81-85
81絵画展
箱根寄木細工の義眼で視る
絵画鑑賞
抽象性の具象化について
悪魔的に勧善懲悪な色彩の芸術
緑と黄色の間のピンクが狭間で叫ぶ
裂けるキャンバス
避けるキャンバス
割けるキャンバス
作者のサインは偽作で本物
壁にかけられた場所はどうでもよくてよくない
目録には何も記されていない無色透明な作品
ガラス細工の心に乱反射してぼくが二人称になる
鑑賞される観てる人々
美について語る美術
日について語る時計
火について燃やす心の導火線
迷路のような順路に矢印が戸惑っている
心細く不安な夜を過ごすような
明るくて清々し早朝のような
ちぐはぐな点在と点描
絡み合う覚醒と気絶
絵画展をやるための絵画の展覧会
82好悪の謎
転スラのリムル以上好きで
美味しんぼの海原雄山より嫌いで
その間にある好悪の謎が解けてない
探偵のパイプは一級品
パイプを咥える探偵は五級品
その間にある見栄を測定する単位はない
今日と明日の変わりない変わり様
今日と昨日の変わったとこでの無関心
時間の流れはみな不平等な音楽
天使と悪魔がいてその中間がいない
心のグラスに白い血が注がれて
凍った赤いパンを口にする
83奥
瞼の奥の
瞳の奥に
赤色灯が明るく暗く
点滅している
唇の奥の
口の奥に
言葉が明るく暗く
おしゃべりしている
身体の奥の
心の奥に
空の箱があって
子猫が居座って
お腹をすかせて鳴いている
外の奥の
さらに離れた場所の奥に
小宇宙があって
ふつうの宇宙とは違って
五線譜に音符が描かれている
84悲しみ笑う顔
悲しみの奥に
悲しみがあり
その隣に
笑う声があり
楽しそうにしている
笑いの奥に
笑いがあり
その隣で
悲しむ人があり
誰かを思って佇んでいる
心の傷は後になって
痛みだす
過去に忘れてきた
音楽のように
そんなときは
悲しみ笑う顔で迎えよう
85時刻
時として
刻は停まる
時として
刻は動き出す
時として
刻は赤いダンスを踊る
時として
刻は風のように去っていく
刻として
時は過去と未来の狭間の時間を伝える
刻と時は
軸がぶれているようにズレている
時と刻は
惹かれ合っている
時刻は
韻律のように余韻を残しながら
神様と悪魔を刻んでいる