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ルディとルイーゼの戦いに、セシルが参入する。
「私の命は本来失われた物。聖女の力で生きながらえ、幸福な時を過ごせた」
ルシフォールは静かに微笑んだ。
「私に愛を、幸せをくれたことに感謝している」
ルシフォールはセシルを抱きしめた。セシルはルシフォールの温もりに浸る。
「二人の娘がこんなことになったのも、私とクリスタのせい。私は娘達を救いたいのです。自分の命をかけてでも‥」
セシルはルシフォールの胸に手を当てた。
「共に逝こう。先に待っているよ、セシル」
ルシフォールはセシルに口付けすると、目を閉じた。ルシフォールの心臓部から光が放たれ、フェニックスが抜け出してきた。フェニックスはそのままセシルの身体の中に入っていく。ルシフォールの身体は倒れた。穏やかな顔で眠るルシフォールの顔を、セシルは涙を流しながら撫でている。
「ルシフォール様、私もすぐに逝きます」
セシルはルシフォールの身体をその場に横たえると、戦いの最中にあるルディとルイーゼの元に向かった。
「ん‥」
セシルが通り過ぎたタイミングで、オニキスは意識を取り戻した。目の前ではルディとルイーゼが戦っている。
「どういうことだ?」
オニキスは辺りを見渡した。庭は荒れ、教皇が横たわっている。オニキスの近くにはマーズがおり、黙って二人の戦いを傍観していた。
「マーズ王子!一体どういうことだ!」
オニキスはマーズの胸ぐらを掴んだ。マーズはその手を不快そうに払い除けると、平然と応える。
「ルイーゼはお前の妃になりたいんだよ、オニキス王子。だからルディを懲らしめて身を引かせようとしてるんだ。殺すわけじゃないんだから大人しく見ていればいい」
マーズの言葉にオニキスは激怒した。
「ルイーゼ嬢をたきつけたのか!」
マーズは嘲笑を浮かべている。
「行け!ドラゴンよ!ルディの身体を焼きなさい!!」
ルイーゼがドラゴンに指示を出す。豪炎がルディを襲った。
「くっ」
ルディは必死に炎を避けるが、ドラゴンは凄まじい速さでルディに迫った。
「勇者の指輪をなぜ使わない‥」
オニキスはルディの手をみた。遠目の為、指輪の真偽が分からない。
「指輪は役に立たない。なぜなら‥ルディ嬢がはめているのは偽物だから」
マーズが懐から指輪を取り出した。
「なぜお前がそれを!!」
オニキスは指輪を取ろうとしたが、マーズは渡さなかった。
「これはたまたま手に入れたんだが‥恐らく、ルイーゼが紛い物を作らせてすり替えさせたんだろう」
オニキスはルディの身を案じた。戦いは熾烈化し、庭は荒廃してルディは傷だらけになっている。
そんな二人の戦いの場に、セシルが姿を見せた。
「ルイーゼ!やめなさい」
セシルは厳しい口調でルイーゼを咎めた。ルイーゼはセシルの言葉にも耳を貸さない。次々とルディを攻撃し続けた。
「フェニックス!!」
セシルはフェニックスを召喚した。上空に大きな翼を広げたフェニックスが現れた。
「聖女セシルが命じる。聖女ルイーゼの龍を、力を全て無に帰すのです」
フェニックスはセシルの言葉に従い、ルイーゼの龍を翼の中に包み込んだ。破壊と再生の神獣フェニックスの力には、ドラゴンも抗えない。ドラゴンがどんなに攻撃をしても、フェニックスはその傷を瞬時に修復してしまうのだ。
「お母様!なぜルディの味方を‥!そもそもフェニックスの力が何故使えるの?」
ルイーゼはセシルに尋ねた。セシルは横たわるルシフォールを指差した。
「かつて私は、聖女の力をルシフォール様の命を救う為に手放した。そして今、醜い我が子の戦いを目にして、私たちは命をかけてそれを止めようと誓ったの」
ルイーゼは呆然と立ち尽くした。それを聞いていたルディも驚きを隠せない。
「双子の姉妹が争うことの愚かさを、誰よりも知っていた私が、我が子に同じ道を歩ませてしまった。父と母が命をかけて願う。愚かな争いはやめて、ルイーゼ」
セシルはルイーゼを抱きしめた。
「嫌よ!!私はオニキス様をルディに渡したくない!誰であっても私を止めることはできないわ!」
ルイーゼはセシルの腕を振り切った。セシルは一筋の涙を零す。セシルは上空にいるルディに話しかけた。
「ルディ‥。あなたには沢山の苦労をかけました。これからは幸せになってちょうだい。それだけが私とルシフォール様の願いよ」
セシルはそう言うと、両手を広げて光を放った。フェニックスが拡大していく。
「クソ‥。邪魔をさせるものか」
マーズが指輪を取り出し、セシルに向けようとした。
『ザシュッ』
オニキスがマーズの右手首を切り落とした。指輪をつけた手首が地に落ちる。オニキスは躊躇せずに手首を拾うと、指輪を取り外した。
「ぐわぁぁぁ!!」
手首を切り落とされたマーズが、あまりの痛みに絶叫している。オニキスはルディのいる方向に向かって走った。マーズがそんなオニキスを追う。目は血走り、怒りは頂点に達していた。マーズの剣は走るオニキスの背中に向かって振り下ろされた。
「危ない!!」
ルディはオニキスの方に向かう。しかし間に合いそうにない。ルディは絶体絶命の危機を感じていた。
『ザッ』
マーズの剣が振り下ろされた。
「う‥」
オニキスを庇おうとしたルディを、セシルが庇った。セシルの背中から多くの血が流れている。
「おのれ!」
ルディは剣を抜き、マーズに攻撃した。負傷したマーズはルディの剣を受けるのも困難な状態だ。
「ルイーゼ!!今のうちに攻撃するんだ!」
マーズがルイーゼに向かって叫んだ。ルイーゼはドラゴンをルディに向ける。
「‥ルディ‥。私からの最後のお願い‥」
傷を負い、息も絶え絶えのルイーゼが身体を起こした。
「お母様、動かないで」
ルディはセシルの身を案じている。セシルはルディの頭を優しく撫でた。
「ルイーゼを我儘な娘に育ててしまったのは、私達の責任。だから、ルイーゼを許してあげて。私がルイーゼの力を持っていくから‥。力を失ったルイーゼを、責めないで」
セシルはルディに懇願した。母の切なる想いに、ルディは頷く。
「わかりました。約束します」
ルディはセシルの手を強く握った。セシルは安心したかのように微笑むと、身体を起こして両手を上空に上げた。
「フェニックスよ!!ドラゴンを吸収しなさい!」
セシルの手から多量の光がフェニックスに注がれる。それは自らの命を燃やした光の力だ。
フェニックスはどんどん拡大して力を増した。そして両翼でドラゴンを包み込むとドラゴンを吸収し、更にルイーゼにも翼を広げた。ルイーゼの身体から光が吸い取られていく。
「う‥嘘!嫌よ!ドラゴン!私の前に現れなさいよ!!」
ルイーゼは混乱している。ルイーゼの身体から聖女の力が消滅したことを確認したセシルは、安心したかのように目を閉じたのだった。
セシルとルシフォールが死に残されたルディ達は‥




