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マーズが計画遂行の為に動き出す

「クリストファー男爵、世話になる」

 マーズは男爵家にズカズカと足を踏み入れた。

「ここに来たのは叔母の葬儀以来になるのか。赤子だった故に記憶にはないが‥」

 屋敷の中を見回すマーズの元に、男爵が駆け寄ってきた。

「これはマーズ王子。ようこそおいで下さいました」

 クリストファー男爵が頭を下げた。前男爵夫人の子であるセシルにとってマーズは従弟にあたるが、男爵には他人だ。しかし関わりが無いわけではないので訪問を拒否することは出来なかった。

「こちらの部屋でお休みください」

 クリストファー男爵は一番良い客室にマーズを通した。マーズは部屋でしばらく寛いで旅の疲れを癒した。

「チンターマニ王国のマーズ王子がお忍びで我が国に来ている。姉に連絡を取るんだ」

 クリストファー男爵は使いを教会に送った。セシルは使いからマーズの事を聞くと、ルシフォールに報告した。

「私にとってマーズ王子は従弟にあたります。でも、クリストファー家とチンターマニ王家はほとんど関わりを持ったことはないのです。今になって何をしにきたのか‥」

 セシルの記憶には、母の葬儀に叔母に抱かれていた赤子の姿しかない。

「アルタイ王国が力を付けた今、チンターマニ王国も何かしらの力を得たいと動き出したのかもしれないな」

 ルシフォールは世界地図を見ている。今やアルタイ王国は、三国の中で突出した領土を保有しているのだ。

 翌日、教会にマーズが訪れた。お忍びの来訪の為、ルシフォールは大袈裟には迎えず、通常通りにした。マーズは教会の中に入るとルディを探した。

「勇者はまだ戻っていないのか?」

 マーズは教会の使用人に尋ねた。

「手紙によると今日辺り、こちらに着く予定とのことですが」

「今日か‥。明日来ればよかったか‥」

 マーズが残念そうにそう言うと、使用人が奥の部屋を指差した。

「勇者様には会えませんが、あちらに聖女様がいらっしゃいますよ。外国から来られたのでしたら、聖女様にお会いになってはどうでしょう」

 使用人はマーズが王子と知らない。外国からの旅行者が教会を訪れたと思っていた。

「聖女か‥。確かに、会っておきたいな」

 マーズは使用人に案内されるまま、ルイーゼの部屋を訪れた。

「聖女様、異国からの旅行者が聖女様にお会いしたいと参っております」

 使用人がそう言うと、扉が開けられた。マーズはそのまま中に入った。オリビンは扉の前に控えている。

「どちらから来たのですか?」

 ルイーゼの態度はやや横柄である。聖女が庶民に会ってやっているという雰囲気だ。

「私はチンターマニ王国の第一王子マーズ。元聖女セシル様の従弟にあたる」

 マーズは身分を明かした。ルイーゼの態度が急変する。

「王子様ですか!これは失礼しました。母の従弟とは?」

 ルイーゼは急に態度を変えるとマーズにすりよった。マーズは自分の母とセシルの母が姉妹であることを説明した。

「おばあさまに当たる方が異国の子爵家の出身とは聞いていましたが、チンターマニ王国だったのですね」

 ルイーゼは異国の美しい王子に見惚れている。マーズにはオニキスとは違った良さがあった。

「聖女ルイーゼ。私と手を組まないか?」

 マーズは単刀直入に話を切り出した。初めは、勇者と先に会い計画を実行するつもりだったのだ。しかし、聖女を先に仲間に引き入れた方が円滑にことが進むと判断し計画を変更した。

「手を組む?」

 ルイーゼはマーズのただならぬ気配に警戒している。

「聖女と勇者が戦えば、聖女の方が力が強いと書物にも記されている。それは勇者が聖女の部下になる為に作られた存在だから」

 今のチンターマニ王国は、他のどの国よりも勇者については詳しかった。

「そう。だけど、あの指輪がある限り‥私はルディには勝てない」

 ルイーゼが悔しそうに頭を抱えた。マーズは懐から指輪を取り出した。

「指輪というのはこれのことか?」

 ルイーゼの目の前に、青く煌めく指輪がある。ルイーゼは思わず手を伸ばした。しかしマーズは指輪を握り、ルイーゼには渡さない。

「これは勇者ルディから刺客が盗んだ物」

「!!!ハックマナイトが失敗したの!?」

 ルディは思わず大きな声を出した。

「ハックマナイトの所に、女達がこれを持ってきた。そうか‥。ハックマナイトに指輪を奪うよう依頼したのは聖女だったのか」

 マーズは依頼主がルイーゼだと知った。ルイーゼは自分の計画が頓挫したことに悔しさを感じている。

「ハックマナイトが殺されたのは、あなたの仕業?」

 ルイーゼの額から汗が流れた。下手をすれば自分の身も危険かもしれない。

「そう。この指輪が勇者の指輪だとわかったから、奪う為に殺した。でも、ハックマナイト自身、多くの殺しを請け負っていたというじゃないか。因果応報だ」

 マーズは悪びれもせずに言った。

「手を組むというのはどういう意味なの?」

 ルイーゼは話を戻した。マーズはルイーゼに近づいてくる。ルイーゼは怯みながらも耐えてその場に止まった。

「この指輪を私が勇者に返せば、聖女は勇者に勝てない。そうすると、勇者はオニキス王子と結婚してしまう」

「その通りよ。オニキス様が記憶を取り戻したら、二人は結婚するわ」

「我が国としては、勇者を妃に迎えたいんだ。そこで私がこの指輪を保管する。聖女が勇者と戦う。勝った時点で攻撃を辞め、命は奪わない。命と引き換えにオニキス王子との破談を条件に出す、というのはどうだろう」

 マーズの提案にルイーゼはすぐに飛びついた。

「やるわ!!指輪さえなければ、私はルディに負けないもの!」

 ルイーゼは瞳を輝かせた。意気揚々とするルディに、マーズは手を差し出した。ルディはマーズの手をしっかり握り、二人は手を組んだのだった。

マーズとルイーゼの計画に、ルディたちはどう立ち向かうのか?

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