これは日本で実際に使っていたので簡単に作れたが、テフロン加工なんて物は詳しく知らないので、魔術でくっつかない様に適当に加工しておいた。

 多分これを売りに出せば、一攫千金を狙えるかも知れないな……いや、まあいいか、金なら腐るほど持ってるし。


 雪緒は鼻歌を歌いながら、鍋をかき混ぜていた……って、あれ? 女の子の手料理って初めてじゃないか俺?

 や、やだぁ、ドキがムネムネしてきたわ。


 と。益体も無い事を考えていると、横から俺を呼ぶ声が聞こえた。


「――かくん、遥くん。ご飯できたからそろそろ食事にしよ」


 おおっと。俺が妄想の海にトリップしている間に、料理は完成していたようだ。


「ああ。わかった」


 俺は返事を返すと、雪緒と絆が居る焚き火に向かい、食事にすることにした。


「はい。どうぞ」


 そう言われて、俺は雪緒から器を受け取った。器に注がれたクリームの中に、真っ赤なジャガイモもどきに青い人参もどき、玉葱は玉葱のままで鶏肉によく似た、淡白な味の肉が入っていた。

 野菜はともかく、肉は何の肉かはわからなかったが、わかってしまったら今後食べれなくなってしまいそうだったので、敢えて目を瞑った。知らぬが仏。


「どう……ですか?」


 雪緒は不安そうに、俺達に味を訊いてきた。


「――うん。うまい」


「ゆきおおねえちゃん。おいしいよ」

 俺と絆が答えると、それを聞き雪緒は安堵の表情を浮かべていた。


「そう……ですか。よかった……」


 この際にパンも欲しくなったが我慢した……贅沢は敵! 欲しがりません勝つまでは! ただ買うのを忘れただけなんですけどねー。明日の早朝にでも街に戻って買ってこよう……。


 うむ、料理は美味しゅうございました。眉目秀麗、容姿端麗、さらには才色兼備で武道にも精通している……さすが雪緒さんは穴がないなー。 

 

 雪緒も絆も粗方食べ終わったみたいなので、今後の方針を話し合っておこうと思い、言葉を切り出した。


「……さてと、で、今後の事を話そうかと思うんだけど」


「今後のこと……ですか?」


 雪緒は首を傾げながら、俺に訊いてきた。絆に関して言えば、食事が終わると俺の胡坐(あぐら)をかいた上に座ってきていた。その際に雪緒にひと睨みされた事を忘れてはいけない……。


「ああ、城を出る時に話したけど、これからの方針をね」


 絆は俺達の会話に興味が無いのか、鞄から俺の携帯を取り出し、胡坐の上でアプリのテ〇リスをピコピコとプレイしていた。


「一応先にも言ったけど、俺達がこれから向かおうと思っているのは、〈魔術都市マクスト〉を目指す事を考えている。もしかすればここなら、元の世界に帰る方法の情報があるかも知れない……。 ただここは、〈神光国家プレクスタ〉からはかなり離れているので、まずは中継として北にある、〈自由都市〉に向かおうと思うけどいいかな」


 俺は元の世界に帰る方法を考えてみた……少なくとも、俺達を召喚したあの国ではその様な情報は無かった。だとすれば――と、考えた。あの召喚で使用されたのは魔法陣、それならば魔術都市と呼ばれる場所でなら、帰る方法がわかるかもしれないと考えたのだ。可能性……でしかないのだけど。

 それにこれから、向かおうと考えている自由都市――は、中立都市なので俺達が向かうにも都合がいいだろうから。


「はい。わたしは詳しい事はわからないので、遥くんにおまかせします」


「ああ、ありがとう。それで聞いた……と云うか調べた情報だと〈自由都市〉までは、まだここから歩いて一週間ぐらいかかると思う」


 この世界では車や電車、飛行機などは存在しないので、おもな移動手段としては徒歩、或いは馬、馬車などである。まあ魔物が跋扈しているのに路線など引ける訳も無く、飛行機など存在しても空とぶ魔物の格好の餌食だろう。 

 しかし遠いな……しかも、わかったのは距離ではなく、徒歩だと大体何日かかるって情報なのだ。この世界にはキロとかマイルとか、長距離を図る単位が無いらしい。抽象過ぎてわかりづらい……せめて何キロかわかればペース配分も考えられるのにな。

 

「……遠いんですね」


「ああ、ほんとにな……」


 次の〈自由都市〉では馬車一式ぐらいは、買い揃えようと俺は心に決めた。

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