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二組のカップルの旅路の始まり。アルタイ王国を目指して、ルディ達は旅立った。

 翌朝、ルディ達はアルタイ王国に向けて出発した。王族用の馬車は一台しかなく、オニキスとクリオラに乗るように御者が言った。

「私はアース様と他の馬車で行くわ」

 クリオラが辞退した。御者は困惑している。

「この馬車には、私とルディが乗る。ルディは未来の王太子妃だ。問題あるまい」

 オニキスがルディの手を引いて馬車に乗り込んだ。クリオラはアースと共にもう一台の馬車に乗り込んだ。2台の馬車とアルタイ王国の騎士団は国境に向かって進んだ。

「もうすぐ山道に入る。モンスターが出現するかもしれない」

 オニキスが剣を準備している。

「辺境にはモンスターが多いから心配‥」

 ルディは馬車の窓から空を見上げた。山にはドラゴンタイプのモンスターもいる。

「我々を襲うモンスターがいたら不運だな。勇者と前勇者がいるんだから」

 オニキスがルディの手を握りしめている。

「怖いですか?」

 ルディは緊張を隠せていないオニキスに尋ねた。オニキスはゆっくり霊感を研ぎ澄ます。

「強力なモンスターの気配があるんだ‥」

 通常、オニキスはモンスターの気配を避けながら国境を渡る。今回は急いでいる為に、最短ルートを選んだら、最短ルートには、モンスターの出現箇所が複数あった。

 ルディとオニキスが緊張しながら進んでいくと、大きな影が馬車の前に現れた。それはキマイラだ。三つの顔を持つキマイラがジリジリと馬車に近寄ってくる。騎士達は、キマイラを囲んだまま微動だにしない。

「キマイラか‥。久しぶりだ‥」

 アースが剣を鞘から抜いた。

「勇者の剣じゃないのに、大丈夫なの?」

 クリオラが心配そうに言った。

『聖女の力を手放さなかったら私も戦えたのに‥!!』

 クリオラはもどかしかった。

「お姫様は王子様に守られるものだよ。こう見えても私は、剣聖と呼ばれてる。勇者じゃなくても戦えるから」

 アースは馬車を一人で降りると扉を閉めた。

「ルディ、私が先陣を切る。その後に、キマイラを仕留めるんだ」

 ルディはアースの指示に頷く。オニキスは、剣をキマイラに向けたまま動かなかった。下手に攻撃して足手纏いになるのは避けたいからだ。

 アースはキマイラに向かって切り掛かった。炎を吐く顔がアースを襲う。アースは炎を飛び越えると、その首を切り落とした。一つの首を失ったキマイラは、苦痛にもがいている。

「ルディ、今だ!」

 アースの指示でルディはキマイラに攻撃をした。勇者の剣から龍を呼ぶと、真ん中の頭を龍が襲い、残りの頭をルディが狙った。

『ザシュッ』

 鈍い音と共に二つの首が地に落ちた。そうして、三つの頭を失ったキマイラの身体は、その場に倒れた。龍がその屍を食らっている。

 キマイラが倒されたのを見た他のモンスター達は撤退した。それを霊視したオニキスは、安心して旅を続けるよう指示した。

 そして馬車は国境沿いにあるアルタイ王国の王族の別館を目指した。

「ここに、クリオラは捨てられていたんだ」

 そこは別館の付近の山道である。オニキスは馬車を止めると、そのことをクリオラに話に向かった。クリオラは、自分が捨てられてた地を確認し、自分を救ってくれたオニキスに改めて感謝した。  

 別館に着くと、オニキス達は食事をとった。王族の別荘だ。食事は豪華である。四人はご馳走と酒を楽しんだ。そして四つの部屋にそれぞれ入っていった。

「ああ、疲れた‥」

 ルディはベッドに寝転がると身体を伸ばした。ルディにとっては馬車よりも馬に乗る方が楽なのだ。

「お尻が痛いな‥」

 ルディがくつろいでいると、扉を叩く音がした。

「誰?オニキス様?」

 ルディは、扉を開けた。扉の前にはクリオラがいる。

「少し、いいかしら?」

 クリオラは気まずそうな顔をしている。つい先日、殺そうとした相手だ。人違いでルイーゼを攻撃したとはいえ、本来ならルディを狙っていた。そのことにクリオラは罪悪感を感じていた。

「ごめんなさい!!あなたにはまだ謝れていなかったから‥」

 クリオラはルディに謝罪した。ルディはクリオラの手をとると、部屋の中に誘った。

「オニキス様が好きだったからでしょう?だから私が邪魔だった」

 クリオラは黙って頷いた。

「オニキス様に、あなたの境遇は聞いたの。隠されて育てられた王女だって。だから他の人を知らなかった。優しくしてくれるオニキス様しか心を開けなかったんでしょう?」

 ルディは優しくそう言った。

「でもね。だからと言って、人を殺そうとしたのは間違い。それは許せない」

 ルディの表情が変わった。先程までの優しい顔ではなく、厳しい顔になっている。

「ごめんなさい。あの時は、兄様を奪われたくなかったの」

 クリオラは頭を下げた。ルディは、クリオラの頬を両手でパンッと叩いた。クリオラの頬が紅潮する。

「これでおしまい。あなたは、罪の対価として聖女の力を手放した。だからこれで許してあげる」

 クリオラの瞳から涙が溢れた。

「ありがとう‥」

 その夜、ルディとクリオラはお茶を飲みながら語り合った。クリオラの母クリスタが、どんな母だったのか。クリオラは悪女と名高い母親の私生活を尋ねた。ルディもまた、オニキスがどんな少年時代を過ごしたのかをクリオラから聞き出した。こうして二人は、絆を深めたのだった。

「ルイーゼはまだ、兄様のことを諦めていないわ。私に協力しろと詰め寄ってきたもの。でも私は、兄様にはあなたが相応しいと思ってる。だから私はあなたを応援するわ、ルディ」

 クリオラは手を差し出した。ルディはその手を握った。

「私の師匠でもあるアース様が選んだ女性があなたで良かった。クリオラ姫、これから宜しくお願いします」

 ルディとクリオラは友人となった。部屋の外からそんな二人を見ていたオニキスとアースは、嬉しそうだ。

「今夜は我々はお邪魔なようですね。一緒に飲みませんか?」

 アースがオニキスを誘った。こうしてその日は、女同士、男同士で新たな人間関係が芽生えたのだった。

アルタイ王国に辿り着いたルディ達は、ウィドマン王の元に向かう。聖女の力を手放した娘をウィドマンはどうするのか。

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