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第3章 湖の中で

森を抜け、草原に出ると見えてくる景色。見えてくる真相とは?


 森を抜けて、草原をはしゃいでいたラヴィーネ。そして、そんな彼女に軽蔑するかのような視線を送りながらもついていく蓮。雪の山の中でしか過ごさなかった彼女にとっては驚きだらけの広い世界。しかし、はしゃいでいた彼女が突然倒れた。彼は頭の中では助けたい気持ちがあったが、行動ができなかった。すると、通りすがりの行商人が彼女を見つけ、近くの街に連れていってくれた。


“…頭が痛い…はしゃぎすぎたのかな…”


 ラヴィーネは頭痛を訴えた。その街の医者が診察すると、ただの頭痛だったそうだ。薬草を飲んでから様子を見て出発するが、彼女はその医者の元から離れようとはしなかった。そんな姿を見た医者は彼女を連れて処置をした部屋とは別の部屋に連れていった。


 医者は相談をしたいのかと尋ねた。図星だった彼女は頷くと、蓮のことを診てほしいと言った。これは藁にもすがるほど彼のことを思ってのことだろう。しかし、そんな彼女の想いも医者には届かなかった。否、実際は届けようとしたと思う。しかし、医者は本職ではないから断った。どうやら蓮は、精神的なものが理由だそうで、カウンセラーに相談した方がいいらしい。カウンセラーなんて概念を知らない彼女に対して、医者は説明をした。その説明を聞いて納得した彼女は、ちょっとしたわがままを聞かせてしまったことを詫びた後、その街の診療所を去った。


 診療所を去ったラヴィーネたちは、この街を出ようとした。しかし、すぐに大きな湖を見つけた。彼女はこの湖を昔見たことがあると言い出す。どうやら小さな時に親が連れていったことがあるそうだ。親のことを思い出した彼女は静かに、しかし強い恨みを込めながら言った。


“…こんな湖に連れてきて、何がしたかったんだか”


 蓮はそんな彼女を見て、首を傾げた。どうしてこんなことを言うのか、何も理解できなかったからだ。しばらく湖を覗く蓮と、振り向いてその場をさるラヴィーネ。しかし、そんな2人に刺客が訪れる。


“お?ラヴィーネじゃん。元気してた?”


 馴れ馴れしく話しかけるのは、魔法学校の同級生のオリビア・フォルスター。『緋色の魔女』がラヴィーネだとするならオリビアは…『青の処刑人』とでも言うべきだろうか。青い髪の彼女は残忍な方法で無実の人を殺していった。『緋色の魔女』にとって恨まれてもおかしくないような人である。


“って…なんだ、誰かと一緒かよ…お弟子さんか迷い人さん?…そうか。もう用はない…ところでラヴィーネは、あの人のことを許せたのか?”


 オリビアがそういうと、彼女はオリビアの方を向いた。そしてつぶやくように、しかしはっきりと伝えた。許したくはないと言うことを。


 オリビアはすぐに別の方向へ向かい、ラヴィーネたちも湖をあとにした。しばらく歩いたところに大きな木があった。彼女はその木の下に座ると、静かにオリビアが聞いたあの人のことを語り始めた。


 あの人というのはラヴィーネ自身の親だった。彼女は昔から厳しく躾けられていたそうだ。魔法の才能を開花させたのも親の教育のせいだ。これ以上は語らなかったが、語っている彼女の目は全てを悟ったかのような…そんな目をしていた。


 親を許せるかについては考えたこともなかった。いや、考えたくもなかっただろう。全てを悟ったということは、これから何をすべきかも、これまでしたこともだ。


“よし、これから贖罪の旅にしようか。きっと許されることではないだろうが…それでもきっと…”


 旅の目的を話し始めると、口を閉ざしていた蓮は突然叫ぶように話した。


“こんなことの何に意味があるんだよ!バカバカしい!ふざけんな!何が弟子だよ!だいたいどうしてこんなメスと一緒にいるんだよ!頭にくる!俺は俺の道で行きたいのに!あー!もー!めんどくせー!とっとと死んでくれよ!”


 そう言うと、蓮は彼女の頭に石を投げつけた。彼女の頭からは血が、目には涙を浮かべていた。しかし、そんなこともお構いなしに彼は逃げた。彼が欲しかったのは、誰にも縛られない自由だった。


 その夜、ラヴィーネは夢を見た。好きな人が離れていく夢を。そして夢を見る中で、湖の底に沈む感覚を覚えた。目覚めようにも、目覚めることを心が許さなかった。当たったのはたった一つの、ごく普通の石ころだった。しかし、積もっていたダメージと合算して、取り返しがつかないぐらいのダメージを受けていた。目が覚めることはあるのだろうか。


 一方その頃、蓮は逃げ続けていた。そして、さっきの湖を見かける。しかし、湖を見かけても何も思わない。街へ出ていっても、民衆の視線が痛い。そんな中、蓮は民衆の1人に肩が当たってしまった。しかし、蓮は無視するどころか、喧嘩を売るような態度で挑発した。当たった人は当然キレたが、彼はそんなことお構いなしに暴力を振るった。その結果、当然ながらお返しに暴力を受けた。暴力を振るう人間は1人、また1人増えていく中で、誰かが突然話した。


“この子と話がしたいの!だから暴力を振るうのやめて!”

謎の少女オリビア。彼女の正体と、蓮の行方は…?

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