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第十五章


「出た!魔女が出た!」


教室に田権さんを、見つけるなり、かけよって報告する。

田権さんは珍しくムスッとした顔で「ああ、そうですか」とだけ言った。


「嘘だと思ってんの?駅で悪そうな男をタコ人間みたいなのにしちゃったんだから!信じてよ」


「信じるも何も、街の様子を探らせていた私の使いのカラスが五羽も消息不明になりました」


「魔女の仕業?」


「この数日で五羽ですからね。当然そうでしょう」


「米良に力を与えたっていう魔女かな?すごく小さい子だったけど」


「この時期にこの街にいるんですからそうでしょうね。それに魔女は見た目で判断してはいけません。姿を変えることが出来ますから」


「へ?それじゃ、ひょっとして、田権さんも?」


「私はこの姿が本当の姿です。やましいことがあるわけでもないのに、変える必要なんてないでしょう?」

いや、色々と変えてみたらどうだろう?とは言えないので私は微笑みを返した。


ガラリと教室の前のドアが開いて、目をやると担任が入ってきた。

まだ一時間目が始まるまで時間があるのに珍しい。

しかも教壇に立とうとしない。

教室の入り口からクラスを見渡すと「あー、静かに」といつものような淡々とした声で言った。


「あー、実はですね。あー、今日は授業がなくなりました」

授業がなくなった?

みんなも不思議に思っているようで教室内がざわつく。


「あー、隣町の見木園みきぞので事故がありましてね。あー、学校は休校となります。あー、ですからですね。あー、今日はみなさん、このまま。あー、お帰りください。あー、明日につきましてはですね。あー、メールで連絡させていただきます。あー、ではお気をつけてお帰りください」

担任は言うべき事を言ったという態度ですぐに出ていった。

こっちはまだ状況が理解できていないっていうのに。


「学校が休校になる事故って何?」

田権さんに聞くと、田権さんはスマホをいじっていた。


「見木園町で人が倒れる。三十人以上が意識不明。このニュースの事ですかね?」


「三十人も?なにがあったんだろ?」


「さあ?それがわからないから休校になったのかも知れませんよ」


「そっか。でもラッキー。帰って良いんだ。どっか寄ってこうかな」

教室は事態が理解できない生徒たちが騒がしく話していたが、次第に帰る準備を始めて、一人、また一人と教室を出ていく。


「田権さんはすぐに家へ帰るの?」


「そうですね。このニュース、気になる事があるので街の様子を見て帰ろうかと考えているところです」


「何が気になるの?」


「気になりませんか?このニュースの裏に魔女の力が隠れている可能性もゼロではないでしょう?」

言われてみればそうだ。

この街に魔女がいるならその可能性もゼロじゃない。だけど。


「なんのためにそんな事をする必要があるの?」


「もしこれが魔女によるものだとしたら、魔女の意図が簡単に浮かび上がるんですよ」


「意図?」

聞き返すと背後からコツコツと音が聞こえた。振り向いて驚く。

カラスが窓ガラスをくちばしでつついていた。


田権さんはピョコッとイスからおりて窓を開いた。


カラスはくちばしを開けて「アー!アー!」と鳴く。

その鳴き声には私を含め、まだ教室に残っていた何人かの生徒たちが反応したが、

私と田権さんはこのクラスで浮いている存在だと言うこともあって誰も近づいては来なかった。


カラスは何度か鳴くと空へと飛び立った。

振り向いた田権さんは薄気味悪く笑いながら「ほうら。魔女でしたよ」と自分の席に戻って帰り支度を始めた。


「私が朝に会った魔女かな?」


「間違いないでしょう。この街の事を知っている魔女は恐らく私以外にもう一人しかいませんから」


「この街の事って何?」

聞いてみる。

米良も言ってた。田権さんに対して六月まではこの街に近づくなって。

と言うことは何かがあるのは間違いない。

なのに、田権さんは返事をよこさない。 視線がそっぽを向いている。


「その手…どうしたんですか?」

逆に質問された。

手?手がなんだと言うんだろう?


ん?


んん?


「なんじゃ、こりゃあ!」

私の右手の甲に黒い模様が付いている。


慌てて擦ってみたが取れない!

まるでタトゥーだ!

こんなの学校にバレたら退学になってもおかしくない!

親に見つかったら悲しませてしまう!


それにしてもなんなの? どれだけ強く擦っても全く取れない!


「それ魔女によるマーキングの一種ですよ」

田権さんが私の右手に顔を近づけて言った。


そう言えば「魔女と別れる時に手を握られた。すごく熱かったよ」

田権さんは私の目を見上げた。


人と言うのはその目を見れば何となく感情が読み取れる。

けれど田権さんの目からは何も読み取れない。

それがとてもプレッシャーになってごくりと喉が鳴った。


「倉府さん。あなた殺されますよ」


コロサレル?


殺される?


なんで私が?どんな理由で?


聞きたいが驚きで喉がキュッと締まり、声が出ない。そんな私を見上げる田権さんの口許が歪んでいく。そして目を細めて笑った。


「キヒヒヒヒヒ」






面白い、続きが読みたい、

面白くなくても読んでやろうという心の優しい方、

哀れな作家を助けると思って是非とも登録や評価をお願いします!

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