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第十二章


私が監禁されているこの倉庫は、ここに二人いる米良の手下のうちの一人の親が昔使っていた倉庫らしい。


辺りは工業団地らしくて、いろんな会社が密集しているんだけど今日は日曜日なのでどこも休み。

だから私がどれだけ騒いでも誰も助けに来てくれないのだそうだ。


手下の一人に「嘘だと思うなら叫んでみろよ」と言われたのでありがたく力の限り助けを呼んでみたんだけど、何の反応もないから本当のようだ。

だったら私が解放されるには田権さんが見つかって捕まるか、夜の十時まで見つからないかの二つしかない。


絶対に後者がいい。

もし田権さんが見つかったら私が田権さんに危害を加えなくちゃいけないかもしれないから。

その時用のナイフはさっきスマホを取られた時に見させられた。

最近のキャンプブームでテレビでも見たことのあるアウトドア用のナイフだった。


あんなので人を刺したら刺された方は病院、もしくはあの世行きだし、刺した方は警察行きだ。

どうか田権さん、見つからないで!

強く強くそう願いながら四時間ほどが経った。


地獄のように長い時間。今は午後の七時。まだ三時間もある。


「ちっ、まだ見つけらんねぇのかよ!使えない連中だな!」

ソファに寝転んでスマホでゲームをしていた米良は負けてしまったのかイライラを隠さずに吠えた。


「相手は高校生、しかも転校してきたばかりで友だちもいない様子。ひょっとしてすでに帰宅しているんじゃ? いや、そもそも家から出ていない可能性も」

手下の男がなだめるように言う。


その可能性も高い。

倉庫を閉じているシャッターの覗き窓はさっきまで明るかったのに今はもう真っ暗だ。


「そうかも知れないな。くっそ。物事が自分の思うように進まないとムカつくぜ」

米良は起き上がるとテーブルの上のカップ麺を下品にすする。

そして壁際に立つ私をジロッと見た。

天井から吊られた古しい蛍光灯の明かりが嫌な陰影を作って米良の迫力をさらに際立たせている。


「仕方ねえ。こんな退屈な時間を過ごすのも苦痛だしな。明日、登校する所を拐うか」


おっ!と言うことは私も帰れるってこと?


「おい、女」


「は、はい!」


「今日はチビを見つけるのは諦めるわ。だから十時までの拘束の話も無しな」


「そ、そうですか」

やった!帰れる!


「明日の午前中までここにいろ」


「……はい?」


「当然だろ。お前を帰して、なんらかの方法でチビと連絡を取られたら厄介じゃん。チビがここに来るまでは逃がさねーからな」


米良はまたラーメンをすする。


「そ、そんな!親が心配します!」


「一日ぐらいなんともねーよ」


「ここじゃやることもないし」


「だとよ。お前ら、こいつが退屈しないようにたっぷり相手してやれよ」

この言葉を聞いて米良の手下たちはいやらしい目つきに変わった。

その視線は私の体へ向けられる。


なんて最悪な日だ。

田権さんの言う通りだった。


「その女、逃がしたら殺すぞ」

米良は言って立ち上がる。


手下の二人は「はい」と同時に返事して嬉しそうな顔で私へ近寄ってきた。


「ごめんなさい!許してください!」

言ってみたけど米良はこたえずに入り口付近のスイッチを押した。


ガラガラと音を立ててシャッターが開く。外は真っ暗だ。


米良の手下の二人は着ていたシャツを脱いで上半身裸になった。

私は後ろへ下がる。けど、すぐに角に追い詰められた。


「二人じゃ朝まで持たないかもしれないな。後で五人ほど追加してやるよ」

悪魔の言葉を吐いた米良はバイクにまたがる。


こいつには心が無いのか?

どうやったらこんな人間になるのだろう?


涙目で見ていると、入り口から一羽の鳥が倉庫へと入ってきた。と、同時に倉庫の灯りが消えて一瞬で私の周りが真っ暗になる。


「あ?停電か?」


米良の手下が言ったかと思うと、すぐに「ぐっ」というくぐもった声が二つ、私の足元に落ちた。


状況がわからない。

いったい何が起きてる?


暗闇の中、キョロキョロと見回した。

すると、ジジジと上から音がして蛍光灯が再び点いて倉庫内に灯りが戻る。


「そっちから来やがったか」

米良が言う。


私の前には小柄で丸まった猫のような背中。


「キヒヒヒヒヒ」


間違うはずがない。


田権さんだった。




面白い、続きが読みたい、

面白くなくても読んでやろうという心の優しい方、

哀れな作家を助けると思って是非とも登録や評価をお願いします!

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