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ルディとルイーゼの戦いの火蓋が切られる
ルイーゼはクリストファー男爵邸に使いを送った。その日のうちにマーズが教会を訪れた。
「オニキス王子、先日の食事の席以来ですね」
マーズが親しげに接してきた。チンターマニ王国では会話も交わさなかったマーズの態度の急変にオニキスはたじろいでいる。
「先日は失礼しました」
オニキスは、チンターマニ王国の教会に用事があるとしか知らせていなかった。マーズはオニキスが記憶を失っていたことを後からルイーゼに聞いたのだった。
「我が弟マーズが、クリオラ王女と結婚すれば我々は義理の兄弟。仲良くしていきましょう」
マーズは親しげにオニキスの肩を叩いた。
『何か企んでいる‥』
オニキスは霊視した。マーズの思考に影が見える。詳しくはわからないが、何か思惑を持っていることは確かだ。オニキスは警戒した。
「せっかくだから、庭でお茶でも飲みませんか?」
ルイーゼが笑顔を振りまいた。
「ねぇ、ルディ。あなたとはゆっくりお茶をしたこともないわ。姉妹ですもの。仲良くしましょう」
いつもルディを険しい表情で見ていたルイーゼが、穏やかな表情をしている。ルディはようやく姉妹の関係が作れるのかと期待した。オニキスはルイーゼにも見える影が気になっていた。しかし、ルディが嬉しそうにしている為、その誘いを断るのは控えた。
ルディ達4人は、教会の庭園でお茶を飲むことにした。使用人がお茶を注ぐ。そして一人一人にケーキが出された。
「ルディ、これはお母様が焼いたケーキよ。チーズケーキと言うらしいわ。お母様が以前いた世界には存在したケーキらしいの」
ルディはケーキを美味しそうに口に入れた。他の3人もそれに続く。
「美味しい」
ルディは母の手作りのケーキが嬉しかった。クリスタは料理などしなかった。ルディは母の暖かさを初めて感じていた。
「カシャン‥」
オニキスがフォークを落とした。そして座ったまた首を項垂れ、眠りについている。
「外国から取り寄せた睡眠薬は、薬に抵抗力のある王子にも即効ね」
ルディは満足そうに微笑んだ。マーズは、持っていた紐でオニキスの両腕を縛ると、オニキスを抱えて席を立った。
「ルイーゼ、好きなだけ暴れるがいい。但し、殺すなよ」
マーズが念押しした。
「分かってるわよ」
ルイーゼは立ち上がると、龍を召喚した。
「ルイーゼ、オニキス様を眠らせたのは、私を攻撃する為なのね」
ルディは大きなため息をついた。ルディはしぶしぶ立ち上がると、剣を抜き龍を呼んだ。
聖女と勇者の龍は睨み合っている。まず、ルイーゼの龍がルディの龍に炎を吐いた。ルイーゼの龍は炎を避けながら、雷を落とす。雷は庭の木々にも落ち、庭は荒れた。
「龍よ!ルディを狙いなさい!死なない程度に火傷を負わせるのよ!」
ルイーゼは嬉々として指示した。龍はルディに向かって猛然と炎を吹きかける。
「くっ‥。指輪は‥」
ルディは左手にはめた指輪を炎に向けようとした。しかし指輪は反応しない。仕方なく、自分の龍の背に飛び乗ると、上空に避難した。
「指輪は使えないわよ。なぜなら、その指輪は偽物。すり替えらたことにも気づいてなかったのね!」
ルイーゼが高らかに笑っている。マーズは懐の指輪を黙って隠し持っていた。
「指輪が偽物?まさかあの時‥」
ルディはチンターマニ王国の露店で指輪を買ったことを思い出した。
「聖女は勇者より強いのよ。勇者の指輪がないあんたなんか、私の敵にはならないわ!死にたくなければ、オニキス様との婚約を解消しなさい!あんたはそこのマーズ王子の妃になればいいのよ!」
ルイーゼは龍を従えてルディに近寄った。炎がルディに迫る。
庭での騒動を聞きつけたルシフォールとセシルが、庭に駆け付けた。
「これは‥」
ルイーゼがルディを追い詰めている。セシルは真っ青になって震えた。ルシフォールがそんなセシルを支えている。
「ルイーゼ!!何をしている!ルディはお前の姉だぞ!」
ルシフォールが叫んだ。
「お父様、これは聖女と勇者の戦い。黙っていてください。殺しはしません。多分ですが‥」
ルイーゼはルシフォールを無視してルディに攻撃をする。ルディは龍に乗ったまま、炎をよけているが少しずつ龍もルディも炎に焼かれていた。
「ルシフォール様‥」
セシルが静かに手を合わせた。
「元聖女の私にも、まだ神の声は微かに聞こえました‥。我々にできることがあります」
セシルの目は冷静でかつ、慈愛に満ちている。
「どうすればいい?」
ルシフォールはセシルの手を握った。
「あなたの命を返してもらわなければなりません‥」
セシルの言葉に、ルシフォールは驚かずに頷いた。
娘達を救うために両親が決したこととは?




