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勇者としての仕事をするルディ。ルディ達を強力なモンスターが襲う。

 ルディが刺客に襲われたことで、教会には厳戒態勢がとられた。ユリウスは教会の付近を捜査し、神官達は犯人の刺青の紋章を書物で探した。

「教皇様!ありました!!」

 若い神官見習いが分厚い書物の中から紋章を探し当てた。ルシフォールが書物に目を通した。

「ドロニノ共和国、ララ王太女の紋章‥」

 部屋に緊張が走った。ドロニノ共和国と戦争をしていたのはアルタイ王国だ。その残党であるララがどうしてルディを狙うのかルシフォールは理解できなかった。ルシフォールは、指名手配のララ達が何をして生計を立てているのか調査させることにした。

 ルディが襲われたことはウルアクの耳にも入った。ウルアクはルディを城に呼んだ。

「女王陛下、勇者ルディ、参りました」

 ルディが敬礼して跪いている。ウルアクはすぐさま席を立つとルディに近寄った。

「昨夜、襲われたと聞いた。しかし、勇者であるそなたには敵わなかったようじゃな」

 ウルアクはご満悦だ。王家に属する勇者の活躍は、ひいては王家の名声にも繋がる。

「今、我が国には勇者も聖女もいる。他国は悔しがっておろうな」

 ウルアクはロードナイトを呼んだ。

「ルディよ。そなたは、いずれアルタイ王国に嫁ぐ。それまでは我が国の為に戦ってもらいたい。我が息子、ロードナイトの初陣ともいえるモンスター討伐に、共に出かけてもらいたい」

 ウルアクは、14歳になったロードナイトに初めての使命を与えた。ロードナイトは毅然としている。ロードナイトは父親似でブラヒン公爵家の系統の顔立ちだ。母親似のインカローズ 王女とは似ていない。ロードナイトに憧れる貴族の令嬢は多かった。

「かしこまりました」

 ルディは、モンスターが多数出没している地の地図を受け取った。そして王城で、討伐の作戦会議を開いた。討伐の軍の司令官はロードナイトだ。ルディはその補佐を務める。

「ルディ、今回のモンスターはワイバーンや、フェンリルといった高位魔獣だ。魔術師達も連れていくが、苦しい戦いになると思う」

 ロードナイトは不安を隠せなかった。母の前では毅然としていた王子が、気弱になっている。

「ロードナイト殿下、私が必ず殿下をお守り致します」

 ルディがロードナイトを励ました。年上の強く美しい従姉に、ロードナイトはときめきを感じた。頬がほんのりと赤くなっている。

 ルディは一旦教会に戻り、女王からの討伐命令の件をルシフォールに報告した。ルシフォールは気乗りしなかったが、勇者の役割を投げださせるわけにはいかない。仕方なくルディを送り出した。

 ルディとロードナイト達は、チンターマニ王国側にある林を目指した。そこは崖もあり、人がほとんど足を踏み入れない地である。その為年々モンスターが増え、一部が人の住む辺りまで現れるようになったのだ。

『ギャオォーッ』

 ワイバーンが空から一気に飛びかかってきた。ルディは勇者の剣を構える。剣から龍が現れてワイバーンに巻き付く。羽ばたけなくなったワイバーンは背中から地に落ちた。そこをルディが攻撃し、剣をワイバーンの眉間に突き刺した。ワイバーンが一匹絶命すると、他のワイバーンが声をあげて仲間を呼んだ。ルディが空にばかり注目していると、地上ではロードナイトに他のモンスターが迫っていた。

「フェンリルか!!魔術師達よ!フェンリルの視界を塞げ!!」 

 ロードナイトは魔術師に指示を出すと、フェンリルの後ろに回り込んだ。視界を奪われたフェンリルは、四方八方無我夢中で噛みつき攻撃している。その猛りは凄まじく、騎士達は近寄れなかった。するとロードナイトは、そばにあった木に登り、上からフェンリルに飛びかかり剣を背中に突き刺した。

『ギャウッ』

 フェンリルは苦痛にもがきながら、辺りを走り回った。騎士達はそんなフェンリルから離れて様子をみている。背中の一撃では致命傷になっておらず、フェンリルは涎を流しながらいきり立っている。ロードナイトは剣を構えると正面からフェンリルに向かっていった。そして威嚇で大きく口をあけたフェンリルの口の中に、剣を突き刺した。流石のフェンリルも喉を突き刺されては生きられない。フェンリルはその場に倒れて絶命した。騎士達からロードナイトに歓声があがった。

 ルディとロードナイトの活躍で、初日は無事にモンスターを倒すことができた。一団は林を出て側にあった街の宿屋で休息をとった。ロードナイトには初めての庶民の食事に、庶民の寝床だ。ロードナイトの気分は、初めての体験に高揚していた。

 こうして日々をモンスター討伐にあけくれ、十日ほどが経った。連日の戦いに疲労も重なる。騎士達も限界が近かった。

『シャーッ』

 二つの首を持つ大蛇が静かに忍び寄り、いきなりロードナイトに噛み付いた。騎士達が慌てて蛇の首に切り掛かる。しかし固い骨に剣が歯溢れして切れない。ルディは急いで聖剣で蛇の胴体にある心臓を突き刺した。心臓を刺された蛇はロードナイトに噛みついたまま息絶えた。騎士達は死んだ蛇の口を数人がかりで開いてロードナイトの足から離した。ロードナイトの顔が紫色に変化している。

「毒だ!医師を呼べ!」

 ルディがすぐに指示を出した。そして自分が常に身につけている薬の中にある解毒剤を取り出すと、ロードナイトに差し出した。

「効果があるかはわかりません。とりあえずこの解毒剤を飲んでください」

 ロードナイトは黙って頷いた。しかし、もはや自力で水を飲む力も残っていない。ルディは、薬と水を自分の口に含むと、ロードナイトに口移しで飲ませた。

 しばらくして医師がやってきた。

「誰か、解毒剤を飲ませたのですか?」

 顔色が戻りつつあるロードナイトを見た医師が尋ねた。

「私がこれを飲ませました」

 ルディは解毒剤を医師に見せた。医師は黙って頷いている。

「的確な判断でした。これを飲んでいなければ、王子様の命はなかったでしょう」

 騎士達が動揺した。この国の後継者が死にかけたのだ。胸中穏やかではいられない。

 ロードナイト王子の負傷もあり、モンスター討伐はひとまず終わりを迎えた。

「ロードナイト!!」

 帰還した一行に、女王自らが駆け寄ってきた。

「女王陛下!!」

 一行は立ち止まり、敬礼をする。ロードナイトは馬車からゆっくりと降りてきた。

「母上、ご心配をおかけして申し訳ございません」

 ロードナイトは俯いている。ロードナイトは、初陣を立派に果たせなかったことに負い目を感じていた。

「何をいうのです!そなたの果敢な戦いぶりは聞いています。フェンリルを倒したそうではないか。他にも複数の魔物の死骸、城に運ばれておる」

 ウルアクはロードナイトを抱きしめた。

「ルディ、そして皆の者。このたびの使命、よくやったと言ってやりたい所だが‥」

 ウルアクが騎士達を見た。

「主を守ることができなかったお前達に、王子の専属騎士団は務まらぬ。皆、解雇じゃ。ルディ、そなただけはロードナイトの命の恩人と聞いた。褒美をとらす」

 ウルアクはそう言うと、ロードナイトを連れて城に入って行った。残された騎士達は呆然と立ち尽くしている。命をかけて戦って戻ったのに、解雇されたのだ。ルディは騎士達に同情した。

 騎士達は無言のまま解散していった。ルディは城に入ってウルアクの沙汰を待った。

「母上、ルディが私を助けてくれたのです。彼女が死にかけた私の口に解毒剤を飲ませてくれた。それがなければ私は死んでいました」 

 ロードナイトは嬉しそうにウルアクに報告した。その表情からウルアクは、ロードナイトの気持ちを察した。

「王子‥。そなた、ルディが好きなのか?」

 ウルアクはロードナイトの耳元で囁いた。ロードナイトの顔が真っ赤になった。

「そっそんなことは‥!!従姉殿は四つも年上ですし‥私なんかまだ子供‥。男として見てもらえるわけがありません」

 ロードナイトは布団を頭から被って顔を隠した。

「年齢差はそんなに気にすることはない‥。クリオラ姫もルディと同じ年だった。そなたが望むなら、ルディを我が国の未来の王妃としよう」

 ウルアクの言葉にロードナイトが飛び起きた。

「そんなことができるのですか??ルディは、オニキス王子の婚約者でしょう?」

 ウルアクはアルタイ王国と交わした婚約解消の書状を取り出した。

「アルタイ王国は、我が国に対して婚約解消を言ってきた方。我が国はそれに応じたに過ぎぬ。ウィドマン王に、そなたの婚約者にクリオラ姫の代わりに、ルディが欲しいと言えば、ウィドマン王は断れまい」

「‥そううまくいくでしょうか‥」

 ロードナイトは不安だった。しかし、ルディが婚約者になるなら自分にはそれが望ましい。ロードナイトは一縷の望みを捨て切れなかった。

 ウルアクはすぐにウィドマンに向けて手紙を書いた。そして王の間にルディを呼んだ。

「ルディ、そなたに渡したい褒美はこれだ」

 ウルアクは宝石箱をルディに手渡した。

「開けてみよ」

 ルディは素直に箱の蓋を開けた。中には煌めくティアラが入っている。

「これは??」

 ルディは首を傾げた。ウルアクはティアラを手に取ると、ルディの頭に乗せた。冠というのは、王族しか身につけることが許されない。ルディは驚いた。

「そなたを、我が国の王太子妃にします。我が息子、王太子ロードナイトの婚約者となり、数年後には妃となりなさい」

 ウルアクの発言に、ルディは愕然としながらティアラを取り外した。

「陛下、私はアルタイ王国のオニキス王子の婚約者です」

 動揺するルディに、ウルアクが近寄る。

「そのことは、我が国からウィドマン王に解消するよう手紙を書きました。そなたは、アルタイの王子ではなく、我が国の王子と結婚するのです」

 有無を言わせぬウルアクの圧力に、ルディは反論できなかった。

「しばらくは王城に留まってもらいます。今回の遠征で負傷した王子を、回復するまで守るのもそなたの役割です」

 ウルアクはルディを教会には帰さなかった。教会に戻ればルシフォールに婚約の話をするだろう。ウルアクは女王だが、兄であり教皇であるルシフォールには命令できない。手紙がアルタイ王国に届き、ウィドマン王に認めさせれば後はどうとでもできると考えていた。

 こうしてルディは心ならずも王城に留まり、ロードナイトの看病をしながら数日を過ごした。そしてウィドマンの元にウルアクからの手紙が届いた。

「何!?ルディをロードナイト王子の婚約者にしたいから、オニキスとの婚約は解消しろだと??」

 ウィドマンが怒りに震えている。ヴァカムエルタ侯爵はほくそ笑んでいる。

「父上!ルディはエスケル王室に囚われているのですか?」

 報告を聞いたオニキスが駆け込んできた。

「わからぬ。一旦、ルシフォールに手紙を書く。女王がなぜそんなことを言い出したのか‥。聖女がいるにもかかわらず、わざわざ勇者の方を妃にと望む意図が図りかねる」

「私がエスケル王国に行きます。行って状況を掴んできます」

 オニキスはそう言うとすぐに旅支度を始めた。

「兄様、ルディはこの国に嫁げなくなるの?」

 クリオラが心配そうに尋ねた。

「そんなこと、させない。必ずルディを私の妃にする」

 オニキスは数名の騎士を連れて旅立っていった。

他者からの婚約破棄にオニキスは怒り、エスケル王国に向かう。アルタイ王国には別の影が忍び寄ろうとしていた。

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