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21 疾走
意識がもうろうとして身体感覚が定かではなかった。しかし霊的な感覚が膨張し、世界と接続しているような感じを覚えていた。この世界にある、ひとつの意識が新たに弱まったのを感じた。恐らく女の言葉の通り、桜の意識も暗闇に閉じ込められたからであろう。
母の気配を感じて歩み寄ると、腰をおろして娘三人を静観する小さな背中があった。姉妹たちは意識を失い、布団に寝かされていた。
「母さん、桜も妹たちのようになってしまったのかい。あけびと柊のように、意識不明に」
「どうして、なぜこのようなことが……」
「心配しないで。僕がどうにかしてあげる」
「どうにかって、あなた……」
「僕は誓ったんだ。彼女たちを大切にすると」
部屋に戻ると再び、世界が歪む。
「いますぐ、助けに行く」
青年は遠い夢へと旅立った。




