88
エスケル王国にたどりついたマーズ。マーズの目的は??
「ここがエスケル王国か‥。やはり我が国より豊かだな」
マーズが街を見渡している。
「王子、あの奥の宿に私の知り合いがおります」
マーズの側近のオリビンが下町の宿を指差した。
「ああ!前にお前が言っていた、殺しでもなんでも請け負うという組織か」
「はい。頭のハックマナイトはかつてある商団にいた時に大金を持って逃げて闇の組織を作りあげたのです」
「20年くらい前に各地の商団が潰された事件に便乗したということか?」
「そうです。ハックマナイトがいた商団も襲われ、商団主らが逃げようとした時に、奴は商団主を殺し金を奪ったのです」
オリビンは当時を思い起こした。オリビンはハックマナイトのいた商団の護衛に雇われていた。本来なら、ハックマナイトを倒して商団主を守らねばならない。しかし、オリビンはハックマナイトから金を受け取っており、それを黙認した。オリビンは、ハックマナイトから受け取った金でチンターマニ王国の騎士を目指して採用されたのだった。
「ハックマナイトはいるか?」
オリビンは入口にいた店員に声をかけた。店員はオリビンとマーズを中に案内した。
「おお!オリビン、久しぶりだな」
ハックマナイトが笑顔で駆け寄ってきた。
「今日はどうした?何か依頼があるのか?」
ハックマナイトがニヤリと笑った。そこに、ララ達がやってきた。
「ハックマナイト、依頼は完了だ。殺す目的は果たせなかったが、指輪は手に入れた」
ララは青い宝石の指輪をハックマナイトに見せた。ハックマナイトは指輪を受け取ると本物かどうかを確認している。
「あれは‥」
マーズが指輪に目をとめた。
「オリビン‥。あの指輪を手に入れることはできるか?」
マーズが低い声で呟く。オリビンは黙って頷いた。
『ザシュッ』
オリビンの剣はハックマナイトの心臓を貫いた。
「!」
ハックマナイトは何かを言いたげにしていたが、言葉を発せぬまま倒れて息耐えた。オリビンの剣はララにも向けられた。
「ララ様!!」
部下達がララを守る為に剣を抜きオリビンに襲いかかる。しかし誰もオリビンの相手にはならない。ララの部下達はララの目の前で次々に倒されて行った。
「ララ様‥逃げてください‥」
部下の言葉に、ララはその場から立ち去った。
「追いますか?」
オリビンがマーズの指示を待っている。マーズは首を横に振った。
「この指輪が手に入れば、あの者の命などどうでもいい。それより、宿の者が騒ぐ前に逃げるぞ」
マーズ達は裏口を見つけるとそこから抜け出した。マーズ達が脱出してしばらくすると、宿屋は大騒ぎとなった。すぐにこの辺りを警備する兵士達が殺人事件を捜査し始めた。
「今回の捜査でハックマナイトが裏稼業の殺し屋だと分かるでしょう。殺し屋の内輪揉めとして片付けられるはず」
オリビンは大事に至らずにことが片付くと予想した。
「それにしてもお前の剣の腕はすごいな」
マーズはオリビンの剣の腕を信用していた。だからこそ、旅にもオリビンだけを連れてきたのだ。通常なら、王族は複数の護衛を付ける。マーズは目立ちたくなかった為にオリビン一人を連れていた。
「アース王子より修得致しました」
「アースか。あいつは勇者をやめたんだったな。身分の低いあいつは問題にならない。私が邪魔なのは第三王子ウラヌスと第十一王子ネプチューンの二人だ」
マーズは、第一王子の王位継承権が低いのを不満に思っていた。外戚が弱いことが彼の野望の足を引っ張っている。
「それより、ハックマナイトを処分してまで手に入れたこの指輪はなんですか?本来ならハックマナイトに依頼してオニキス王子を暗殺する予定だったのですが‥」
マーズは指輪を取り出すと、太陽の光に当てた。
「間違いない。この指輪は、勇者の指輪だ」
マーズは指輪を袋に入れると、丁寧に懐にしまった。
「指輪は、アース王子の所にはありませんでした」
オリビンは記憶を辿った。
「アースが勇者になった時、我が国では世界各地にある勇者の伝説が書かれた書籍を集めた。その中に、この指輪のことを書いている日記のような物があったのだ」
マーズは勤勉な王子だ。アースに剣は敵わないが、どの王子よりも優れていた。
「はるか昔、勇者と聖女が恋に落ち、子を成した。しかしその聖女は愛の力。魅惑の力で勇者の心を得ていた。その為、勇者は二度と聖女に惑わされぬよう神に願って、神はこの指輪を勇者に授けたと書いていた」
「聖女の力を消す指輪!!それがあれば、エスケル王国は怖くないですね!」
オリビンは嬉々としている。
「まさかここで伝説の指輪に出会えるとは‥。この指輪、使わせてもらおう‥」
マーズは嬉しそうにそう言うと、クリストファー男爵邸を目指して行った。
マーズが動き始めた。マーズがまず接触するのは誰なのか。




