表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者は踊る  作者: 君河月
第一章 召喚編
11/21

第十話 本当だよ?

 覗きになんて行ってませんよ? 本当だよ?



 暗躍その壱


 で、やって来ました〈プレクスタ〉で最も大きい、公爵領です。

 元々情報収集の際に、有力貴族に関しての情報を得てはいたので、復讐と実益も兼ねて、財産などを盗み出す予定だったのだが、今までは万が一バレた場合、雪緒に迷惑がかかると思い自重していた。

 しかし最もの懸念材料だった《隷属の魔術》が解除され、更に時間も無いと云う事で、行動に移す事にした。


 流石は公爵家だけあって、プレクスタ城には及びはしないが、かなり立派なお城でした。

 俺は《光学迷彩(インビジブル)》を使用して、堂々と宝物庫など、城内の財宝を隠している場所を探る。


 大概セキュリティの為に、魔術で出入り口など封じていたりしていたが、王城の宝物庫でさえ問題にならなかった俺にとっては、それは無いに等しかった。 

 俺にとって最大の問題は、鞄に収納する際だ……あれだけは何とかなりませんか?

 この世界でも非力な俺に取ったら、金塊の重さは洒落にならない。

 治癒魔術が無かったら、翌日筋肉痛ですよ……。


 この世界の金を持っている貴族連中は、概ね魔術などでその場所を隠している事が多い、だから《魔術感知》を持つ俺には、鴨に過ぎなかった。

 寧ろここに何かありますって、教えてくれているような物だ。

 ……ヤバイ、笑いが止まらない。


 とある貴族の書斎に押し入った時は、入り口が魔術で封じられていたので、おかしいなとは思ったが――出るわ出るわ灰色では無く、真っ黒な帳簿などの書類たちが。

 軍事に関する物もあったので、敵対国に売れば高く売れると思ったけど、それをすれば悪目立ちしそうなので、自重する事にしておいた。

 しかしどこの世界も、(まつりごと)に関わる人間は黒い、黒いね。

 まあ一応念のために、鞄の中に保管させて頂いたけど……。

 

 まったく、いい事をすると気分がいいぜ。


 俺は、王都内と城から半日で通える範囲の貴族から、片っ端から盗みに這入ってやった。

 金銀財宝はもとより、武具の類は全部金属塊(インゴット)に戻して鞄に押し込んだ。

 もちろん幻術を掛けた上で再封印しましたよ。

 今回は十日程で解けるように設定しました。逃げた後バレたら面白そうだしね。いきなり一文無しになるんだし。


 いきなり俺達に国を救えとか、それで命をベットしろとか言ったんだ。その程度の代償は背負って貰わないとね。

 俺も逃げ出す為に、先立つ物がいるから。



 

 さらに暗躍その弐


 忌々しい召喚の間にやって来ました。

 ぶっちゃけ、この部屋の正式名称は知らないのだが、興味も無いし知りたくも無い。


 ともかく、仕掛けを仕込んでいく事にする。

 具体的に言えば《次元の消失(ディメンション·ゼロ)》を仕掛けておいた。 

 これは再召喚をしようとするか、俺の合図で発動する様に設定している。

 魔方陣自体に壊されない様、防御魔術が使われていたが、事前に《次元の消失(ディメンション·ゼロ)》で色々試していたのだが、俺の魔術抵抗力(レジスト)すら貫通したので、誰が掛けたかは知らないが、問題にもならないだろう。


 そして、俺はこの城内に存在する書庫全てに、同じ様に仕掛けておいた。

 さらに念の為にも、この国の魔術師の部屋、全てにも仕込んでいる。


 これで、この国での勇者召喚なぞ、ふざけた事が出来ない筈だろう。




 ☆ ★ ☆ ★




 そんな感じで、コソコソと暗躍しながら一週間が過ぎ、建国記念祭……つまり俺たちが、お披露目される事に差し迫っている三日ほど前。


 雪緒は初日に騎士団長を圧倒してしまったので、そのお蔭か訓練自体は任意に成っている。

 なので今回は、雪緒も絆も訓練には参加していなかったが、俺は偽装の為、ここの連中に落ち零れと思いこませる為にも、日常通りの剣術の訓練が終わり部屋に戻っている途中、騎士の集団に出くわした。

 ここに来て既に一ヶ月以上経っているのだが、俺が見たことも無い連中だった。


 男女10人程の騎士の集団……その先頭に立っている騎士――長身二枚目で、男の俺からしたら劣等感を煽られる人物だが、その男の装備している物が気になった。

 俺の特性(アビリティ)《魔術感知》が、男の鎧と剣にかなりの魔力が有しているのを見て取れたのだ。

 俺が宝物庫で見た、聖剣に匹敵するかも知れない。



 俺はその人物が気になり、セイナーレを捉まえて問いただした。


「――それは恐らく、ガフォーク·ヴェルヴェック様かと思われます」


 俺はその名前に聞き覚えがあったが、念の為に訊ねる事にした。


「……誰なんだそれ?」


「はい。勇者様は《|栄光の騎士(ナイツ·オブ·グローリー)》をご存知でしょうか」


「――ああ」


 《|栄光の騎士(ナイツ·オブ·グローリー)》――ここ『神光国家プレクスタ』が誇る最強の騎士団の名前だ。

 如いてはこの『レミール大陸』の中でも、最強を誇る少数精鋭の部隊らしい。

 という事は、あの集団がそう云う事だろうか……?


「では――ガフォーク·ヴェルヴェック様はその中で〈騎士の中の騎士(ナイト·オブ·ナイツ)〉で在らせられます」


 〈騎士の中の騎士(ナイト·オブ·ナイツ)〉は筆頭騎士。この国で最強の騎士に与えられる称号。

 つまりは、この大陸でも最強クラスの人物だと云う事だ。

 そう考えれば、あのレベルの装備をしていても納得がいく。

 あれは王から贈与された、聖剣クラスの武具だったんだろう……。


 しかし、長身二枚目でこの世界でも最強クラスって……俺の劣等感がジクジクと刺激された。

 あんだけイケメンだとさぞモテるんだろう……死ねばいいのに。

 なんだよ、そんな人物が居るんならそいつに魔王退治頼めよな……。

 そんな風に俺はやさぐれているが、セイナーレは気が付いていないのか説明を続けていた。 


「今まで遠征されておられましたが、間も無く建国記念祭ともなり、その為帰還されたかと思います」


 なるほど、だから今まで見かけなかったのか、年に一度の記念祭――そんな一大イベントに、それが国を代表する騎士ともなれば、召集されもするか……。

 ――しかし、今までは城に居なかったので、特に害が無いと思いほっといたが、これは逃げ出す際に面倒臭くなりそうだな……。

 俺はそんな考えをおくびにも出さず、セイナーレに礼を言うと立ち去った。


「……そうか、わかった。ありがとう」


「いえ」


 俺は祭りの騒ぎに生じて、逃げ出そうと考えていたんだが、万が一阻まれたら如何するべきだろうか?俺達はこれから、この国に喧嘩を売るのだ。

 ……そう、勇者召喚など愚かしい事をした事を、奴らに後悔させてやるのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ