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大地への帰還  作者: 桐生真之
7/11

計画

英雄のする鬨の声のように彼は語る。

「私は常々思っていました。現実世界にある幾多の殺人。その大罪に対して、罰が軽すぎるのではないかと」

 握りこぶしにも力が入る。聴衆は真剣なまなざしで聞き入り、青年の演説に頷いている。

「人ひとりの人生を奪い、命を葬ったのに対し、刑務所に数年滞在するだけでまた犯人は人生を謳歌できるのだ。強姦をしても、強盗をしても、殺人をしても、死刑と無期懲役を免れたならば、狭いところに暫くいさえすれば、また金を稼ぎ、美味いものを食い、子孫を残すことも可能なのだ。そんなことでどうして被害者が報われようか。被害者は決して報われない! いかなる施しを受けようと、報われない! 例え、殺人を犯した者が、遺族の復讐の手によって、もがき苦しみ息絶えようと、本質的には、遺族は全くもって報われないのだ。何せ遺族は、ただただ、犯人によって大切な家族、友人、恋人を殺され、奪われたのだから。犯人にマイナスを与えたとして、遺族が蒙ったマイナスが、プラスに転じることはない。

 しかし、遺族に実質的なプラスはないとわかっていても、軽い刑罰に納得のいかない遺族はごまんといる。犯人が苦しんでも、遺族のプラスになどならないのに!

 ではなぜ人は復讐を望む。復讐を喜ぶ。

復讐は、心の解放を生むからだ。

復讐は何も生まないのか。

そもそもだ、人は行動のひとつひとつ、いちいち何か生まなければならないのか。

人はいちいち生産性のある行動をとらないといけないのか。復讐は、魂の解放である。怨念という呪縛からの解放なのだ。復讐によって、浄化することを必要とする魂も存在する。ここには、浄化を待ち望んでいる魂がたくさんいる」

 言い切って、爽やかに。

「そんな貴方たちのために我々は存在しております。

【高咲正樹コンサルタント】へ、ようこそ。我々は、お客様のご希望に沿った処刑を行っております。まずはご相談から。ご希望の方はこちらのデスクへどうぞ」

人が殺せて、感謝もされる。これは天職・ライフワークであった。

噂が噂を呼び、人気は鰻登りであった。彼は口コミの素晴らしさを知った。日々、依頼者が絶えぬ。

 人気の秘密は、ひたすら顧客目線に立った綿密なコンサルティングと、親身なカウンセリングと、計画に忠実な遂行力にあった。

 それと彼は、客から何も貰わなかった。これは営利目的の会社ではなく、非営利団体、慈善団体であるに加えて、すでに顧客からターゲットという報酬を得ているからだ。殺すことが彼らにとっての仕事であり褒美なのである。最高の永久機関だった。

しかし人気が出すぎるのも困りもので、顧客が多くなりすぎると仕事が回らなくなる。

立ち上げ時期は、殺人以外の正当な復讐も扱っていたが、件数が多くなりすぎたので、殺人以外の復讐に関しては傘下の組織に受け持ってもらうことにした。現在、会長である青年に関しては、殺人がらみの復讐しか行っていない。

メンバーはそつなく業務をこなしている。

「いらっしゃいませ、まずはこちらにお名前、ご住所、お電話番号のご記入をお願いいたします。それから下のチェックシートにご記入後、受付に身分証のご提示もお願いいたします」

記入が終わった。

ここからは青年の仕事である。

青年は、客の四十代女性をカウンセリングしている。

「ご家族が被害にあわれたのは十年前。殺害されたのはお客様のご子息で、当時中学一年生。加害者は同中学の同級生と先輩の不良グループ。ご子息は日常的に殴打や金品の搾取をされ、リンチの末に脳出血で死亡」

「はい、息子はむごい殺され方をしました。それにも関わらず、息子を殺した犯人たちは中学生ということで重い罰を与えられず、今は普通の人と同じように生活をしていると聞きます。息子は死に、私たちの人生まで奪われたのに、なぜ犯人がのうのうと暮せているのか……そう思うと……」

 女性は額に青筋を立てながらすすり泣いた。

「どうか、どうにか……復讐を果たしたいのです。でも、私たちにはその力も術もない」

「お気持ちはよくわかります」

「よろしくお願いします」

 女性は咽び泣きながら、頭を下げた。

「こちらこそよろしくお願いします。処刑基準のベースとなっているのはハムラビ法典ですが、ただやり返しただけでは、条件が合いません。加害者は加害者たるがゆえに罰を受けるのに対し、被害者は無実であるのに被害を被っているのですから、同じことをやり返しても割に合いません。被害者は、ただただやられ損なのですから。基本的に、処刑は被害者が受けた苦痛の十倍返しです。目玉を一個取られたなら、十個、奪い取る。金玉十個でもいいですけど。あ、今のは玉と玉をかけたギャグですので」

「は、はぁ……」

「いじめに関わっていた人数は五人とのことですので、我々の仕事は五十人をめどに行います」

「といいますと……」

「加害者の関係者の脳、五十個壊します! ハイッ! 拍手! パチパチパチパチ!」

「脳を壊す……?」

「はい、加害者が行ったのは息子さんを殴打し脳を破壊したという現象ですので。加害者ひとりにつき、加害者の家族や恋人などの関係者十人の脳を壊します。加害者は五人なので、それを五回くりかえすだけです」

「でも、そんなことが本当に……」

「可能です。一日あれば」

「でも、さすがに十人は必要ないかと……」

「まぁ、今のは単に提案なので、誰にどういったことをするのかは、お客様が決定されてもかまいません」

「わかりました。では、加害者の大切な人にターゲットを絞ってほしいと思います」

「といいますと」

「加害者の家族や恋人、友人などです」

「それならせいぜい二人から五人程度でしょうか」

「そうだと思います」

「わかりました。犯人の人間関係の調査とターゲットの誘拐などの下準備も我々にお任せください。処刑はお客様ご本人がされるか我々が行うかは、どちらになさいますか」

「それは、できればお願いしたいですが……」

 青年は逡巡する女性の語尾から心理を読み取り、言葉を待った。

「その時になったら、気が変わるかもしれません」

「それは結構です。変更は可能ですので」

「はい。ありがとうございます。なんとお礼を言ってよいか」

「まだ何もしていませんよ。では、具体的なターゲット候補の絞り込みと、処刑方法の話し合いを行いましょう」

 女性は深刻な顔であったが、その頷きには決意が漲っていた。

「まずは加害者Aから。当時の息子さんのクラスメイトで、窃盗歴もある典型的な不良ですね」

 青年は書類に目を通しながら話す。

「現在は県外に住んでいると……情報はこれだけですか?」

「はい」

「問題ありません。探し出しますから。例え顔や名前を変えても、人の歩んだ跡は決して消えませんから。では、両親はどうしましょう?」

「どうって……そんなこと考えてもなかったです」

「無理もありません。そもそも考えていたら、自分でしようと思いますからね。はは」

「すみません」

「いえ、謝ることはありませんよ。そのために我々のような者たちがいるのですから。ターゲットの両親はどうしましょう? 殺しますか?」

「はい、殺してください」

「どのようにして殺しましょう?」

「息子がされたのと同じように殺してください」

「順番はどのようにしましょう」

「順番とは?」

「殺す順番です」

「そうですね……犯人の後に殺してください」

「私もそれが良いと思います。父親と母親はどちらを先に殺しますか?」

「母親です」

「わかりました」

 理由は聞かなかった。

「では、犯人に恋人か妻か子供がいた場合はどうでしょう」

「すべて殺してください」

「承知しました。どのように殺しましょう?」

「みんな息子がされたのと同じ方法で殺してください」

「なるほど。これは私からの提案ですが、殺す前に犯人の前で妻や恋人、子供を強姦するというのはどうでしょう」

「それは……」

「そうすることによって、より一層、完璧に復讐が果たせますよ」

「ではそれもよろしくお願いします」

「わかりました。それもプランに加えておきます」

「お願いします」

「では、殺す順番は、犯人の子供、妻か恋人、これらは強姦の後に殺します。そして犯人、それから犯人の母親、父親という順番でしょうか」

「はい、それで良いです」

「犯人の祖父母などの親戚はどうでしょう」

「犯人と親しい場合は殺してください」

「わかりました。それも調べておきます」

「よろしくお願いします」

 それから他の加害者たちの段取りも行い、話を切り上げた。

「では犯人A・B・C・D・Eの処刑方法も関係者の範囲も殺す順番も基本的には同じで、人数は犯人の人間関係により決定する、手法は拳や鈍器による殴打をし脳を破壊、対象によっては殺害前に強姦も行う、ということでよろしいでしょうか」

「はい、問題ありません」

「では、明日のまた同じ時間にこちらにいらしてください」

「本当に明日でいいんですか」

「ええ」

「そんなに早いんですか」

「はい、うちのスタッフは優秀なので」

「とても頼もしい」

「ありがとうございます。あ、それと処刑中に対象者たちが喚き散らしたり暴れたりすることがありますが、その場合はどうしますか。貴方は別の部屋にいてそれを聞かないようにすることもできますし、ターゲットの喉やアキレス腱を切っておくこともできます。薬物によって酩酊状態にしておくこともできます。ターゲットの悲鳴や罵倒に耐えられない方もいらっしゃいますので」

「別の部屋にいる必要も、薬物を使う必要もありません」

「わかりました。復讐は殴打で薬物も使わない、極めて原始的な方法で行います」

 青年はにっこりと笑った。

「ターゲットが暴れた場合は、我々がしっかりと取り押さえますので、処刑は的確に行われます。ご安心ください」

「ありがとうございます」

「それでは今日はこのくらいにして、また明日お会いしましょう」

「なんとお礼を言ってよいか」

「まだです。本番は明日ですよ。テンション上げていきましょう!」

 犯人Aは二十二歳になっていた。なんと結婚もしており、妻は妊娠中、両親も存命だった。

 犯人A、その妻、父親、母親を青年と依頼者とスタッフたちで囲んでいる。

「なんだ、なんなんだよお前たち!」

「私は高咲正樹です。そして彼らは高咲正樹コンサルタントのスタッフたちです。そしてこちらは、貴方が十年前に殺害したクラスメイトのお母様です」

「あ、あいつの親……復讐屋を雇ったのか」

「察しがいいですね。まぁ、そのようなところです。非営利で活動している慈善団体ですが」

「俺たちをどうするつもりだ」

「被害に遭われた依頼者のご子息と同じ目にあってもらいます。目には目を、歯には歯を。しかし、ただ同じ目に遭わせただけでは割に合わない。なぜならご子息は何も悪いことをしていないのに、ただただ暴力と金品搾取のターゲットにされたのですから。悪くないのに、悪いことをされたのです。貴方は、悪い事をしたのですから、ただ同じ目に遭わせるだけでは割に合わないので、およそ十倍返しの仕返しを受けてもらいます。単純なことです」

「そんな、許してくれ……あのことは本当に悪かったと思ってる……俺はこの十年で心を入れ替えた……一日たりともあのことを忘れたことはなかった」

「それにしては普通に生きているようですが」

「いつか償いとしたいと思ってたんだ」

「またまたー。嘘つきぃー。思い悩んでいたにしては肌艶が良すぎますよ。結婚して妻を孕ませる元気もあるようですし」

「本当だ、本当に……」

「はいはい。えー犯人Aの妻は妊娠しているようですが、胎児はどうしますか? 同じように頭を殴打して脳を破壊しましょうか」

「胎児の脳を殴打って、どうやって」

「一休さんの屏風のトラのエピソードじゃないですけど、取り出さないと殴打できないでしょう」

「とりだすって」

「犯人Aの妻の腹を切るか溶かして取り出すんです」

「いや、それはいいです」

「そうですか。妻はどうしますか。先に犯しておきましょうか」

「そうですね。お願いします」

「おいおい、嘘だろやめてくれよ! 俺の妻は関係ないだろう!」

「はい、まぁ、直接は関係ないですが、十倍返しなので。本当は貴方の関係者十人に死んでもらうはずですが、今回は少な目ですね。奥さんは貴方のために、貴方を苦しめるために死んでもらうのです」

 スタッフが犯人Aの妻を取り押さえている。犯人もその妻も若く元気で良く叫ぶタイプなのである。

「奥さんを前に出して」

「はい」

 スタッフたちが犯人Aの妻を青年のもとへ運んだ。青年の性器は硬直している。

「こんなことが許されると思ってんのか!」

 罵倒する犯人A。

「どの口が言うのか」

 青年は犯人Aの妻の頬を叩いた。

「やめろ!」

「やめて……やめてください……」

 犯人Aの妻は、犯人Aと結婚したにしては意外と普通の女性のようだ。不良系の女でもなく、黒髪のさっぱりした感じの肩まで伸ばした髪の、どこにでもいそうな女だ。青年は犯人Aの妻のティーシャツを捲り上げた。

「おい! やめろ! ふざけんな!」

 罵声を浴びせる犯人Aを無視し、青年は犯人Aの妻のブラジャーのホックを外し、乳首にしゃぶりついた。

「いやぁ! やめて!」

「てめえふざけんな! ぶっ殺してやる!」

 犯人Aの妻は必死に身をよじるが、取り押さえられているので反抗などできるわけもなかった。

「ありがとう。もう君たちは手を放していいよ」 

青年はそうスタッフに言い、スタッフを離れさせた。

 逃げようとする犯人Aの妻の腕を取り、押し倒し、頬に張り手を食らわす。まだ叫ぶので、拳で頬骨の下あたりを殴った。すると恐怖で体を震わせて少し静かになった。

「やめて、やめて……」

「恨み言は貴方の夫に言ってくださいね。十年間なんの清算もしてないんだから」

「彼は苦しんでた……」

「勝手に自分がぼんやり苦しんでいただけで、被害者は救済されてないんだよ」

「うう……」

 青年は女の上半身を裸にさせた。そして履いていた妊婦用のスカートも刃物で裂き、下半身も裸にさせた。全裸のお腹の大きい女の出来上がりだ。妊娠してから毛の処理ができなかったからか、性器周辺は剛毛だった。

「くそ! マジでふざけんな! もう、やめてくれ! それだけはやめてくれ!」

 言い返すのも面倒なので、青年は男を無視している。

「さあて、入れまーす」

 青年の屹立した性器が妊婦の性器に入っていった。

「いやぁあああああ!」

 青年は女の乳首をしゃぶりつきながら腰を動かす。悲鳴が喘ぎ声に変わるのにそう時間はなかった。

 女を突く度に、乳と腹が前後に揺れる。動物のように後ろからも突いた。楽しい。

 しばらくして、女はあろうことか絶頂を迎えてしまい、痙攣しながら嬌声を上げた。その後青年は女の膣内に精液を放出させた。

「いやぁ、私はよくやるのですが、犯人の妻を犯すというのは、本当に楽しいですね。癖になる」

「くそっ、くそっ! お前ら絶対に呪ってやる! 呪ってやるぞ!」

「それは依頼者のセリフですよ。ねぇ」

 依頼者は深刻な顔でゆっくりと頷いた。自分の決意を確かめるような確信的な頷きだった。その頷きによって、自分の決意を固めている。

「お前の息子は最高に使えないやつだったよ。自分じゃなんもできなくてよ。復讐すら自分の手でできないお前と同じだよ。親が親なら、子も子だ。自分じゃなにもできない」

「あら、やっと本心がでましたね。どうしましょう?」

 依頼者の怒りが爆発した。

「やっぱり、胎児も取り出して殺します!」

「わかりました」

「おい嘘だろ! もう充分だろ! やめてくれよ!」

 青年は犯人Aの妻に近づこうとした。

「私が直接やります!」

「わかりました」

 青年は隣にいる書記に話かけた。

「記録してください」

「はい」

 青年は依頼人の行動を目で追いながら、その光景を描写していった。書記は正確な速記をしていく。

「依頼者女性、刃渡り三十センチの刃物を右手に持ち、絶叫する犯人Aの妻に叫びながら突進。錯乱しながら胸の下部、みぞおちの辺りを一突き、両者共に転倒。はい、スタッフ、依頼者が怪我するといけないので犯人A妻の手足を取り押さえて。それから依頼者は立ち上がり、犯人A妻の胸部に刺さった刃物を抜き、さらに首を一突き……犯人A妻絶命、刃物を抜き取り、下腹部を横一文字に裂き、さらに縦方向にも裂く。刃が子宮に到達するまで五回刃物で下腹部を抉る。ようやく子宮に到達し、母体から分離。子宮はかなり肥大している。刃物で子宮筋膜を裂き、胎児を取り出す。犯人A気絶。胎児の大きさからして、妊娠八か月程度であると推測される。依頼者は胎児の両足を持ち、後頭部から地面に叩き付け、胎児の頭部を破壊、気絶する犯人に投げつける。それからさらに絶叫し、犯人A妻の頸部を切断し、頭部を犯人Aに投げつける。その後泣き叫びながら犯人Aの首を二回、馬乗りになって腹部を六回突き刺す。力尽きたのか、死亡した犯人Aの隣に仰向けになって停止。とりあえず記帳はそこまでにしておいてくれ」

「はい、わかりました」

「お客様、犯人Aの両親はどうされますか」

 はぁはぁ、と荒い息をしながら依頼者は答えた。

「最初の取り決め通りの殺し方をしてください。よろしくお願いします」

「かしこまりました」

 青年は、犯人Aの両親の顔面や眉間を殴打し、的確に脳出血を起こさせた。犯人Aの両親はやがて昏睡状態となり、心肺機能を停止させた。

 青年は、仰臥して目を瞑る血まみれの依頼者のもとへ近寄り、声をかけた。

「疲れたでしょう、でも、すっきりした顔をされている。すがすがしい」

「ええ、少し、すっきりしました」

「後の四組はどうしますか」

「もう疲れました……」

「そうですか。あとは簡単に焼き殺すなり突き落すなり打ち殺すなりしておきましょうか」

「そうですね。お願いします」

「これで報われますね。息子さんも」

「そう、ですね……」

「どうかされましたか」

「いや、やはり、取り決めの通りに殺しましょう。体力が回復したら、全て私がやります。そうでないと、後悔してしまいそうなんです。息子の復讐さえも他人任せにしてしまっては、本当の復讐にならない」

「素晴らしい。ええ、私もそう思います。我々は単にきっかけづくりとサポートの役割でしかありません」

「やっと気づけました。ありがとうございます」

「まだ終わってませんよ」

「はい、がんばります」

「がんばりましょう」

 青年は依頼者に手を差し伸べた。

 依頼者は青年の手を取り、微笑する。

 青年の頬が笑みの形に吊り上った。

 そして青年は閉じていた目をうっすらと見開いた。

 左手に持ったティッシュの中に、今出した精子が染み込んでいった。


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