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第十章


今朝、ドキドキしながら登校すると廊下で笹原と浦木に会った。

けど、二人は私と目があったにも関わらず、すぐに逸らして、

まるで私が存在しないかのように自分たちの教室へ引っ込んでしまった。


思わず笑みがこぼれてしまう。


心臓のドキドキは一気に収まり、なんとも言えない幸せな心地がした。

こんなのはいつぶりだろう? 


今回の件で感じたのは普通の生活が一番と言うこと。多くを望みはしない。

心穏やかに一日を過ごせることが本当の幸せなんだ。


教室へ入り、自分の席につくと、机の中に違和感があった。

覗くとそこにはお金。


すぐにピンと来た。笹原と浦木だ。

田権さんの呪いが怖くて私にも返しに来たんだろう。


お札と硬貨を集めてみると、28500円。いくら渡したか分からないけどこんなもんだったかもしれない。


どうせ無くしたと思ったお金だ。服にでもパーっと使ってやろうかな。ソシャゲに課金もいいな。美味しいもの巡りもいいぞ。

あー、本当に何に使おう!


「ニヤニヤとしてずいぶん嬉しそうですね」

急に声をかけられて私は目を大きくした。

だって私に話しかけてきたのは、田権さんだったからだ。


「な、なんでここにいるの?」


「何を言っているんですか?ここは私の席じゃないですか」


「そうじゃなくて、昨日、言われたじゃん」


「昨日?」


「米良が六月までこの街から出てけって」


「あー、そう言えばそうでしたね」


「何を悠長なことを…」

私は田権さんに近づいて周りに聞こえないように耳打ちする。


「昨日の昼に田権さんが笹原たちの爪をはがしたような契約を米良もしてたらどうするの?」

すると田権さんも耳打ちしてきた。


「あれは魔女でないと出来ないんです。あの人はただ魔女から力を授かっただけの人なんで平気です」


「けど、昨日の米良の様子じゃ街にいるのを見つかったらただじゃ済まないんじゃない?登校してるのも笹原と浦木にバレたらチクられるかも知れないよ」


「心配いりませんよ」


「私が心配なの。だって今日もこの街を紹介しろって言うんでしょ? 一緒にいるのを見られたら私まで米良の怒りを買うじゃん」

我ながら最低な言葉だがせっかく浦木と笹原から解放されたんだから仕方ない。


「それなら大丈夫です。兄が今日のお昼から空いてるようなので兄の運転する車で街を回ってみる気ですから。それと明日と明後日の土日も兄にお願いしたので倉府さんは自分の時間を満喫してください」


と言うことは、私はこの魔女からも解放されたってこと? 


なんと言うことだ! 

人生ってのは運が悪い時はとことん悪いけど、ツイてる時にはツイてるもんなんだな。


「そうなの? 残念だけど、家族との時間も大切だもんね。昨日と一昨日はハプニングがあってこの街を楽しめなかっただろうけど、あんなのはそうそうあるもんじゃないよ。今日はお兄さんと一緒に楽しんできてね」


「ありがとうございます」

田権さんは横目に私を見た。

口角が歪んで上がっている。

こうして見ると小動物みたいでなかなかに可愛い。

心の余裕がそう見せるのかな?


私はニコリと微笑み返すとルンルン気分で一時間目の準備を始める。


「ああ、そうだ。倉府さん」


「何?」


「今朝、早く起きたんで時間ができまして、暇だったので倉府さんの事を占ってみたんです」

占いか。さすが魔女だ。


しかし占いなんてしなくても自分の状態ぐらいわかる。

私は今、右肩上がりに調子を上げてる。

ちょっとした無敵状態だ。

でも田権さんは言いたそうな顔をしてるからなぁ。

仕方ないから聞いてやるとするか。


「で、どうだった?」


「はい。日曜日は最悪な日ですよ。気を付けてくださいね」


何…だと?


「それってどう言う事?」


「さあ。私もささっとしか占っておりませんので」


そこはしっかりと占っておけよ! 

最悪な日とだけ言われたこっちの身にもなれ! 

気を付けろって言われても何をどうすればいいんだよ! 


…とも言えないのでモヤモヤとしていると、一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴ったのであった。



面白い、続きが読みたい、

面白くなくても読んでやろうという心の優しい方、

哀れな作家を助けると思って是非とも登録や評価をお願いします!

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