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第5章 城の中で

包丁は彼女を刺し、彼を傷つけた。そして、最後のチャンスを手にするために…


 ジョーに教えられた通りに向かったのは城のある大きな街だ。ラヴィーネはすぐに気づく、ここがこの国の首都であると。首都に入った途端、彼女に対して敬礼する人がいる。なんでも顔馴染みの騎士や商人がたくさんいた。以前、ラヴィーネはここに来たことがあったからだ。


 ラヴィーネがまだ魔法学校にいた頃、首都では戦争が起きていた。隣国からの侵攻で、数々の兵士が負傷する中、ラヴィーネたち魔法学校生は傷の治癒を行っていた。その中で、ラヴィーネやオリビアは兵士たちの治癒が終わると兵士の前線にたち敵を次々薙ぎ倒していった。その功績から彼女たちに二つ名をつけたそうだ。その二つ名こそ、『緋色の魔女』と『青の処刑人』だ。それぞれ瞳の色が由来らしい。


“ずいぶん久しいな。あの頃と変わらず、賑わってるな…しかし、蓮の師匠は誰が適任なんだろう…”


 ラヴィーネはまだ考えていた。彼女の考えは変わっていった。ジョーの一件があってからはこの怪物を誰かに押し付けたいという…諦めたかのようなことを考えていた。そんな中、とある騎士が2人を城の中に案内した。彼女に対して、まだ報酬を与えていなかったからだ。


“よく来たな…この節はどうもありがとう。おかげでこの国は平穏だ。君とオリビアは雪の山の出身だろう…ここでゆっくり休んでいくといい。褒美として…一つだけ願いを聞いてやろう”


 王様は微笑みながらそう話すと、ラヴィーネはしばらく悩んだ。自分のエゴの願いは自分にとっては嬉しいが、どこか罪悪感を感じる。その一方で思ってもないことを言うと、どこかで後悔をする。やらない後悔かやった後の罪悪感…どちらも結局選択はできない。しかし、悩んだ末に絞り出した答えは怪物を誰かに預けることだった。


 王は首を傾げた。怪物がわからなかったからだ。しかし、ラヴィーネは淡々と話す。ここまでで起きたこと、自分の身に起きていること、そして…自分の今の状態を。


“それは…そうか。そしたらそうだな…この人の元へ行くといい。そして…ラヴィーネ、また会おう。今度はオリビアとメリッサ、あと…あいつにも会いたい…今あの子は元気か…?”


 ラヴィーネは一言、元気にしていると伝えたあと、彼の手を取って城を後にした。王の言うあの子とは、実の娘であり、戦争の時に協力したクラウディアのことだ。彼女は元々王様である父のことが嫌いで、戦争の時も約束を破って参戦した。そのあとは城から逃げ出して、魔法学校に入った。そこまでは彼女の知ってる話。それ以降は、誰も知らない。もしかしたらどこかの街でひっそり暮らしているという噂だ。


“止まれ、金を出せ…って、ラヴィーネ様じゃないですか…”


 城を出て、城門に着く前の路地裏。突然盗賊が襲った…ように見えたが、どうやらターゲットを間違えたみたいだ。盗賊の正体は、魔法学校の同級生だった。旅をしていく中で、何人もの同級生と出会っていく。その中で、ラヴィーネは少しずつ自分の運命を悟るのだった。今出会った彼女は、魔法学校の中で最も体術に優れており、ジョーが認めていた武術家でもあった。


“ラヴィーネ様、すみませんでした!最近こうしないと稼げなくなってしまって…って、ラヴィーネ様…顔色悪いですよ?…もしかして”


 彼女が何かを言い出そうとすると、ラヴィーネはやめてと言った。そして、蓮の師匠探しを手伝わせた。しかし、蓮は暴れ始めた。2人とも殴られ、生命の危機を感じたその時、何者かが蓮を引っ張りどこかへ連れていった。盗賊の彼女は、その人が誰かも、これから起きることも察した。その上で、あの人に師匠探しを任せた方がいいと進言すると、城下町のとある酒場に移動した。


“…それで、君は…誰だっけ…覚えてないな…”


 ラヴィーネは彼女の名前を思い出せない。存在は知っているというのにだ。きっと嫌なことでもあったのか、それとも少しずつ忘れ始めているのか…それは彼女しかわからない。


“やっぱり…あのお医者さんの言うとおりでしたか…私です。レオナです”


 レオナ・ロペス、何を隠そう彼女は『漆黒の正拳』と呼ばれるほど武力に長けている。そして、なにより正義感も強かった。なぜ盗賊になったかについてだが、正義感の強い彼女には人望がなかった。というより、周りがカリスマだらけで知名度がなかった。人から忘れ去られていたため、何をしてもいいのだろうかと思って盗賊になったそう。そんな彼女を見て、ラヴィーネは涙を流した。守ってやれなかった後悔と、忘れてしまった罪悪感からだろうか。


“実は、2人の旅を最初から見ておりました。オリビア様を呼んだのも私、メリッサ様を呼んだのも私です…ラヴィーネ様、次は海の街に行くのでしょう?…決まってないのなら海の街に行ってほしいです。きっと、先も長くないのでしょうから”


 ラヴィーネは涙を流したまま、力強く頷いた。そのあと、さっきの男が蓮を連れてきた。しばらくこの男と旅をさせるとのことだ。そして、レオナも誘って4人で海の街に向かった。

先が長くないというのはどういうことなのだろうか…海の街になぜ行くのだろうか…

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