表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第1章 雪の中で

あれは数年前、もしかしたら今も続く話なのかもしれない。とある国の魔女と新たな出会い。


 ある世界には、それはそれは冷たい国があった。冷たいと聞けば、たいていの人は温度を思いつくだろう。冷蔵庫から取り出したばかりのお茶は、触ると冷たいものだろう?そういう感触と同じだ。しかし…いや、気温もあるだろうが、冷たい国というのだからもう一つの意味での冷たさだ。


“おい、てめぇぶっ殺すぞ”

“は?あんたに言われる筋合いはないんだけど”


 この通り、人と人との接し方が冷たいのだ…正しくはみんなが一触即発状態だ。一般人からすると、この文面はおかしいと思うのだろう。視線に入ったばかりなのに殺害予告から始まるのだから。しかし、この国では当たり前のことで、こんなことにつっこんでばかりいたら…たぶん1日も持たないだろう。


 このような極寒の国を知る者は皆、“雪の山”や“雪の国”と呼ぶ。雪が降っている気候もあるだろうが、雪にように冷たくて、残忍な人たちがいるのだと思っているのだろう。


 そんな中で1人、一目を置かれていた人がいた。Lawine(ラヴィーネ)Scarlatina(スカーラティーナ)…彼女のことを知る者は皆『緋色の魔女』と言い、彼女のことを恐れている。だが、それを言うのも無理はない。5歳で魔法の才能を開花させると、そこから2年でこの国の魔法を全て暗記した。そして、12歳で魔法学校を卒業して以降は魔術で生計を立てている。しかし、恐れられる理由はそんな天才的な才能だからではない。


 彼女は9歳の頃、自らの手で親を殺した。それだけではない。その頃、周りの友人が姿を消している。だから雪の国の人々は彼女に異名をつけて、恐れている。それも、自分を殺さないで欲しいというわがままな理由からなのだが。


 一方その頃、現代では…


“どうしていつも98点なの!どうして100点も取れないの!”

“今日も塾に行きますからね!演技してないでとっとと行くわよ!”


吐き気と胃痛を堪えて塾へ引っ張られているのは、今年で18になる男の子だった。彼は幼少期から天才で、高校生になるまでは学校でも1番の成績で、生徒会長も務めていた。誰にだって優しく、文武両道…そんな完璧人間だったが、高校に入ると平凡な成績になってしまった。そんな息子に対して、親は叱責して責任から逃れるばかり。むしろ息子を塾と勉強漬けにして、束縛を強めた。中学の時から週6で塾に入れたから部活ができなかった彼だったが、高校では週7で休みも与えなかった。勉強のやりすぎとストレスで、彼は精神的に疲れていた。勉強机に向かうだけで嘔吐や腹痛、眠ろうにも心臓が絶えずに鼓動して眠れない。学校でも寝てしまっては先生に起こされて、授業に集中できない…結果、優しかった彼は壊れてしまった。


 ふとした瞬間に行ったゲームセンターでメダルゲームにハマると、親に嘘をついて塾の代わりにゲームセンターに行っていた。そこで覚えたのはギャンブルの楽しさだけではなかった。タバコやお酒の美味しさ、自由を手に入れたなんとも言えない高揚感を覚えた。しかし、それも2週間でバレてしまうとそこからは学校までもが親の監視下になり、塾や学校の送迎、逃げられないように机に向かう椅子には拘束具を付けるなど、もはや常人では考えられない域の束縛になっていた。


 そんなある冷たい冬の日、センター試験から共通テストに変わった年、彼もセンター試験を受けようとしていた。しかし、その年の会場前では殺傷事件が起きた。その裏に隠れて、トイレで亡くなっている彼にも気づかれずにその日は過ぎていった。遺体が見つかったのは、共通テストが終わった次の月曜日の昼だった。たまたま大学生が見つけたらしい。しかし、もう事切れた後だった。彼は亡くなった。


 葬儀の日、身体から解放され、魂になった彼は空から見ていた。お焼香が終わり、火葬されるその時まで、誰も涙を流していなかった。誰かは泣くか、泣かなくとも寂しがる言葉や、そういった気持ちもあるだろうと思っていたが、そんな言葉は何もなかった。


“勝手に死にやがって…いくらかけたと思ってるんだ…”

“そうよね。あの子には面倒かけられっぱなしだったわ”


 それどころか勝手に期待されて、勝手に失望された。結局お金と自分のエゴのために束縛されたことを知った時、彼の心は絶望した。『もう一度やり直したい…』そう思って生き返ろうにも…既に身体は焼かれた後だったから生き返られなかった。しかし、その中でなぜか目を覚ました。あまりにも気持ちの良い目覚めは初めてだったのかもしれない。


“起きたか。蓮。おはよう”


 気持ちの良い目覚めの次には、恐ろしいぐらいの寒さが襲った。しかし、その寒さの中に暖かさがあった。目を開けると、見知らぬ女性が抱きしめていた。


“声は出せないか。なら…”


 見知らぬ女性は、心を読む魔法を使った。しかし、蓮という男の心は何重にもなった鎖に縛られている。また、声も発せないぐらいの精神状態だということも知った。


“…そうか。我はラヴィーネ…道行く人々から緋色の魔女と呼ばれている…だが、恐れなくていい。お主は辛かったんだな…そうだ、これも何かの縁だ。この街から出よう”

なぜ彼女は街を出ようとしたのか?そして出た先に見える事実とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ