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チンターマニの大神官の手でオニキスの記憶は取り戻せるのか?

 ルディとオニキスは教会に着くと、大神官の元に通された。

「これは、オニキス王子、ルディ様。ようこそおいで下さいました」

 白髪で細身の好好爺が現れた。

「初めまして、大神官様。今日は、手紙に書きました通り、私の記憶を回復して頂きたいのです」

 オニキスは頭を下げた。王族は無闇矢鱈と頭を下げてはならない。大神官はオニキスの謙虚さに些か驚いている。

「頭をお上げください。私は前教皇の頃、ウィドマン陛下にお会いしたことがあります。教会を支援して下さったのですよ。その恩返しができるなら嬉しいことです」

 大神官は手を差し出した。オニキスはその手を握りしめた。

「さあ、そちらに横になってください」

 大神官はオニキスを寝台に寝かせた。大神官は祈りながら手をオニキスの頭にかざす。青白い光が発せられ、オニキスの頭の中に吸い込まれていった。それを幾度か繰り返すと、大神官は一息ついた。

「これで恐らく記憶は戻っていると思います。この程度の記憶障害を、エスケルの教会が治せなかったのは何故でしょう」

 大神官は不思議に思っていた。ルディがその疑問に応える。

「それは、私の妹がオニキス様の記憶が戻らないように他の神官達を買収したからです。エスケルの大神官様のせいではありません」

 大神官はため息を漏らした。

「‥金銭で買収される者がまだいるのですか‥。私は以前、同じ神官仲間の足の引っ張り合いに嫌気がさし、人が行きたがらぬチンターマニの教会に志願しました」

 神官の中で一番人気があるのは、総本部でもあるエスケル王国の教会だ。そして次は、アルタイ王国だった。チンターマニ王国は、王家と密接な教会で貴族の支援が少ない為、金銭的に逼迫している。贅沢のできないチンターマニの教会は、いわば左遷先のような存在だった。

 大神官とルディが話していると、オニキスが目を覚ました。

「‥ルディ‥」

 オニキスに頭の中に、沢山の記憶が泉のように湧き始めた。それと同時に、霊感も取り戻した。

「記憶が戻っている‥!」

 オニキスは歓喜して立ち上がった。大神官は目を細めている。

「王子の記憶障害は、物理的な衝撃によるものでした。故に、その負傷部分を治癒するだけで元に戻すことができたのです」

 大神官が病状を説明した。オニキスは部下に命じて大金を用意した。

「大神官様。これは本日の謝礼です」

 数キロはある金貨に大神官は恐縮した。チンターマニ王家で病状を治癒しても貰える金額は金貨10枚あればいい方だった。

「この金で、教会の修繕や、神官達の衣類など‥古くなっている物を新調して下さい。そして何より、沢山食べて下さい」

 オニキスは大神官達が粗食を僅かしか食べられていないことに気づいていた。教会内にいる者達は皆痩せている。

「大神官様、私は父にチンターマニの教会の様子を伝えます。本部から支援が受けられるようにします」

 ルディは大神官に約束した。

「ありがとうございます‥!!」

 大神官は床に膝をつくと何度も頭を下げた。

 こうしてルディ達は目的を果たし、エスケル王国への帰路についた。

「ルディ、すまない」

 オニキスは気まずそうに謝った。記憶を無くしていたとはいえ、一ヶ月の間、ルイーゼと親しく過ごしたからだ。

「記憶を無くしていたから、仕方ないです。でも、今は他の女性といちゃいちゃしたら許しませんよ」

 ルディが念押しする。オニキスは素直に頷いた。エスケル王国に帰るには数日かかる。ルディ達は国境近くの街の宿に泊まった。

「ここは私が育った街です。田舎で何にもないけど、平和な場所です」

 エスケル王国に近い為、ドロニノ共和国の種馬狩りもこの街までは来たことがなかった。

「クリスタと君が暮らしていた家はどうなったの?」

 ルディは街の南側を指差した。

「あちら側に小さな家が集まって建てられていて。その一つを借りていたんです。でも、母が‥いえ、クリスタがブレインビュー男爵の愛人になった時に、その家を出たので今は他の人が住んでいることでしょう」

 ルディの瞳には、懐かしさと悲しさが浮かんでいる。夕日の赤い光が、ルディの碧の瞳に反射して絶妙な色合いだ。

「クリスタは憎むべき女だが、クリスタが悪行を働かなければ、我々は出会えていなかったかもしれない」

 オニキスがルディを慰めた。

「そうですよね。私が父の元で育っていたら、ルイーゼみたいなお嬢様になっていただろうし」

「それはそれで見てみたかったかな。おしとやかなルディ」

 オニキスが冷やかす。ルディはオニキスの胸をポカポカと叩いた。

「どうせ私は男みたいだし!」

 むくれるルディを、オニキスは可愛いと思った。

「そんなことないよ。私にはルディは最高の女性だ」

 オニキスはルディの頬にキスをした。ルディは真っ赤になっている。

「キスで誤魔化してもダメ!!」

 ルディは外方を向いている。拗ねた子猫のようなルディをオニキスが抱き寄せる。

「誤魔化してなんかない。本心だよ」

 オニキスは強く抱きしめると、ルディの耳元で囁いた。オニキスの甘い囁きに、ルディの心は満たされていく。二人は宿に入ると、熱い夜を過ごしたのだった。

ルディをエスケル王国で待ち受ける数々の罠。

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