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ルディとオニキスが旅立った先で襲いくる敵。ルイーゼの殺意は止まらない。

「許さない‥」

 ルイーゼは、コスモスの置物を抱きしめている。わずか一ヶ月ではあったが、確かにオニキスの気持ちはルイーゼに向いていた。オニキスの優しい微笑みを、ルイーゼは何度も思い返した。

「私の気持ちを踏み躙って二人が幸せになるなんて‥私は許さないわ!!」

 ルイーゼは再び、先日の刺客達の元を訪れた。下町の汚い宿の一番奥の部屋に、裏の仕事を案内する人間がいるのだ。

「先日は失敗したようで申し訳ありません」

 請負人が詫びた。

「もう一度だけチャンスをあげるわ。あの女はチンターマニ王国に向かっている。旅の途中に山賊に襲われることも少なくないでしょう?」

「しかし‥あの者達は人数も減りましたし、今は首領が戻ってきたようで仕事を引き受けるかどうか‥」

 円滑に進まぬ会話にルイーゼは苛ついた。

「女なのだから力だけでなく、騙して殺す方法もあるでしょう。この金で取引してきなさいよ」

 ルイーゼは金貨の詰まった袋を差し出した。こんもりと膨らむ袋には沢山の金貨が入っている。支配人は目を輝かせた。

「かしこまりました。明日、また来て下さい。それまでには返事を聞いて参ります」

 態度を急変させた支配人にルイーゼは不満もあったが、黙って帰っていった。

「これは大儲けできる」

 支配人はすぐに刺客達の元に向かった。

「おい、仕事だ」

 支配人は横柄な態度で扉を開けた。女達が一斉に振り返り、支配人を睨む。

「おいおい‥。各国で指名手配になってるお前達に仕事と棲家を提供している俺にそんな態度をとっていいのか?なあ、ララ様」

 ララは大きくため息をつく。

「お前達、ハックマナイトは我々を保護している身。あまり無礼な態度はとるな」

 ララが部下達に命じた。ハックマナイトは満足そうに笑っている。

「今回の仕事は前回の仕事の続きだ。教皇の娘ルイーゼは、どうしても姉が邪魔らしい。姉のルディを殺せと依頼があった。ただし、一緒にいるオニキス王子には手を出してはならない」

 ララは立ち上がった。

「オニキス!?ディーヴァを殺した王子か!」

 ララは怒りに震えている。

「ララ、オニキス王子は殺してはならない。ルイーゼの望みは、オニキス王子の妃になること。オニキス王子を殺せば、この大金も不意になる」

 ハックマナイトが金貨の入った袋を開けて、中身を取り出した。

「指名手配のお前達が生きていくには、闇の稼業しかない。依頼人の望みに逆らう人間に、依頼はこない」

 ララは溢れる怒りを必死に堪えた。

「愛する女が目の前で死ねば、オニキス王子も絶望感に苛まされる。それも復讐になるだろう?」

 ハックマナイトがララを言いくるめた。ララは仕方なく依頼を引き受けた。

「相手は勇者。戦って殺すのは不利だ。女であることを使い、暗殺する」

 ララは部下達と暗殺計画を練り、準備にとりかかった。

 その頃、ルディ達はエスケル王国とチンターマニ王国の国境辺りに着いていた。

「国境を越えたら、私が育った町があります」

 ルディは懐かしそうに目を細めた。クリスタとの生活は幸福ではなかったが、悪いことばかりでもなかった。

 二人が国境を越えてチンターマニ王国に入ろうとすると、歌劇団が国境を渡れずに困っていた。

「三国協定があるから円滑に通れるはずなのに‥」

 ルディは国境を守るブレインビュー男爵の部下に話しかけた。

「この人達は何故ここで止められているんですか?」

 ルディの姿を見た兵士が驚いている。

「ルディ!ルディじゃないか。シルビアさんの息子の‥て、なんで女の格好??」

 ブレインビュー男爵の家の者達は、ルディが女とは知らない。

「それは話せば長くなるから‥。で、この人達が止められてる理由は?」

 ルディは歌劇団の馬車を見た。幌馬車の中には、5人の女性が乗っている。褐色の肌に、派手な装いが目を引く。

「この歌劇団は、三国の歌劇団ではないようなんだ。南の方からの流民だとか‥。だから許可なしに通していいものかと、旦那様に確認中なんだ」

 ルディと兵士が話していると、そこにブレインビュー男爵となったトマスがやってきた。まだ少年だが、ブレインビュー男爵の跡を継いで頑張っているようだ。

「ルディ!なんでお前が‥」

 トマスは気まずそうだ。トマスにとってルディは、父親の愛人の息子。決して仲良くなれる間柄ではない。

「トマス様、お久しぶりです。実は私は女なのです。そして私の母はシルビアではなく教皇の妻セシルとわかり、今はエスケル王国にいます」

「女だったのか‥。それに‥教皇聖下のご令嬢!?」

 トマスは驚き腰を抜かしそうになった。

「はい。今日は私の婚約者であるオニキス王子とチンターマニ王国の教会に行く為にここに来たんです」

「お‥王子殿下だって!?」

 トマスは顔面蒼白だ。無礼を働けば不敬罪に処される。トマスは明らかに動揺していた。

「旦那様、この歌劇団が異国の者なのですが、国境を通して宜しいでしょうか?」

 兵士が話に割って入った。

「か‥構わん!エスケル王国に入れた歌劇団が、我が国に入れないのはおかしいだろう!そんなこともわからないのか!」

 混乱しているトマスは状況も確認せずにそう言うと、歌劇団に国境を通す許可を出した。

「トマス様、では私達もこれで」

 ルディは軽く挨拶をすると、オニキスと護衛の騎士と国境を越えて行った。残されたトマスはその姿を呆然と見ていた。

 チンターマニ王国に入ると、歌劇団の団長が馬車から降りてきた。

「先程はありがとうございました」

 団長は、漆黒の髪に歌劇用の濃い派手な化粧をしている。首や手など見える肌は褐色だ。その様子から、ルディ達は歌劇団が通い南の国から来たと思った。

「お礼と言っては何ですが、食事を一緒にいかがでしょうか?」

 団長は部下達に食事の準備をさせた。国境近辺は街から少し離れている。団長は折りたたみの机や椅子を配置させると、グラスに酒を注いだ。

「我が国の料理になりますが、煮込みますので少し時間がかかります。出来上がるまでこれでも飲んで待ちましょう」

 団長は酒をルディ達に勧めた。そして自分が先に、その酒を口にした。

「この酒はとある国の王族秘蔵の酒を譲り受けました。是非、飲んでみてください」

 オニキスはグラスを持つと一口飲んでみた。各国の王族は幼い頃より毒には慣らされており、ある程度の耐性がついている。一口なら致死量にはならない。一口飲んだオニキスは安心した。

「本当に美味しい。ルディ、これは中々飲める機会がない酒だよ」

 オニキスは自分が先に飲むことで毒味をしたので、ルディにも勧めた。男として育てられたルディは酒も嗜む。ルディはグイと酒を口に入れた。

「ぐっ‥‥」

 ルディの口から血が流れた。それを見た団長は、すぐさま馬車に乗り込むと馬車を走らせた。猛然と走る馬車の砂埃と、台の上に転がった酒だけがその場に残る。

「ルディ!!」

 オニキスは慌てて水を口に含むとルディに飲ませた。

「先程の歌劇団を追え!!」

 オニキスは騎士に命じた。騎士達の半分が歌劇団を追う。しかし歌劇団は途中で馬車から馬を放して、馬で逃走した為、捕まえることはできなかった。

「オニキス様‥。私の左の靴の中に‥解毒剤があります。それを‥」

 オニキスはルディの靴の中にあった解毒剤の袋を見つけると開封してすぐに飲ませた。しばらくするとルディの呼吸が安定してきたのでオニキスは安堵した。

 オニキスはルディを支えて同じ馬に乗ると、宿を目指した。そして宿に留まりルディの回復を待った。二日後、ルディは自分で動き回れるまで回復した。

 そして一行は、教会を目指したのだった。

毒から回復したルディ。オニキスの記憶を取り戻す為に二人は再び旅を続ける。

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